相穴熊を指すときに知っておくと便利な攻め筋②

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【相穴熊で使える必修手筋】

相手は７筋に飛車を配置して、将来、角頭を攻めようとしています。これにどう備えるかですが、案の一つに☗46飛と回る手がありますね。… pic.twitter.com/PUf3Y4uZtg

— あらきっぺ (@burstlinker0828) March 18, 2025

相穴熊の将棋は、金銀四枚で囲いを固めることも少なくありません。ゆえに、この戦型を上手く指しこなすには、飛角歩を上手に使って攻める技術が求められます。

そこで今回は、それを行う際に役立つ攻め筋をテーマにして、解説を進めたいと思います。

飛車の揺さぶりに期待する

今回は、上記ツイートの少し手前の局面から解説します。図は相手が☖５四銀と指し、攻めの銀を繰り出したところです。

ご覧の通り、互いに穴熊に組んでいますね。共に穴熊の構築が途中ですが、銀の出足に関しては、振り飛車のほうが早く進んでいます。居飛車としては、この相手の主張が活きない展開を目指したいところですね。

具体的に、どう銀の動きを牽制するかですが、ここで☗６六歩だけは指してはいけません。ぱっと見は銀を６五へ出させないようにするので自然に思えますが、☖４五歩と突く手を与えてしまうことが痛いのです。

次は☖４六歩で歩交換される手があります。それを防ぐなら☗２六飛と受けることになりますが、☖５五銀と進軍されると、やはり☖４六歩の狙いが持続するので芳しくありません。この☖５五銀は６六へ進軍する含みも作っており、非常に味の良い一着です。上図は振り飛車の銀の出足を止めることが出来ていないので、居飛車が不本意な序盤だと言えるでしょう。

こうした背景があるので、冒頭の局面で居飛車は、別のアプローチで敵の銀の進軍を防ぐ必要があります。具体的には☗６八金寄と指し、淡々と囲いを固めるのが賢明な着想になります。

これは☖６五銀を無視しているので危ういようですが、ここでは角道を止めずに戦うことに注目してください。それを開通させておけば☖４五歩を突かれる心配は無いですし、後述する攻め筋を発動できる恩恵も得られます。

問題は☖６五銀と出られた場合ですが、これには☗２六飛と浮き、飛車の横利きで銀の出足を止めましょう。

こうして飛車の横利きで銀の進軍を防ぐのは、対抗型の持久戦において頻出の手法です。ただ、これを行うと中央の歩が突けなくなるので、金銀が前に出せない弊害を抱えます。けれども、相穴熊の将棋においては金銀を前に出す必要性が乏しいので、この構想が有力な指し方になります。

ここで相手が☖７一金や☖５二金左などで囲いを固めてきたら、居飛車も☗７八金寄で囲いを強化します。以降は、☗５九銀→☗６八銀→☗７九金寄という要領で穴熊を固めるのが良いでしょう。右銀が６八までくっつけば、☗８六角→☗７七銀右で７筋を強化することも可能になります。

加えて、居飛車は金銀四枚の穴熊が完成すれば、☗３六飛と寄って３筋の歩をかすめ取る手も期待値の高い攻めになります。このように、居飛車は歩を全く突かなくても、攻防ともに手段に困りません。ゆえに、☗２六飛型で対処する構想が有力なのです。

上記の背景があるので、上図で振り飛車はあまり悠長な態度が取れません。動きを見せるなら☖７二飛と転換するのが一案です。こうすれば、いつでも７筋から攻めることが出来ますね。

ただ、これを指すと居飛車にも新たな手段が生じます。具体的には、☗４六飛と回るのが面白い揺さぶりです。

これは次に☗４四角と出る手を狙っています。それが指せると居飛車は飛車の成り込みが期待できるので、振り飛車は７筋の歩を突く余裕がありません。そして、この角の飛び出しを防ぐ手段は、非常に難しいですね。☖４二飛と戻れば受かりますが、それでは方針が支離滅裂です。振り飛車は４三の銀を繰り出したことが裏目に出ており、攻めが空転しています。よって、上図は居飛車が上手く立ち回ったと言えるでしょう。

こうして一連の進行を見ると、☗２六飛型は☗４六飛の揺さぶりを用意しているので、相手の攻めを大いに牽制していることが読み取れます。

今回の題材のように、相穴熊で振り飛車が攻めの銀を繰り出してくる構想は頻出します。そして、これに対しては☗２六飛型で対処するのが理想です。この構想は☗４六飛や☗３六飛の揺さぶりで振り飛車を素早く攻撃できるので、機動力が高く非常に優秀です。見た目以上に居飛車が勝ちやすい将棋になるので、機会があればぜひお試しください。

配置を活かす姿勢が大事

繰り返しになりますが、今回の題材では☗４六飛（☗３六飛）の揺さぶりを使って銀の進軍を逆手に取ることが話の肝でした。ゆえに筆者は冒頭の局面で☗２六飛と指したのですが、この手を選んだ背景には、別の理由もあったのです。

それは、「自陣の配置が☗５七歩型だったから」ですね。

改めて、失敗例の変化を提示します。ここで☗２六飛と指しても☖５五銀で上手くいかないのは先述した通りです。これは、☗５七歩型であることが露骨に祟った進行とも言えます。もし上図が☗５六歩型だとしたら、☗５七銀で全ての攻め筋が受かるので、それで何の問題もありません。

逆に、成功例のほうは、☗５七歩型だから飛車浮きが有効に機能していますが、もしこれが☗５六歩型ならば、７六の歩を取られるのでまずい指し方になることは言うまでもありません。飛車の横利きが直通しているからこそ、指せる構想なのです。

将棋にはいろいろな構想がありますが、その構想が有効に機能するかどうかは、自軍の駒の配置によって大きく変わります。基本的に、万能に有効な構想は存在しないので、配置を活かす構想をいかに当てはめるかということを意識するのが肝要です。そうした視点で駒組みを考えれば序盤でリードを奪えることが多くなりますし、いろいろな構想を知っておくほうが、引き出しが増えるので思考の幅が広がるとも言えます。

また、こうした相穴熊を指す上で知っておくと役立つ手筋は、他にもあります。詳しくは、以下の記事で解説しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。