どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【相手の理想形は許さない】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) November 21, 2024
相手が6六に角を上がってきたところ。先手陣は次に☗77桂が跳べると、全ての駒が活用できて理想的な配置になります。こうした形は許したくないですね。… pic.twitter.com/huUoeTRwm4
将棋の序盤は、どんな戦型になったとしても何かしら駒組みを行う必要があります。ただ、駒組みは漫然と行えば良いものではないので、不用意に指すといつの間にか作戦負けに陥ってしまうことも少なくありません。
そこで今回は、作戦負けを回避するために意識しておくと良いことをテーマにして、解説を進めたいと思います。
相手の理想形は許さない
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗6六角と指し、陣形を整備したところです。
こちらは右玉に構えており、玉型も十分に整っている状態です。ここからどう指すかですが、後手番であることから千日手は歓迎なので、待機に徹するのは右玉らしい指し方と言えます。具体的には、☖4二角☗7七桂☖3三桂のような順ですね。
ただ、結論から述べると、この指し方は☗9五歩と仕掛けられて形勢を損ねることになります。
これには☖同歩と応じるのが妥当ですが、☗2四歩☖同歩☗同飛で歩交換をされると、次の☗9三歩が厄介な一着になります。こうして9筋から攻められると、こちらは金銀が受けに働かない上に自玉への響きも強いので、苦しい将棋になってしまします。
先程の変化は、先手が☗7七桂と跳ねていることが大きく、それによって6六の角が安定していることが自慢です。先手にとっては、この組み上がりが理想形ですね。
6六の角が安定すれば、常時、端を睨めるので、端攻めの威力が格段に上がります。つまり、☗7七桂を跳ねられると、こちらは将来の端攻めを防ぐことが難しい状況に陥ってしまうのです。ゆえに、この局面はこちらが作戦負けだと言えるでしょう。
これを踏まえると、冒頭の局面でこちらは、先手に8九の桂を跳ねさせない手段が求められていることが読み取れます。したがって、筆者は☖5四歩と指しました。これが形勢を損ねない唯一無二の一着になります。
この歩を突くと自玉のコビンが開くので不安感がありますが、たとえ角交換になったとしても、2六のラインから角で攻撃される可能性はすこぶる低いので、それを気にする必要はありません。それよりも、とにかく☗7七桂を指させない状況を作ることが大事です。
ここで☗7七桂だと☖5五歩☗同角☖7五歩で、桂頭を攻めれば良いでしょう。よって、相手は桂を跳ねることが出来ません。
そうなると、上図では☗5四同歩☖同銀左☗5五歩と押さえるくらいですが、強気に☖6五銀と進軍するのが好判断。これで6六の角を攻撃すれば、こちらは端攻めの脅威を払拭することが出来ます。
ここからは☗同銀☖同歩と進むのが妥当ですね。相手は角の引き場所が複数ありますが、☗7七角や☗8八角だと☖8五銀の当たりが強い問題があります。
それを嫌うなら☗5七角になりますが、こちらに角を引くと5五の位が浮き駒になるので、ぐいっと☖6四銀と上がり、それを目標にするのが好着想になります。
ここで☗5六銀打には☖5四歩で銀を目標にする手が厳しいですし、☗5六銀だと桂頭がお留守になるので☖3五歩があります。いずれも、こちらはスムーズに攻めの手が続いていることが分かりますね。
加えて、こちらは9筋を攻められる展開になっておらず、相手が冒頭の局面で指した☗6六角を無効化していることも嬉しいポイントです。これらの要素から、上図はこちらが上手く立ち回っていると言えるでしょう。
こうした進行を見ると、こちらは☗7七桂を許さなかったことで、局面を良い方向へ導けたことが読み取れます。
このように、作戦負けを回避するには、「相手の理想形を許さない」ことが大事な考え方になります。そのためには、理想形に組まれる前に何らかの方法で揺さぶったり、仕掛けを狙うことが一案です。これは非常に汎用性の高い考え方ですし、こうしたことを意識すると、自ずと仕掛けのタイミングや、細かい揺さぶりの意味を正しく理解することにも繋がります。
理想形を見抜くためには?
なお、相手の理想形を許さないためには、理想形をきちんと把握しておかなければ、そうした動きが出来ないことは確かです。そこで、理想形の見抜き方についても、言及しておきます。
基準としては、全ての駒が活用できているか否かで見るのが一つの方法です。
改めて、こちらの失敗例の局面を提示します。先述したように、相手は☗7七桂と活用できれば、理想形が整います。上図の相手は遊び駒が一つも無く、全ての駒がきちんと活用(機能)していますね。こうした状態は、まさに理想形の典型例と言えます。
こうした視点で相手の駒組みを捉えることが出来れば、冒頭の局面では☖4二角などの手待ちをしている場合ではないということが分かってきます。そして、さらにもう一歩、踏み込んだことを述べると、相手の理想形が整う一手前(今回の例で言えば☗6六角と上がった局面)に仕掛けられるようにしておけば、作戦負けをほぼ確実に回避することが出来ます。これらのことを意識すると、序盤力の向上に繋がるかと思います。
また、こうした局面を適切な方向に導くための考え方は、他にも様々な種類があります。詳しくは、拙著「盤上のシナリオ」に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
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