どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【終盤は玉の可動域を意識せよ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) September 5, 2023
相手が☗24歩と叩いて形を乱しに来たところ。どう応じても味が悪いですが、ここは☖24同玉が最も耐久力のある対応です。
玉は露出しますが、こうして広さを保つ方が粘り強く、寄せられにくい配置を作れます。ゆえに、☖同銀よりも勝りますね。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/OgAJf2gbNH
将棋は序中盤の段階だと玉型は整っていますが、終盤になると徐々に乱れが大きくなるものです。ゆえに、そうした状況を乗り切る技術は、とても重要だと言えるでしょう。今回は、それを考える際に、役立つ指針をテーマに解説を進めたいと思います。
逃げ場の多さは、頼もしい武器になる
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗2四歩と指し、こちらの囲いを乱しにきたところです。
具体的な指し手を考える前に、まず上図の状況を整理しておきましょう。
玉型は、互いに金銀二枚の囲いです。ただ、相手の方が囲いの中に収まっているので、玉の安全度はやや相手に分があるでしょうか。
駒の損得は、互角です。また、現局面は終盤戦なので、この評価軸はさほど重要ではないという背景もあります。
駒の働きは、こちらは7三の金が、相手は8六の角が働きの乏しい駒です。ただ、角と金では角の方が高い戦力と判断するのが普通ですね。それを踏まえると、働きに関してはこちらの方が勝っていると言えるでしょう。
つまり話をまとめると、こちらは玉型で劣っている問題を上手く対処すれば、形勢を突き放すことが期待できる状況と言えます。これを踏まえて、この叩きの歩の対応を考えてみましょう。
さて、一般論として、玉は自陣の中にいる方が安全です。なので、ここは☖2四同銀が無難な対応に見えるところですね。
ただ、これを選ぶと☗6八銀と引かれる手が手強い一着になります。結論から述べると、その局面はこちらが勝てません。
☖3七角成と撤退すると、☗7七角の王手が痛烈。こちらは玉を上部へ泳ぐことが出来ないので、この王手はすこぶる受けにくいですね。また、ここで☖6八同角成☗同玉と進めても、次の☗7七角や☗5一角が厳しいので、情勢が厳しいことには変わりありません。
この変化は、先手の懸案事項だった8六の角が働いていますし、7三の金も目標にされています。そして、後手のテーマであった「玉型で劣っている問題の対処」が達成できていないことも痛いですね。これらの要素が大きいので、上図はこちらが勝てない将棋なのです。
こうした背景があったので、冒頭の局面で筆者は☖2四同玉と応じました。これが適切な対応になります。
傍目には、自玉が露出するので危険な印象を受けるかも知れません。しかし、この対応をすれば、玉の可動域が広いことが自慢です。
つまり、失敗図の変化では、自玉が上部へ向かうことが不可能でした。けれども、この局面だと三方向に逃げ道があるので、包囲されにくいメリットがあります。そこに高い価値を置いているのですね。
さて、ここで先手が先程と同じように☗6八銀と引くとどうなるでしょうか。この場合、後手は喜んで☖3七角成と指すことが出来ます。
終盤戦において大人しく大駒を逃げる姿勢は、良いことにならないケースが多いものです。しかし、この場合は直前に指した☖2四同玉とのシナジーが高いので、特に差し支えないのです。
ここに馬が配置できれば上部の守りが手厚くなりますし、☖3六馬と引く楽しみも生じます。つまり、この☖3七角成は「ただ逃げるだけ」の手ではなく、上部を開拓する意味があるのですね。玉が上部へ移動できる☖2四同玉を選んだからこそ、ここに馬を作る手に価値が生まれるのです。
ちなみに、ここで☗7七角には☖8六歩と攻める手が厳しいので、8六の角を味よく使われる懸念もありません。
相手としては、☖3七角成が厄介であるならば、☗4八銀で角を捕獲する手も一考の余地があります。ただ、これはシンプルに☖同角成☗同金☖2九飛と攻勢に出れば問題ないでしょう。
これには☗8八玉と入城するのが妥当ですが、こちらは手番を取りながら攻防手を打つことに成功しました。それに満足して、じっと☖6四金と活用しておきましょう。これで☗5一角や☗4六角を先受けしておけば、あとは存分に攻めることが出来ます。
上図ははっきり優勢というわけではありませんが、当初の目的であった「玉型で劣っている問題の対処」は十分に達成できています。玉の広さを確保していることが心強いですね。
このように、終盤戦で自玉が堅くない玉型のときは、広さを重視した対応をすると寄せられにくい配置を作ることが出来ます。玉の利きが多かったり、逃走ルートを確保している場所に自玉を配置しておきましょう。特に、こうした姿勢は上部を開拓する展開とシナジーが高いので、それも併せて意識しておくと良いでしょう。
囲いの骨格を簡単に崩さない
繰り返しになりますが、堅い玉型ではない場合は、広さを重視した姿勢で受けの手を選ぶことが肝要です。だからこそ筆者は☗2四歩の叩きに☖同玉と応じた訳ですが、実を言うと、もう一つの判断基準と合致していたことも☖2四同玉を選んだ理由ではあります。
それは、「囲いの骨格を崩さないこと」です。
冒頭の局面でこちらの玉型は、銀冠の骨格が残っていますね。もし☖2四同銀を選んでしまうと、金気の連携が崩れるので守備力が落ちる嫌いがあります。そうなると、たとえ囲いの中に玉が収まっていても、耐久性に欠けるので延命しにくい状況になるのです。
逆に、☖2四同玉の変化は銀冠の骨格を維持しているので、堅さも維持していますね。現状、自玉は露出していますが、これが下段に戻る展開になると、囲いの骨格を保っていた恩恵が光ります。なので☖2四同玉の方が安全を確保しやすいのですね。
このように、相手が叩きの歩などでこちらの配置を乱しに来た場合は、なるべく囲いの骨格が残る受けを選ぶのが賢明です。そうしたことを意識しておくと、寄せられにくい状況を作ることが出来るでしょう。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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