どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【令和急戦矢倉の有力な駒組み】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) June 25, 2025
相手は☗46角型に構え、5筋の歩を交換させない組み方をしています。これには☖52飛と回るのが有力です。… pic.twitter.com/Btq0DJjrbj
先手矢倉に対して後手は様々な作戦がありますが、現代において最も有力視されているのは令和急戦矢倉です。ゆえに、居飛車党としては、この戦法を会得する価値は非常に高いと言えます。
そこで今回は、この戦法を指す上で知っておくと役に立つ構想をテーマに、解説を進めたいと思います。
☗4六角型を逆用する
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。下図は相手が☗3六歩と指し、陣形を整備したところです。

この局面は、令和急戦矢倉の定跡型の一つです。先手は早めに2筋の歩を角で交換し、かつ☗4六角型に構えています。歩交換しながら角を好位置へ据えているので、かなり欲張った指し方だと言えるでしょう。後手としては、これを咎める姿勢で戦いたいですね。
さて、こうした急戦矢倉系の将棋では、飛車先の歩を伸ばして4二の銀を前線に繰り出すのが一般的です。上図からそうした指し方を選ぶと、下図になることが予想されます。

これはこれで一局の将棋ですが、後手としては☗4六角型を咎めたとは言えない進行であることが気になります。
つまり、ここで☖5五歩と仕掛けても平然と☗7九玉と寄られると、相手の角を攻撃することが出来ません。上図は4六の角が安定している将棋になっているので、後手は作戦が成功しているとは言えないのです。
こういった背景があるので、冒頭の局面ではもう少し工夫が必要です。ゆえに、筆者は☖5二飛と指しました。これが☗4六角型を咎める一着になります。

この手は「玉飛接近悪型なり」という格言に反していますが、中央を攻める準備をしています。失敗例の変化は、☖5五歩と突いても無視されると効果がありませんでした。しかし、こうして主砲を5筋に配置すれば、将来に指す☖5五歩の威力が高くなるので、良い構想になるのです。
先手はひとまず☗6九玉で玉型を整えますが、そこで☖6二金と上がります。これも矢倉中飛車に構えた際には、価値の高い整備です。

先手は5筋を狙われているので、場合によっては☗6六銀と上がって受ける手が効果の高い手になります。ただ、こうして☖6二金型に構えれば、☗6六銀には☖6五歩で追い返せるので先手の受けを封じることが出来ます。
加えて、この定跡で先手は☗5七角→☗8四角という揺さぶりを掛けるケースが多いのですが、それを前もって先受けしている意味もあります。これで下準備は概ね完了したので、以降は本格的に中央を攻めることを考えます。

ここから先手は金矢倉を作るなら、☗5八金→☗6六歩と指すことになります。ただ、後手は先述したように、銀を繰り出して中央を攻めれば問題ありません。

こうした状況になると、失敗例の変化とは雲泥の違いがありますね。今度は☖5五歩を無視できませんし、☗5七銀と支えても☖5四銀で圧迫する手が絶品です。相手は5筋の歩を取れませんが、放置すると☖5六歩☗同銀☖5五歩で駒損になるので適切な対応がありません。

このように、上図で先手は金矢倉に組むことは出来ないので、他の囲いを選ばざるを得ないところがあります。急戦調の展開に適性が高いのは、囲いが早く完成する中原囲いです。ただ、後手は気にせず、やはり銀を繰り出す姿勢を取ればペースを掴めます。

これで次は☖5五歩と突けば、相手の角を攻撃できる形になります。そして、先手は分かっていてもそれが防げません。上図は4六の角が不安定な格好なので、後手が上手く☗4六角型を咎めたと言えるでしょう。
こうした進行を見ると、こちらは矢倉中飛車に構えたことで、リードを奪えたことが読み取れます。

このように、令和急戦矢倉に対して先手が☗4六角型を早めに作ってきた場合は、[☖5二飛・☖6二金型]に構えて対抗するのが得策です。この配置を作ると銀がスムーズに5五へ進出する展開になりやすく、後手は主導権が握りやすくなります。これは非常に有力な構想なので、ぜひお試しください。
先手の駒組みに対応する技術が必要
なお、こうした矢倉中飛車に構える指し方は、いつ何時でも有力な構想ではないことを踏まえておくのが大事です。
これは相手が早めに5筋の歩を突いているから効果的に作用するのであり、他の形なら違う構想が必要になります。

例えば、令和急戦矢倉の定跡では、先手が5筋の歩を突かずに駒組みを進めるパターンもあります。この場合、矢倉中飛車に構えても争点がないので的を外しています。したがって、ここでは☖8五歩と伸ばし、☖6五桂から攻めることを視野に入れるほうが良いと言えるでしょう。
このように、令和急戦矢倉を指しこなすには、一つの形を覚えるのではなく、相手の駒組みに対応する指し方を選ぶことが大事です。始めのうちは難しいかもしれませんが、上手く対応できるようになってくれば、相性の良い形をぶつけることが出来るので、アドバンテージを握りやすくなります。
また、令和急戦矢倉の詳しい定跡は、今月号の将棋世界「プロ棋界の最新定跡」にも詳しく掲載しております。ご興味のある方は、ご覧いただけますと幸いです。
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