どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【敵の攻めをいなすときのコツ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) June 26, 2025
こちらは玉頭を攻められ、危うい格好になっています。どう安全を確保するかですが、ここは☗67金寄で金を移動させるのが得策です。… pic.twitter.com/Hoj2CVpKf3
将棋を指していると、ときに相手の攻めをいかにして凌ぐのか? という場面に直面することもありますね。ただ、受けは成功形が見えにくい上に、どうしても攻めに比べると教材の数も少ないので、技術の定着が難しい分野ではあります。
そこで今回は、受けに回る際に役立つテクニックをテーマにして、解説を進めたいと思います。
争点をずらす
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。下図は相手が☖5六銀打と指し、こちらの玉に迫ってきたところです。

この局面は、駒の損得が[飛桂⇆銀]の交換になっており、こちらが大きく駒得しています。ただ、この瞬間は玉の安全度で差がついているので、こちらは相手の攻めをいなす必要がある状況です。その具体案を見つけることが、こちらの命題ですね。
さて、上図で平凡に応じるなら、☗5六同金☖同銀と進める順が浮かびます。この進行は、多くの方が第一感だったのではないでしょうか。ただ、結論から述べると、これは少し損な指し方となります。

これが損な理由は、主に二つあります。一つは、5七の地点の数的不利が解消されていないことです。その問題があるので、上図では再び受けの手が求められています。無難な受けは☗4九桂ですが、☖8八歩の追撃があるので、敵の攻めを完全に振りほどいた訳ではありません。
もう一つは、4五の銀を前に進めていることです。基本的に、敵の攻め駒は自玉の遠くに居るほうが好都合なので、それに接近されるのは歓迎すべき状況ではありません。
こうした背景があるので、冒頭の局面で筆者は別の手を選びました。具体的には、☗6七金寄と指します。これが最も的確な受けですね。

これは相手の攻め駒を盤上から消していませんし、自分の守り駒を盤上に増やす手でもありません。ところが、これで相手の攻めはピタッと止まってしまうのです。
上図で注目して頂きたい部分は、5七の地点の利きの数です。こちらは玉と金の二枚、相手は角と銀の二枚ですね。つまり、利きの数が同等です。基本的に将棋の攻めは数的優位を作らないと成功しないので、狙っている場所の利きの数が同等であれば、その攻めはヒットしません。ゆえに、こうして金を寄って6七に争点をずらすのは、適切な受けになっているのです。

後手は駒損しているので、何かしら手を作らなければいけません。案として☖8八歩と捨てる手は考えられますが、今度は堂々と☗9七桂と逃げる手が成立します。

ここで☖8九歩成と指されても、自然に☗同飛で問題ありません。飛車の横利きが通っているので、後手は下段を狙っても効果が無いのです。また、4五の銀が前に進んでいないので、攻めに迫力が足りていないことも痛いですね。
なお、☗6七金寄に対して☖同銀成☗同金☖5六金と食いつく手も考えられますが、これには手抜いて☗8一飛と攻め合うのが好判断となります。

ここで☖6七金と取られても、☗同玉と取り返せば7六と7八の二つ逃げ場があるので、先手玉は捕まらない格好です。対して、こちらは☗4一銀や☗2一飛成など厳しい攻め筋がたくさんあり、相手は受けが難しい格好です。この変化も後手は、4五の銀が前進していないことが祟っていますね。
こうして一連の手順を見ると、こちらは☗6七金寄を指したことで、状況がどんどん好転していったことが読み取れます。

先述したように、将棋の攻めは数的優位を作ることが基本です。裏を返せば、受け側は数的不利にならない状況を作る必要があり、そのためには「自陣の守り駒を増やす」「敵の攻め駒を取る」といった手段が基本です。
ただ、ときにはその二つの方法がどちらも得策にならないケースも存在します。そうした場合は、第三の手段である「争点をずらす」という方法も視野に入れましょう。こうした意識を持って受けの手を考えると、良い判断が出来るようになるかと思います。
攻められている場所をピンポイントで見る
なお、この「争点をずらす」という受け方は、「自陣の守り駒を増やす」「敵の攻め駒を取る」という方法と比べると、着想が異なるので発見するのが難しい側面があります。そこで、こうした受けを見つけやすくするための思考法にも言及しておきましょう。
コツとしては、「攻められている場所をピンポイントで見る」ことですね。

改めて、冒頭の局面を提示します。上図でこちらは守勢になっているわけですが、このとき「5筋を攻められている」「中央を攻められている」といった、ざっくりとした捉え方だと、どうしても5筋へ守り駒を向かわせたり、5筋の攻め駒を取ってしまうアプローチになってしまう可能性が高いように思います。

しかし、これを「相手は5七の地点だけを狙っている」という捉え方をすると、どうでしょうか。この視点なら5七の地点の数的不利を改善すれば良いので、☗6七金寄という手が見つけやすくなるのではないでしょうか。

また、こうした数的関係を正しく判断する際には、「その地点に駒が存在しているからと言って、そこに利きがあるとは限らない」という性質に目を向けることも大事です。上図では5七の地点に金の利きがあるように思えますが、実際には全くありません。こうした点も意識しておくと、「争点をずらす」受けの発見に繋がるかと思います。
また、こうした自玉周辺の受けで役立つテクニックは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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