どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

相振り飛車は駒組みの自由度が高い戦型です。ただ、その自由度の高さゆえ、どういった囲いを選べばよいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか? そこで、今回は最適な囲いの選ぶための考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。

判断基準は、相手の布陣

改めて、上記ツイートの局面を振り返ってみましょう。

相手は浮き飛車に構え、かつ☖7三銀型に組んでいます。ここに銀を配置するということは、相手は矢倉に組むことを表明していますね。

さて、こちらはどんな囲いを選ぶかですが、低くまとめるなら金無双、盛り上がるなら矢倉を選ぶのが自然です。そして、この局面においては、どちらがより良い選択でしょう?

答えはツイートに記したように矢倉なのですが、結論だけでなく、その理由を知っておくことが大事です。そうすれば、別の局面の場合でも応用が利きますから。という訳で、ここからはそれを説明していきましょう。

まず、ここから先手が金無双を目指した場合、以下のような組み上がりになることが予想されます。

まだまだこれからの将棋ですが、実を言うと先手は二つの問題点を抱えています。

一つは、囲いの性能で劣っていること。後手はこのあと☖6四歩→☖6三金左で囲いを発展する余地がありますし、上部の厚みも確保しています。逆に、先手は今さら盛り上がるのも変ですし、矢倉より堅い囲いでもありません。つまり、こうした持久戦調の将棋になると、矢倉と金無双の性能の差が色濃く出ることになるのです。

もう一つは、歩を手持ちに出来ていないこと。先手は矢倉の骨格を作られているので、飛車先の歩を交換することが出来ません。逆に、後手はすでに歩交換に成功していますし、ここから☖2四歩→☖2五歩と進めれば、2筋の歩も交換が期待できます。

相手にだけ持ち歩がある状況は、直ちに形勢の悪化には繋がりません……が、持ち歩の数が増えると攻め筋が広がりを見せることは確かです。したがって、先手にとって嬉しい状況ではないことは確かですね。

原則として、金無双は囲いの進展性が乏しいので、攻める戦いをするための囲いです。しかし、本局のように飛車先の歩が交換できないケースでは、攻撃態勢を作ることが難しくなります。そうなると、攻めも受けも満足な態勢を築けないので、面白くない将棋になってしまいます。ゆえに、上図は先手が作戦負けだと言えるでしょう。

そして、上記のようなシチュエーションは、冒頭の局面である程度、透けて見えている節があります。ご覧の通り、先手はすでに飛車先の歩が交換しにくい配置ですから。そうした背景があるので、ここでは自陣を盛り上げる矢倉の方が良いという訳ですね。

後手もまだ囲いが中途半端なので、☖7二金から陣形整備に勤しむことになります。すると、以下の局面になるのは妥当でしょう。

互いに矢倉が完成し、堂々たる布陣になりました。問題はこの局面の優劣ですが、結論から述べると、今度は先手が組み勝つことに成功しています。

なお、この局面も、先手は失敗例同様、飛車先の歩を交換することは出来ていません。けれども、失敗例との局面とは決定的な違いがあります。

先程の失敗例では、

(1)囲いの性能で劣っていること。
(2)歩を手持ちに出来ていないこと。

という二点が問題だと述べました。しかし、上図ではそうした状況に陥っていないことが分かります。囲いの手厚さではこちらが上ですし、陣形を盛り上げたことで3筋に歩を打つ必要も無くなっています。

加えて、この局面は相手に攻撃態勢を作らせていないことも大きいです。後手は浮き飛車を活かすなら☖3三桂と跳ねることになりますが、それには☗3六歩→☗2六銀で相手の飛車を圧迫することが出来ます。相手は☖3四飛型を活かす構想が難しいので、この局面は先手が面白いと言えるでしょう。

このように、相振り飛車は囲いの選択が形勢を分かつ要因となることが多々あります。そして、キーとなるのは相手の布陣(囲い)ですね。自分本位の駒組みを行わない意識が必要だと言えるでしょう。

相対的な駒組みを意識をしよう

ちなみに、今回は相手が早めに☖7三銀型を決めてきましたが、これは一般的には少し珍しい指し方です。三間側は、以下のように美濃囲いで駒組みを進める方がポピュラーではありますね。

やはり先手は、囲いを低く構えるか盛り上がるかという選択があります。ただ、ここで矢倉を目指すと、些か危ない嫌いがあります。

図のように、素早く銀を繰り出されて☖3六歩で拠点を設置されると、先手は矢倉に組むことが出来ません。ここで☗3七歩には☖3五銀で無効です。

この例の後手は囲いを低くまとめているので、盛り上がろうとすると速攻を誘発します。先程はじっくり組み合うケースだったので、先手は矢倉に組む余裕があったのですが、この場合はそうではありません。なので危険なのです。

よって、相手が美濃で素早く攻め来た場合は、金無双に構えておく方が無難ですね。この場合は飛車先の歩が交換できそうなので、金無双でも問題なく戦えます。

繰り返しになりますが、相振り飛車は相手の布陣を見て、構想を変えていく意識が必要です。相手が盛り上がってきたら自分も盛り上がる、低く構えてきたら自分も低く構える。といった要領で、相対的な駒組みを行うことが一つのコツです。相手と態度を合わせておけば、バランスが崩れにくいので作戦負けを回避しやすいですね。

また、こうした相対的な駒組みを行うテクニックは、拙著「現代将棋を読み解く7つの理論」にも詳しく記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです!

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