どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【銀冠の受けの奥義】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) August 20, 2024
こちらは仕掛けるなら7筋の歩を突っ掛けていくことになります。ただ、その前に☖12玉と寄るのが銀冠で時折、有効になる受けの奥義ですね。… pic.twitter.com/j3FlEBlE4B
銀冠という囲いは、上部が手厚く側面からの攻撃にも強いので、対抗型において汎用性の高い囲いです。これを使いこなせるようになると戦術の幅が格段に広がるので、修得する価値はすこぶる高いと言えるでしょう。
そこで今回は、銀冠を指す上で役に立つ受けのテクニックをテーマにして、解説を進めたいと思います。
角が負担にならないようにする
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗3六歩と指し、陣形を整備したところです。
この局面は、こちらは一歩損ではありますが、相手よりも囲いが堅いことや駒組みが早く進んでいるので、居飛車に不満のない展開と言えます。こちらとしては、その優位性を活かして先攻したい場面ですね。
手っ取り早く先攻するなら、上図では☖8六歩☗同歩☖7四歩と突っ掛けるのが一案です。確かに、部分的にはこれで動けていますね。
しかし、この段階で動いてしまうと、☗3五歩という反撃があることがネックです。
これを☖同歩だと☗3四歩で角が詰んでしまいます。かと言って、この歩が取れないとしっくりくる対応が難しいですね。こちらは3三の角が2四や4二に移動してしまうと、☗6五歩の突き出しが痛烈な攻めになります。こうして敵の角でコビン攻めをされる展開は、銀冠にとって最悪のパターンと言えます。
こうした背景があるので、冒頭の局面では☗3五歩の突き出しを警戒する必要があることが読み取れます。ゆえに、筆者は☖1二玉と指しました。これが銀冠ならではの受けの奥義になります。
銀冠は玉の定位置が2二(先手番の場合は8八)なので、こう指すのは意外に感じられた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ここに玉を寄ることで、こちらは複数の恩恵を得ることができるのです。
まず一つ目は、2二に空間を作ったことで、角の可動域が広がったことです。それにより、相手の狙いだった☗3五歩☖同歩☗3四歩という攻め筋を無効化することが出来ています。
例えば、上図から☗3七桂のような手には☖4四歩☗5六銀☖7四歩と進めれば、こちらは安心して攻める状況を作ることが出来ます。
こうなると相手は7筋の対処が難しいですし、☗6五歩にも☖7五歩で問題ありません。また、こちらは歩の入手が確実になっているので、将来☖3五歩と桂頭を攻めて行く手も楽しみの一つです。
上図の居飛車は、☗3五歩の攻め筋を消したことでリスクを抱えることなく先攻することに成功しています。ゆえに、この進行は満足ですね。
先述の変化を踏まえると、上図で振り飛車は☗6五歩と突く手も考えられます。これは先に動くことで守勢になる展開を避ける意味ですが、居飛車は☖1二玉型に構えているので、強気に応戦することが可能です。
具体的には、☖6五同歩☗同飛☖7七角成☗同桂☖6四銀と進めるのが得策です。
この☖6四銀が指せることが居飛車の自慢で、もし☖2二玉型であれば、☗6四同飛☖同飛☗5五角の王手飛車を喫してしまうところでした。つまり、☖1二玉型は「角のラインから避難している」恩恵もあるのですね。
上図では☗6六飛や☗6八飛が妥当な対応ですが、いずれも☖9九角と打てば相手は7・8筋のケアが難しいので、居飛車が面白い将棋と言えるでしょう。
こうして複数の変化を見ると、居飛車は☖1二玉と寄ったことで、攻めに専念しやすい状況を作ったことが分かりますね。
このように、対振り飛車で銀冠に囲った場合は、☖1二玉と寄る受けが有効になるケースが存在します。この受け方は、自分の角が攻撃されそうになったり、角交換になりそうな状況において効力を発揮します。銀冠は端攻めに強いので、玉が端に移動しても悪影響が少ない囲いです。状況に合わせて柔軟に自玉の位置を変える意識を持つと良いでしょう。
他のメリットとデメリット
先述したように、銀冠に囲った状態で端に玉を寄ると、自分の角が目標にされにくくなったり、角交換に強くなるメリットが得られます。ちなみに、このテクニックにはもう一つメリットがあるので、それにも言及しておきましょう。
それは、「ゼットが作りやすくなる」ということです。
例えば、今回の題材のような将棋だと、相手は6筋から飛車を成り込み、側面から攻めてくる展開が予想されます。そのとき、相手の攻め駒が4二まで迫ってきても、こちらの玉には有効な王手が掛からないのでゼットになっていますね。もし、通常の☖2二玉型であれば、こうはなりません。
つまり、銀冠で端に玉を寄ると、側面からの攻めを前もって避難できる恩恵もある訳ですね。
なお、ここまではメリットばかりにスポットを当てていましたが、この配置にもデメリットはあります。その一つに、端攻めを行うことが出来なくなることが挙げられます。
例えば、上図のような状況だと、部分的には☖1五歩☗同歩☖1八歩☗同香☖1九銀という攻め筋が有効です。しかし、端に玉を寄っていると始めの☖1五歩を絶対に取ってくれません。1一の香が攻めに使えないので、端攻めが実行できないのですね。
要するに、この☖1二玉という手は、敵の攻め筋を先受けしていることが主な恩恵であり、それによって側面の攻め合いを有利に運ぶための下準備を行っていると受け取れます。こうした性質を理解しておくと、このテクニックの使いどころが分かってくるのではないでしょうか。
また、こうした知っておくと役立つ将棋の知識や定跡は、私のブログや note にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2024年8月30日 10:26 AM
端に王を寄っておくのは場合によると、とても意味のある味のある手なのですね🎵