どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【最後の一枚は残しておく】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) September 10, 2023
相手が☖46歩と叩いたところ。これを☗58銀だと☖45金で敵陣が手厚く大変。なので、ここは無視します。
逆に、次の☖47歩成は☗同銀と取ります。この銀が消えると自玉が著しく薄くなるので危険ですね。囲いの最後の一枚は、極力残す方が賢明です。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/zBHUzTdDTQ
終盤の競り合いになると、いつ相手の攻めを手抜き、いつ受けに回るのかという判断は非常に悩ましいですね。今回は、それを考える際に一つの指針となる考え方をテーマに解説を進めたいと思います。
嫌味のついていない玉型を維持させない
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖4六歩と指し、利かしを通しに来たところです。
ちなみに、この局面はこちらが大きく駒得していること、及び相手の攻め駒の数が少ないので、こちらは複数の勝ち方が選べる状況ではあります。ただ、そうした場面では、なるべく紛れを生みださない勝ち方を選びたいものですね。その具体案を考えていきましょう。
例えば駒得を重視するのであれば、☗5六銀と上がる手が候補です。こうすれば4五の桂取りも4七の銀取りも同時に防げますね。
ただ、これは☖4五金☗同銀☖4八飛と進められる手が、やや嫌らしい側面があります。
これは金取りと☖4七歩成という複数の狙いがあります。☗5六角と打っても☖4七歩成☗同角☖7八飛成で被害は免れません。
上図でも先手は悪くはないのですが、この変化は後手玉が堅陣を維持していることが気になります。終盤戦でこうした状況を許すと、相手は攻めに専念できるので実戦的に非常に楽になります。これは逆転されやすいシチュエーションに陥りやすく、あまり選びたくはない変化ですね。
ゆえに、ここは☗5三桂成と銀を取り、敵玉に迫る方が賢明です。相手も当然、☖4七歩成で銀を取るでしょう。問題は、その局面ですね。こちらは再び、攻めか受けの選択を迫られています。
☗5三桂成で攻め合った流れを考えると、ここも☗4二成桂で踏み込んでしまうのは一理あります。この場合、相手は☖3八と☗同玉☖4二金と進めてくることでしょう。
ただ、その局面を迎えると、先手は速度で一手負けていることが気になります。
先手玉には☖4六桂からの詰めろが掛かっており、後手玉はまだ不詰めです。
一応、厳密には☗4四角や☗3一銀☖同玉☗5一飛で合駒請求すると、先手が勝っている変化ではあります。けれども、それらの順で勝つのは煩雑な嫌いがあり、危ない橋を渡っている感は否めません。
加えて、上図は☖2七銀☗同玉☖4七飛などで、いつでも攻防手が飛んでくることも厄介です。このように、自玉が裸になるとトン死筋や攻防手がポンポン飛んできやすくなり、読むべき材料が増えてしまいます。ゆえに、これも逆転されやすい変化ではありますね。
こうした背景があるので、筆者は☖4七歩成に対して☗同銀と応じました。こちらの方が逆転されにくい状況を作れます。
今度は、逆に相手が攻めと受けの選択を迫られています。ただ、相手は☖3三金右と受けても☗4一馬が☗3一角からの詰めろになるので、半端に受けに回っても逆効果となります。
ゆえに、本譜は☖4八飛☗3八銀打☖7八飛成で金を拾ってきましたが、☗4二成桂☖同金☗5一飛と進めておけば、こちらがはっきり一手勝ちの局面となりました。
これは☗3一角からの詰めろです。それを防ぐなら☖3二金打が一案ですが、☗4四桂が再び詰めろになるので問題ありません。また、相手は金駒を一枚使うとこちらの玉に詰めろを掛けることが出来なくなることも痛いですね。ここまで来ると、もう逆転の余地は相当に無いでしょう。
このように、終盤戦における競り合いでは、相手に堅陣を維持させないことが大事です。同時に、自玉が裸になる展開も避けましょう。自玉が著しく薄くなってしまうと、トン死筋や攻防手が生じるリスクが高まり、煩雑な状況を招くことになります。特に、今回の題材では、相手に攻防手を撃たせないような手順を選んで一手勝ちの局面を作っていることに注目して頂ければと思います。
保険を作るために、最後の一枚は残しておく
今回の題材で難しかったところは、「初めの銀取りは無視したのに、二度目の銀取りは受けに回っている」ところだと思われます。これは、先述したように自玉が裸にされるリスクを嫌っている訳ですが、もう一つの判断基準に、守備駒の最後の一枚は残しておきたいから受けに回ったという側面もあります。
なお、上図の変化は、ノーガードで攻め合った変化です。上記のように、この変化でも先手は勝つことが出来ます。しかし、こうして自玉が裸にされると、囲いを再生することが望めなくなってしまうことがリスキーなのです。つまり、保険が利かなくなる訳ですね。
逆に、一枚でも守備駒が残っていると、それを起点にして囲いを再構築することが出来ます。こちらは次に☗3八銀打が指せれば、相当に安全度が上がりますね。自玉周辺の金気の数が[0→1]と増えても大して安全にはなりませんが、[1→2]と増えると、一気に安全度が上がります。将棋はどんな簡素な囲いでも、必ず金気の数は二枚ありますよね。それと同じ理屈です。
このように、囲いの守備駒を一枚でも残しておくと、仮に攻め損なったとしても粘りが利くので、保険を作ることが出来ます。そうしたことを意識しておくと、簡単には負けない指し回しが出来ることでしょう。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和 · 2023年9月22日 9:38 AM
いい勉強になりました😃
なんでも出処進退は難しいものです🎵