どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【不利なときは大駒の活用を図れ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 31, 2023
8筋が受けにくく、苦しい状況です。この場所はケアが難しいので、違う場所に目を向けた方が良いですね。
具体的には、☗24歩☖同歩☗同飛で遊んでいる飛車を活用します。これで☗34飛→☗84飛とぶつければ、かなり状況が改善されました。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/1vaITcqxMh
将棋を指していると、ときに少し不利な局面に直面することもあるでしょう。そして、勝率を高めるには、そうした状況で崩れず形勢を引き離されない技術がとても大事になります。今回は、そうしたことをテーマに解説を進めていきましょう。
不利な場所では戦わない
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖8二飛と指し、飛車取りを防いだところです。
こちらは、8筋から攻められており、理想を言えばここを上手く凌ぎたいところです。ただ、☗8六歩は☖同銀で無効ですし、☗8四歩で飛車の利きを遮断しても☖8六歩→☖7六銀で被害を受けます。他には☗8三歩☖同飛☗8四歩と連打する手も一案ですが、☖8二飛の後にしっくりと来る手段がないですね。
このことから、上図の先手は8筋の嫌味を解消することが出来ません。また、一方的に角を手放していることも嬉しくないですね。これらを踏まえると、この局面は先手に良い条件がなく、不利な状況に陥っていると考えられます。なので、どう踏み止まるかが、こちらに課せられた命題ですね。
さて、こうした苦しい場面では、どういったプランを立てれば良いものでしょうか。策の一つに、「不利な場所で戦わない」という考え方があります。
上図で言えば、8筋ですね。ここだけが戦場になると、先手は一方的に攻められるのが目に見えています。そうなると、逆転は望めないでしょう。裏を返せば、戦場が広がり盤面全体が激化すれば、8筋の嫌味は相対的に緩和されるので逆転のチャンスが出てきます。
その着想から、筆者は☗2四歩☖同歩☗同飛と指しました。まずは右辺に戦線を広げます。
これは飛車の成り込みと☗3四飛を同時に狙っています。後手はひとまず☖8六歩☗7八銀で拠点を作ることは出来ますが、2筋は何らかの方法でケアが必要ですね。
筋よく受けるなら☖2二銀ですが、それには☗8三歩☖同飛☗3三角成☖同銀☗2一飛成という強襲を覚悟しなければなりません。☗2一飛成は金香両取りで、かつ☗7五桂→☗6三飛成という攻めも見据えています。厳密には☗2一飛成に☖4一角と打てば後手は自陣が安定するので優位を維持できるのですが、☖4一角が見えないと☖2二銀は指せないので、少しハードルが高い手ではあります。
こうした背景があったので、本譜は上図から☖8六歩☗7八銀☖2三歩と進みました。こちらは、もちろん☗3四飛で横歩を取ります。
先述したように、こちらは戦線を8筋から拡大したいので、ここは大人しく飛車を引き下がっている場合ではありません。
これは次に☗3三飛成で二枚替えする手が狙いです。なお、結論から述べると、後手は☖4四歩☗同飛☖7六銀と進めれば攻め合い勝ちが期待できる情勢でした。ただ、自ら玉のコビンを開けるのは抵抗がありますし、3一の銀を活用しないまま決戦するのも第一感では思い浮かびにくい手順ではあります。
そうした経緯があったので本譜は☖4二銀と受けてきたのですが、これには☗8四飛とぶつけるのが絶好の一手。ここまで来ると、先手の理想が実現した格好になりました。
ここから☖同飛☗同角と進むのは必然ですね。そして飛車交換になると、金銀が四枚とも自陣にいる先手の方が条件が良いことは明白です。こちらは飛車を打ち込まれる隙がありませんが、後手陣には8二に隙がありますね。
加えて、飛車交換になれば、8筋の脅威を緩和することにも繋がります。上図は先手がはっきり良くなったわけではありませんが、冒頭の局面と比較すれば、形勢の差を縮めることに成功したと言えるでしょう。
このように、苦しい状況に直面した場合は、「不利な場所だけで戦わない」ことを心掛けてみましょう。無論、相手に正確に指されると勝機は見いだせない訳ですが、こうした姿勢を取る方が、期待勝率は大いに上昇します。どれだけ性能の高い釣り具を用いても、その池に魚がいなければ何の効力も発揮しません。であるならば、他の場所に目を向けた方が良いという訳ですね。
問題点を見つけて改善する
繰り返しになりますが、今回の題材では「不利な場所で戦わない」ことが重要な部分でした。だからこそ筆者は8筋ではない場所に活路を求めたのですが、☗2四歩☖同歩☗同飛という手順を選んだ背景には、もう一つ別の理由もあったのです。
それは、「問題点を改善する」ことですね。
冒頭の局面では、実を言うと飛車の働きに不満がありました。この飛車は敵陣には直射していますが、2八に留まっているだけでは、活躍する未来が全く見えてきません。なので、これの働きを改善することは最優先事項なのです。そうなると、☗2四歩☖同歩☗同飛で飛車のポジションを変える手の価値が高い、と読み取ることが出来ますね。
特に、大駒の働きを改善すると自軍の戦力が格段に向上するので、盤上に大きな影響を与えます。形勢が苦しいときは、そうしたことも意識して挽回を図ると良いでしょう。
また、こうした不利な情勢を跳ね返すためのテクニックは、他にも様々な種類があります。詳しくは、拙著「盤上のシナリオ」に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2023年11月4日 10:10 AM
どうしても部分の攻防を考えがちですが、全体を見て局面を打開することを考えてみることはいいことですね🎵