どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【穴熊を活かす戦い方】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 9, 2025
相手が7筋の歩を伸ばしてプレッシャーを掛けたところ。攻守の判断が悩ましいですが、ここは堅実に☖72歩と受けるのが賢明です。… pic.twitter.com/htJ2dXvPL3
穴熊は非常に堅固な囲いですが、駒が偏っていたり自玉の距離感が分かりにくいので、どうしても感覚が上手くつかめないという方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、穴熊を活かすための戦い方をテーマにして、解説を進めていきましょう。
攻め急ぐ必要はない
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗7四歩と指し、こちらの囲いにプレッシャーを掛けたところです。

この局面は、こちらが香損になっています。しかし、駒の効率は抜群によく、玉型も悪くありません。4筋に垂れ歩を設置できていることも心強いですね。これらのアドバンテージがあるので、上図は振り飛車がやや指せる状況です。この優位性をどう拡大するかが、こちらに課せられた命題ですね。
さて、上図ではと金が作れるので、☖4七歩成と成るのは自然な一着に思えます。これで良ければ話は簡単です。
ただ、これには☗2四角☖同歩☗4四角と進められると、こちらは相当に嫌な局面を迎えることになります。

この角打ちは7一の金を射程に入れつつ、☗5三桂成を狙っています。こちらは攻め合うなら☖7五歩が一案ですが、☗7一角成☖同銀☗7三香と踏み込まれると一手負けが濃厚です。
ただ、ここで☖7四金と受けに回っても、☗7五香で駒損が拡大するので芳しくありません。上図は玉の堅さというアドバンテージを相手に取られており、振り飛車は苦しい状況に陥っています。
こうした背景があるので、冒頭の局面では直ちにと金を作れません。ゆえに、筆者は☖7二歩と指しました。これが穴熊を活かした一着になります。

ここに歩を打ってしまうと、先述した☖7五歩という攻め筋を消すので弱気に見えるかもしれません。しかし、ここでは自玉の堅さを担保することが極めて重要なのです。
相手は☖4七歩成を防ぐなら、☗4八歩が考えられます。ただ、それを指すと☖6九銀で金を剥がされる手を誘発するので、そこまで効果の高い受けではありません。そもそも、居飛車は次に☖4七歩成を指されても大したダメージはないので、これを受けずに攻めるほうが自然です。

攻めるとなると、やはり4四に角を設置する筋が最も急所を突いています。そうなると、☗2四飛☖同歩☗4四角が一案です。
ただ、これは手堅く☖6二銀と受けておけば、こちらは憂いの無い状態を維持できます。

こうすれば7一の金を剥がされる展開になりにくいですし、☗5三桂成も防いでいます。以降は☖4七歩成や☖2八飛などの着実な攻めを間に合わせる要領で指せば良いでしょう。この局面は相手の攻めをシャットアウトしているので、振り飛車が面白い将棋と言えます。

また、居飛車としては飛車を切らずに☗8六香と設置して力を溜める手も一案です。
ただ、この場合も振り飛車の方針は変わりません。つまり、攻めを急がず自玉の安全を優先するのです。具体的には、やはり☖6二銀と補強するのが賢明です。

これを指しておけば、将来指されるであろう☗4四角を先受けしているので、こちらは大いに安泰です。以降は☖4七歩成や☖7四金→☖6四歩といった手を楽しみにすれば良いですね。これも振り飛車は自玉が無敵状態なので、相当に負けない将棋と言えます。
こうして一連の進行を見ると、こちらは☖7二歩と打って囲いを補強したことで、勝ちやすい状況に持ち込めたことが読み取れます。

穴熊という囲いの長所は、「堅さ」や「遠さ」のステータスの高さにあります。これらが高い状況では、たとえ攻めが遅くとも十分に間に合う公算が高くなります。そのため、穴熊は攻めを急ぐよりも、囲いの安全度を優先するほうが得策になるケースが多々あります。こうした性質を理解しておくと、攻守の判断に迷うことが少なくなるでしょう。
寄せの手掛かりを機能させない
繰り返しになりますが、今回の題材では穴熊を活かすために攻め急がないことが話の肝でした。ゆえに筆者は☖7二歩と指したのですが、この手を選んだ背景には、別の理由もあったのです。
それは、「相手の寄せの手掛かりを機能させない」ということですね。

改めて、冒頭の局面を提示します。この局面の相手は、7四の歩や6五の桂が穴熊を攻略する手掛かりと言えます。これらの駒が活躍すると、こちらの囲いは必然的に弱体化します。そして、上図では常に☗7三歩成が残っているので、この状態で放置していると確実に活躍しますね。

しかし、こうして7二に歩を打ってしまえば、☗7三歩成から守備駒を剥がされる展開にはならないので、7四の歩の効力をかなり下げることが出来ます。その後の☖6二銀の補強も、6五の桂を使わせないという趣旨が読み取れます。
このように、敵の寄せの手掛かりを無効化する手入れを行うことが、終盤戦における受けのコツの一つです。こうしたことも意識できると、終盤戦でより良い判断が出来ることでしょう。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
【終盤戦のストラテジー】
https://amzn.to/3SUGPI7
0件のコメント