どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【相手に悪手を指させて動く】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) November 16, 2024
こちらは仕掛けるなら☖65桂が一案です。それでも悪くはないですが、ここは一回☖95歩と突き、手待ちをするほうが賢明です。… pic.twitter.com/ybzLGBQPF0
将棋は駒組みが完了すれば、基本的には仕掛けを考えることになります。ただ、仕掛けは失敗すると形勢の悪化に直結するので、それの技術を身につけることは、非常に高い価値があると言えます。
そこで今回は、仕掛ける際に意識しておくと良いことをテーマにして、解説を進めたいと思います。
マイナスの手を指させて動く
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗9八香と指し、手待ちをしたところです。
こちらは囲いの構築が完了しており、攻撃態勢も万全の状態です。ゆえに、駒組みが飽和状態と言えるでしょう。そうなると、仕掛けを考える段階に入っていると判断できます。その最適な方法を見つけることが、この局面における命題ですね。
こうした二枚銀急戦の将棋では、銀桂を五段目に進めるのがファーストステップです。ゆえに、ここで☖6五桂と跳ねるのは自然ですね。
これを指すと、☗6八角☖5五銀左☗同銀☖同銀☗7七桂という進行が予想されます。
こちらは銀桂を前進させて好調のようですが、今しがた指された☗7七桂が、なかなか手強い一着です。この桂と6五の桂が交換になると、こちらは働きの良かった桂が盤上から消えてしまうので、あまり嬉しい取引とはなりません。とはいえ、上図でそれを回避することも難しいので、桂交換になるのはやむを得ないと言えます。
要するに、こちらは単純に☖6五桂と跳ねると自分の攻め駒が進む代わりに、相手の桂も捌かせてしまう弊害が生じるのです。こちらとしては、自分だけ得する状況を作りたいので、もう少し違う順で仕掛けたいところですね。
そういった思惑があったので、冒頭の局面で筆者は☖9五歩と伸ばしました。これが仕掛けの条件を良くする一着になります。
「こんな端歩を突いたところで、全く何の意味もないじゃん」と思われた方もいらっしゃるかと思います。そう、確かにこの手は仕掛ける際には不要な一着です。しかし、ここで手待ちをすることで、こちらは相手に悪手を指させることが出来るのです。
将棋は完全なパスは出来ないので、手番を渡されたら何らかの手を指さなければいけません。ただ、ここで相手は具体的に何を指せば良いのでしょう?
攻めるとすれば☗7五歩が見えますが、これは☖8四飛で無効です。また、☗5四歩も☖5二飛と回れば、将来、この歩を払えそうですね。
囲いを発展するなら☗3六歩や☗4七銀ですが、前者はコビンが開く問題が、後者は離れ駒が生じる問題があります。いずれも囲いが弱体化しているので、居飛車はそのタイミングで☖6五桂を跳べば、単に桂を跳ねた変化よりも得することが出来ます。
そう、実を言うと、冒頭の局面で駒組みが飽和しているのは、こちらだけでなく、相手も同じだったのです。そうなると、☖9五歩と伸ばして☗9六歩というパスを消せば、相手は有効手が消えるのでマイナスの手を指さざるを得なくなります。ゆえに、筆者はじっと端歩を突いたという訳なのです。
本譜は☗6八角と手待ちをしてきましたが、ここに角を引いてしまうと、相手は5五の利きが一枚減っています。よって、こちらは☖5五銀左☗同銀☖同銀で仕掛けましょう。相手の角引きを咎めていることが分かりますね。
今度は6五に桂を跳んでいないので、相手は8九の桂を捌く手段がありません。ここで☗7七桂と跳ねても☖7五歩があるので逆効果です。
本譜は銀交換になったことを利用するべく☗4五銀ともたれてきましたが、これには☖5二飛と回って、主戦場に戦力を送るのが適切な一手となります。
こうすれば、次に☖5六歩で中央を押さえることが出来ます。それが指せれば☖6五桂の威力が上がるので、こちらは快調に敵陣を攻めることが出来ますね。この局面は、居飛車のほうが中央の勢力が強かったり、攻めの桂の使いやすさに差があることが大きいので、居飛車有利と言えるでしょう。
こうした進行を見ると、あえて☖9五歩で手を渡した恩恵がお分かり頂けたかと思います。
このように、仕掛けを行う際には愚直に攻める手ばかり考えるのではなく、「相手にマイナスの手を指させてから攻める」ということも意識しましょう。こうして相手にデバフを掛けてから仕掛けることが出来れば、中盤戦がとても戦いやすくなるので、これは大事な技術の一つと言えます。
相手の最善形を見極めることが大事
なお、今回紹介した「相手にマイナスの手を指させてから攻める」テクニックは、使いどころを誤ると緩手を指してしまうことになりかねないリスクはあります。ゆえに、どういったときに☖9五歩のような手待ちをすれば良いのか、ということにも言及しておきましょう。
それを使う判断基準としては、相手が最善形になっているか否かで見ると良いでしょう。
繰り返しになりますが、冒頭の局面の敵陣は、駒組みが飽和しており最善形が完成していると言えます。こうした最善形の配置は戦う条件がとても良いので、仕掛けを行う側としては、動く手の評価を下げざるを得ません。ゆえに、そうした場合は手待ちを掘り下げることになります。
裏を返せば、相手の最善形が整う前は、仕掛けのチャンスが眠っているとも受け取れます。そうした性質は、「離れ駒に手あり」という格言からも読み取ることが出来ます。仕掛けを考える際には、自分の駒組みだけでなく、敵陣の駒組みにも意識を向けると、より良い判断が行えるようになるかと思います。
また、こうした理想を実現するテクニックは、他にも様々な種類があります。詳しくは、拙著「盤上のシナリオ」に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
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