どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【相穴熊の絶対感覚】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) August 10, 2023
ここは平凡に☗63同竜でも悪くないですが、☗82竜とぶった切るのが最短の勝ち方です。
これで敵玉を露出させて相手の飛車を攻撃すれば、玉の安全度が大差なので明快になります。
このように、相穴熊の終盤戦は敵玉を引っ張り出すことが大事ですね。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/wdUIx5irjp
相穴熊の将棋は他の戦型とは異なる感覚を求められるところがあり、その違いに敏感になることが大切です。この記事では、そうした特異性に適応するための考え方を解説したいと思います。
敵玉を「見える」形にするのがコツ
改めて、上記ツイートの局面を振り返ってみましょう。図は相手が☖6三飛と指し、こちらの竜に働きかけたところです。
具体的な指し手を考える前に、まず現局面の状況を整理しておきましょう。
駒の損得に関しては、大きな差はついていないですね。ただ、玉型と効率には甚だしい差があります。すなわち、囲いはこちらの方が金気が一枚多く、駒の効率は飛車の差が顕著です。こちらの飛車(竜)は寄せの主軸ですが、相手は苦し気な場所に飛車を打っていますから。
話をまとめると、現局面は玉型と飛車の働きの差が大きく、こちらが優勢であることが分かります。
問題は、ここから如何にして優勢から勝勢に持ち込んでいくかです。策の一つに、差が着いていない要素でリードを奪いに行くという考え方がありますね。具体的には、☗1二竜です。こうすれば香得になるので、こちらは駒の損得の観点でも優位に立つことが出来ます。
ただ、そこから☖7八銀と絡まれると、どういった印象を受けるでしょうか。
この局面は自玉に詰めろが掛かっており、何らかの受けが必要です。☗7八同金☖同馬☗7九金が進行例ですね。後手は☖7七銀と絡んでくるのが一案です。
これはこれで先手が悪くは無いのですが、相手の猛攻を許しているので勝ち方としては非常に危うい部類に入ります。厳密には先手が残していますが、好んで選びたい変化ではありません。局面はすでに終盤戦に入っているので、今更、駒得を主張にしても恩恵が乏しいのです。
では、☖6三飛に対して平凡に☗同竜☖同銀と清算するのはどうでしょうか。確かに、こうすれば手番を握ることが出来るので、先程のように☖7八銀と食いつかれる心配はありません。
ただ、この変化は、相手の銀を引き付けさせていることが気になります。
冒頭の局面で、後手の5四の銀は、自玉から離れた場所におり、囲いの守りに機能しているとは言い難い駒でした。しかし、上図のように6三に配置できれば、この銀は確実に受けに機能します。この局面も先手が優勢ではあるのですが、スマートに勝つのは大変な印象ですね。
駒得するプランと飛車交換を行うプラン、二通りの変化を解説しましたが、これらの変化には共通している問題があります。それは、後手玉が「見える」形になっていないことです。
どちらも後手は穴熊の最大の長所である「ゼット」を維持しており、それが相手を突き離せない一番の要因です。それを踏まえると、先手が選ぶべき手が見えてくるのではないでしょうか。
そう、☖6三飛に対しては、豪快に☗8二竜とぶった切ってしまうのが明るい指し方になります。これで敵玉を「見える」形にしましょう。
後手は、☖同玉の一手ですが、☗6四歩☖同飛☗8六角で追撃します。敵玉の最も近い場所にいる守備駒を攻撃するのは、寄せの基本ですね。
ここで☖6三飛は、☗6四金で問題ありません。また、☖6三歩には☗6四角→☗6二金で良いでしょう。先手はこの飛車を動かしてしまえば、6筋に自分の駒が打てるようになるので、寄せが分かりやすくなります。
本譜は止む無く☖6六飛と逃げてきましたが、これには自然に☗5三角成と指せば、明快に一手勝ちの局面が作れていますね。
次は銀を取る手や☗6二金が厳しい寄せになります。後手は有効な受けは利きませんが、角や銀を渡すと☗7一銀(角)から自玉が詰んでしまうので、先手玉を攻めることが出来ません。この局面は、先手玉がゼットであり、後手玉は一手一手の寄り筋です。よって、先手勝勢だと言えるでしょう。
このように、相穴熊の将棋は敵玉を引っ張り出し、相手のゼットを早急に解除することが大きな意味を持ちます。最終図のような状況が、まさに理想ですね。多少の駒の損得に囚われず、とにかく敵玉が「見える」形に持ち込みましょう。
再生を許さないために露出させる
繰り返しになりますが、相穴熊の将棋では、相手よりも先に敵玉を引っ張り出すことが大切です。これは、ゼットを解除できる恩恵が大きいからですが、もう一つ、別の大きな理由があります。
例えば、これは失敗例の一つとして挙げた局面です。この局面の後手は、持ち駒に銀を二枚持っていますね。つまり、このあと☖7三銀や☖6二銀などで、囲いを再生できる余地が残っていることを意味します。
多少、相手の穴熊を剥がしたところで、再び金気を打ちつけられると、元の木阿弥となってしまいます。つまり、玉を引っ張り出さないと、延々と穴熊を再生されてしまう恐れがあるのですね。
逆に、こうして敵玉を露出させれば、穴熊を再生することは難しくなるので、相手の粘りを断ち切ることが出来ます。こうした二つの恩恵があるので、相穴熊は敵玉を引っ張り出すことが大事になる訳ですね。これは非常に汎用性が高いので、銘記しておきましょう。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです!
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