囲いを崩す導入で心掛けると良いこと③

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【高美濃を崩す必修手筋】

こちらは持ち駒が豊富にあるので、敵玉の寄せに向かえる状況です。候補手はいくつかありますが、ここは☖48歩が最もスマートですね。… pic.twitter.com/zXJTMS32xs

— あらきっぺ (@burstlinker0828) April 1, 2025

将棋は終盤戦が近づくと、相手の囲いを崩す算段をつけることが必要です。ただ、そのとき相手の囲いが傷ひとつない状態だと、攻略の糸口が見えにくいケースもあるでしょう。

そこで今回は、どんなことを意識すれば囲いを崩しやすい状況が作れるのか？　ということをテーマにして、解説したいと思います。

手番を取りながら攻め駒を設置する

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。下図は相手が☗５五角と指し、攻防手を放ったところです。

この局面は、こちらが桂得しており、囲いの堅さでも大きくリードしています。ゆえに、形勢は居飛車がはっきり優勢です。このアドバンテージを活かし、どのように相手の囲いを攻略するかが、こちらのテーマですね。

形勢が離れているので、上図では☖６五桂のように緩めの手を指しても十分です。ただ、この手は敵の囲いに大きな脅威を与えている訳ではないので、もう少し強めの手を繰り出したい感はあります。あまりに緩いことを行うと、それが逆転の呼び水になりかねません。

囲いを崩すコツは、敵の金を狙うことがセオリーの一つです。それを踏まえると、上図で☖６九角と打つのは一案です。これは次に☖４七角成を狙っています。ただ、☗５九飛と力づくで受けられると、６九の角が動かしにくくなるので決定的なダメージを与えるには至りません。

そうした背景があったので、上図で筆者はもう少し工夫することにしました。具体的には、☖４八歩と叩きます。これで金を狙うのが面白いですね。

相手は複数の応接がありますが、最も囲いが乱れないのは☗同金引でしょう。傍目には側面を堅くさせただけに感じるかもしれません。

しかし、そこで☖２四桂と打てば、相手は妙に受けが難しい格好になるのです。

これは☖３六桂を狙っています。それが実現すれば、高美濃が崩壊するのは言うまでもないですね。ゆえに相手は３六の地点を補強する必要がありますが、持ち駒が飛車しかないので、有効な手段は限られています。自然に指すなら、☗４七金が妥当でしょう。

ただ、こうなるとこちらは、手番を取りながら２四に桂を設置することが出来たので、敵の囲いを攻略する条件が良くなりました。よって、今度こそ☖６九角が効果の高い一打になります。

冒頭の局面で☖６九角を打っても狙いは☖４七角成だけでしたが、上図ではもう一つ☖３六桂という狙いも増えています。手番を取りながら攻め駒を設置したことで、攻めの威力が上がっていることが読み取れます。

ここで☗５九飛と抵抗しても、☖４七角成☗８九飛のときに☖３六桂と跳ぶ手があるので、スムーズに寄せが進みます。以下、☗１七玉☖５六馬と進めれば、程なく寄せ切れるでしょう。次は☖５五馬→☖２八角が楽しみですね。

こうして一連の進行を見ると、手番を取りながら２四に桂を設置したことで、相手を受けが難しい状況に追い込めたことが分かります。

囲いを崩す導入においては、攻め駒を要所に設置することが必須です。そして欲を言えば、それを手番を取りながら設置することが理想です。そうすれば敵に手番を渡すことなく寄せの準備が進むので、攻防ともに多くの恩恵を得ることが出来ます。こういった細かい部分は競り合いを制す要因に直結してくるので、寄せの導入部分では是非とも意識してみてください。

敵の受けの手段を減らす

なお、相手としては☖４八歩の叩きに☗同金引だと粘りようがなくなるので、☗３九金とかわしたほうが頑張れる可能性が高いとは言えます。

この場合、☖２四桂と設置しても先程より効果が薄いので、別のアプローチを考えるほうが賢明です。候補手は複数ありますが、堅実に指すなら☖７七角と打つ手が考えられます。

これは敵の攻防駒を消しに行くことが趣旨であり、☗７三角成や☗５三歩成を牽制しています。もし☗７一飛☖３一金☗７三飛成で桂を回収してきたら、☖５五角成☗同銀☖１五歩と進めるのが急所を突いた順になります。

これを☗同歩だと☖１六桂☗同香☖１七角で強引に送りの手筋を使えば、相手は金駒が無いので受けが難しい形になります。この攻め筋は、前もって☖４八歩を利かしていたので発動できる攻めですね。

また、この進行は［☖４八歩☗３九金］の交換が入ったことで、☗５三歩成→☗５九歩のような下段に壁を作る受け方を消していることにも注目して頂きたい部分です。このように、敵の受けを減らす手を前もって指しておくことも、囲いを崩す導入部分では大事な要素の一つと言えます。

また、こうした囲いを崩す導入部分で心掛けると良いことは、他にもあります。よろしければ、以下の記事も併せてご覧いただけますと幸いです。