どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【雁木で役に立つ受けの手筋】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) June 6, 2024
こちらは次に☗31角成を見せられています。それをどう防ぐかですが、ここは☖42玉と上がるのが雁木で出現しやすい受け方です。… pic.twitter.com/Hg3uqBDtac
現代将棋において、雁木は多くの戦型で出現します。ただ、この囲いは決して堅くはないので、いざ採用してみても、「何だか、すぐ崩されちゃうんだよな……」と感じている方は少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、雁木を指す上で役に立つ受けの考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。
自玉を狭くする受け方はダメ
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗2二角と打ち、こちらの玉に迫ってきたところです。
この局面は、こちらが大きく駒得しており、物量に差があるので優位に立っています。ただ、自玉は決して安全という訳ではないので、その問題を改善したいところですね。
さて、相手は次に☗3一角成が狙いの一つです。ゆえに、それを防ぐことを考えるのが自然です。例えば、☖4二銀と金駒を投資するのは手堅い受け方に思えます。
しかし、結論から述べると、こうした受け方は雁木において禁物です。というのも、そこから☗7三角と追撃されると、こちらは玉の安全度が上がっていないからです。
これは☗3一金からの詰めろになっています。冒頭の局面と比較すると、ずいぶん自玉が狭くなってしまった印象を受けるのではないでしょうか。詰めろを防ぐには☖6二桂が一案ですが、こうして持ち駒を次々に手放してしまうと、敵玉を寄せる戦力が足りなくなるので、芳しくありません。
上図の受け方は複数の問題がありますが、最も目を向けなければならないことは、自玉の可動域が狭まっていること。裏を返せば、広さを確保する受け方を講じれば、自玉の安全度は高まります。
そうした背景があったので、筆者は冒頭の局面から☖4二玉と上がりました。これがスマートな受け方になります。
これは上部へ逃げることを念頭に置きつつ、飛車の横利きを通すことで☗3一角成を牽制した意味があります。もし、ここで☗3一角成なら☖3三玉と逃げて安全です。もしくは、☖3一同飛☗同と☖6九竜で切り合っても一手勝ちが濃厚ですね。
相手は3一に角が成れないと見て、本譜は☗3一角打と迫ってきました。ただ、ここに角を打ってもらえれば、相手は2二に角が残ってしまうので、効率が悪いですね。こちらはそれに満足して、悠々☖5一玉とかわしておきます。
こうして3一に角を打たせれば、失敗例の変化で出現した☗7三角を打たれないので、挟撃態勢を作られる心配がありません。こちらは上部へ逃げることは叶いませんでしたが、6筋方面へ逃げることは出来たので、自玉の広さは十分に確保しています。上図はこちらに詰めろが続かないので、非常に安全な格好になりました。ゆえに、寄せ合い勝ちが見込める将棋ですね。
こうした対応を見ると、雁木は「堅さ」ではなく、「広さ」を重視した受けを行うほうが良いことが読み取れます。
このように、雁木に組んで自玉に危機が迫った場合は、なるべく自玉を広くするような受け方で安全を確保するのが肝要です。雁木は元より、そこまで堅い囲いではないので、「固めて頑張る」という姿勢は適性に合いません。それよりも、玉を柔軟に動かして相手の攻めをいなす姿勢で受けるようにしましょう。特に、上図のように玉を上部へ移動する対応は、良い凌ぎ方になるケースが多い印象です。
雁木は「玉の定位置」が存在しない
繰り返しになりますが、雁木という囲いは「堅さ」ではなく、「広さ」を重視した受けを行うことが大事です。ただ、囲いの耐久性の一番の指標は「堅さ」なので、これを重視しないのは、いまひとつピンとこないかもしれません。
この理屈を理解するには、雁木という囲いの特徴を知る必要があります。話を分かりやすくするため、矢倉と雁木を比較してみましょう。
上図は、総矢倉の配置ですね。この囲いを作ったとき、自玉が最も安全な場所はどこになるでしょうか? おそらく、多くの方は8八とお答えになるかと思います。矢倉囲いは玉の定位置が8八なので、基本的には、そこに玉を据えるのが最も安全ですね。
では、雁木の場合はどうでしょうか。矢倉囲いと同様、8八が安全なケースもあります……が、6九や6八のほうが安全なケースもあるでしょう。また、場合によっては5九や4八にいたほうが安全なケースも少なくありません。つまり、雁木という囲いは、玉の定位置が存在しないのです。
多くの将棋の囲いは、玉の定位置が存在します。矢倉囲いなら8八ですし、美濃囲いなら2八、穴熊なら9九といった具合です。こうした定位置が決まっている囲いは、その地点から玉が動いてしまうと途端に耐久力が落ちてしまいます。ゆえに、そこから玉が動かないよう、何としても堅さを維持して籠城しないといけないのですね。特に、穴熊はそれが顕著でしょう。
しかし、先述したように雁木は定位置が存在しません。自玉の最適な配置は、相手の攻め筋によって変化します。ゆえに、どこか一つの場所に留まる姿勢では、定位置が存在しないメリットを活かすことが出来ません。だからこそ、柔軟に玉が移動できるよう、広さを重視する必要があるという訳ですね。こうした性質を意識すると、雁木の扱い方がより上手くなるのではないでしょうか。
また、こうした知っておくと役立つ将棋の知識や定跡は、私のブログや note にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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