どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【上部を開拓するテクニック】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) June 14, 2024
こちらは3七の桂を取ることが出来ますね。しかし、直ちに☖37歩成☗同金と進めると、相手の金を出させるので上部を開拓しにくくなります。… pic.twitter.com/VfsfYimavg
将棋には「負けにくい形」という局面が存在します。このワードを聞いたことがある方は少なくないかと思います。ただ、具体的に何をどうすれば「負けにくい形」が作れるのかは、あまり要領が掴めていない方が多いのではないでしょうか。そこで今回は、そうした状況の作り方をテーマに、解説を進めたいと思います。
相手の攻め駒を前線に出させない
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗3八歩と指し、3筋を受けたところです。
この局面は、桂得が確定している上に、大駒の働きにも差が着いているので、こちらが優位に立っています。ただ、敵玉に迫れている訳ではないので、勝つまではまだまだ長い道のりがある局面と言えるでしょう。
こうした「形勢は明らかに良いけど、先行きが不透明」という状況は、将棋を指していて意外と難しい状況の一つです。こちらとしては、今後のビジョンを明確にしておきたいですね。
さて、こちらは桂が取れるので、美味しく頂くことを考えた方はいらっしゃるかと思います。つまり、☖3七歩成ですね。
ただ、これを指すと☗同金☖1六馬☗5五香と反撃してくる手が少し気になるところではあります。
一見、☖4三銀で何でもないようですが、ここに銀を引くと☗3六角が飛車香両取りになってしまいます。また、☖6三銀も☗6四歩で五十歩百歩ですね。よって、こちらは銀を逃がすことが出来ません。
ただ、こちらは5四の銀が取られると、やはり☗3六角の筋が厳しいですし、場合によっては☗6五銀から飛車を強引に世に出してくる攻め筋も生じます。こうなると馬の働きも良くないので、上図は形勢の差を縮められていますね。
なお、上図で形勢を詰められている要因は複数あるのですが、最も目を向けなければいけないのは、相手の攻め駒を前に出させていることです。具体的には、4八にいた金を前進させてしまった罪が重いのです。
上図であの金はこちらの馬を圧迫していますし、それによって☗3六角と出る含みも生じています。要するに、相手の攻め駒の効率が上昇しているのですね。こうした状況になると自陣に脅威が及ぶので、「負けにくい形」を作ることが出来ません。
こうした背景があるので、筆者は冒頭の局面で別の方向性の手を選びました。具体的には、☖1八歩成でじっとと金を作るのが賢明な指し方になります。
見た目はずいぶん悠長な手に感じられたかもしれません。しかし、3七の桂を取らなければ相手は角や金が前に出せないので、手を作ることは出来ません。このように、相手から有効な攻めが無い場合は、確実にプラスになる手を指すほうが形勢に大きな差をつけることが出来ます。
また、このあとは2七の香を成って、さらに上部を手厚い形にしておきましょう。
上図は☖1八歩成から数手後の局面です。相手は☗7五歩から桂頭を攻めてきましたが、☖6三金で守っておけばすぐには差し支えありません。7三の桂はいずれ取られる運命ですが、その間に☖2八香成→☖2七成香→☖3七歩成を指してしまえば、こちらは駒得が広がるので、決定的な差をつけることにつながります。
とにかく、こちらは成香の活用を図れば良いので、こうなると先行きが不透明な問題もクリアされました。
上図は☖2八香成から再び数手ほど進んだ局面です。ここまで進むと成香の活用が間に合ったので、かなり局面が明快になっています。あとは☖3七歩成から駒得を拡げたり、☖6六桂で寄せに行く手が楽しみですね。対して、こちらの玉には全く脅威がありません。よって、上図はこちらが勝勢だと言えるでしょう。
こうした進行を見ると、こちらは常に自陣が安泰であり、負けにくい状況を作ることが出来ていることが読み解けます。
「負けにくい形」を作るためには、自陣に脅威が及ばない状況に持ち込む必要があります。そのためには、敵の攻め駒を刺激しないことが肝要です。特に、攻め駒を前に出させる手には注意しましょう。そうしたことを意識すれば、負けにくい形を作ることが出来るので、終盤戦が楽に戦えますね。
権利は一番良いときに使う
繰り返しになりますが、今回の題材では相手の攻め駒を前に出させないことが重要な部分でした。ゆえに筆者は☖3七歩成で桂を取る手をしばらく見送っていたのですが、その選択に至った背景には、もう一つ別の理由もあったのです。
それは、「権利は一番良いときに使う」ということですね。
改めて、冒頭の局面を振り返ります。こちらにとって☖3七歩成という手は、かなりの確率でいつでもさせる手と言えます。つまり、☖3七歩成という手は「権利」になっている訳ですね。
中盤以降、こうした「権利」を手にすることが出来たときは、それを直ちに指さなくても良いケースが殆どです。もちろん、そうした「権利」は美味しい手であることが多いのですぐに指したくなる気持ちも分かるのですが、その「権利」の効果が最大化されるまで待ったほうが、より大きな得を期待できるのです。今回の例で言えば、2七に成香を配置してから「権利」を行使するほうが、戦果が大きいことは言うまでもありません。こうした意識を持っておくと、精度の高い将棋が指せるようになることでしょう。
また、こうした負けにくい形を作るテクニックは、他にも種類があります。よろしければ、以下の記事も併せてご覧いただけますと幸いです。
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