相手の駒を遊ばせる最強のテクニック

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【戦場を絞って遊び駒を作る】

馬取りを、どう対処するかという局面。自然に指すなら☖69馬☗68金☖79馬ですが、これは相手の７筋の金気が働く展開です。

なので、☖38同馬→☖43香と指しました。こうして戦場を４筋に絞れば、相手の７筋の金気を遊ばせることが出来ますね。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/IhkSYA0zMg

— あらきっぺ (@burstlinker0828) September 18, 2023

将棋は遊び駒を作ってしまうと、自身の戦力が落ちるので支障が生じますね。裏を返せば、相手の駒を遊ばせる状況に持ち込めば、自ずと優位に立つことが出来ます。今回は、それを実現するテクニックをテーマに解説を進めたいと思います。

戦場を絞る

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗４八歩と指し、４筋の守りを固めたところです。

何はともあれ、こちらはこの馬取りを対処する必要があります。馬が移動できる場所は複数ありますが、☖６九馬と侵入する手が第一感だった方は多いのではないでしょうか。

確かに、こうして敵陣に攻め駒を侵入させるのは自然な指し方です。ただ、そこから☗６八金☖７九馬☗２一成香と進められると、少し雲行きが怪しくなっています。

こちらは☖８九馬で桂を取ることは出来ますが、☗１六飛と寄られる手が厄介ですね。相手の飛車に侵入されると、こちらは自玉が途端に危うくなるので、芳しくないと言えるでしょう。

また、この局面は枠で囲った部分の配置が、こちらにとって面白くありません。冒頭の局面で先手陣の７筋にいた金銀は、そこまで働きが強い駒ではありませんでした。しかし、現局面ではこちらの馬を押さえ込む立派な守備駒として機能しています。つまり、☖６九馬と入ってしまうと、結果としてこちらの馬が遊び駒になってしまうのですね。

こうした背景があったので、筆者は冒頭の局面から☖３八馬☗同玉☖４三香と進めました。これが駒の効率を重視した手順になります。

ぱっと見は、馬をあっさり捨てるので違和感を覚える進行かも知れません。けれども、この順を選ぶことで、こちらは戦場を４筋に絞ることに成功しています。ここだけの戦いにすれば、先手陣の７筋の金銀は全く働きません。それがこちらの付け目なのです。

要するに、こちらは馬を犠牲にすることで、強制的に相手の遊び駒を発生させたのです。また、「馬の犠牲」と言っても実際は角金交換なので、多大な損害を受け入れている訳ではありません。むしろ、この程度の損失でこれほど大きなリターンが得られるのであれば、大歓迎だと言えるでしょう。

さて、相手は４筋を突破されると自陣が崩壊します。ただ、☗３七銀では☖４七歩と合わせられて受けにならないですね。４八の地点だけ強化すれば良いというわけではないのです。

４八と４七を同時にケアするには、☗４七銀と打つよりありません。対して、こちらは☖３五歩と突っ掛けましょう。これが攻めに厚みを加える好着想になります。

もし☗３五同歩なら、☖４七香成→☖４四銀と進めます。３筋の歩を突き捨てた効果で、銀がスムーズに前進できるので攻めが分かりやすいですね。

また、☗２一成香で戦力を補充してきた場合は、気にせず☖３六歩で力を溜めましょう。

次は、☖４七香成→☖４九銀が狙いです。☗３六同飛と歩を払っても☖４七香成☗同歩☖４九銀☗４八玉☖３八金と進めれば、技が掛かっていますね。以下、☗同飛☖同銀成☗同玉には☖５八飛が王手金取りです。

この局面は、４筋の攻めが止まらないので相手は受けに困っています。ゆえに、こちらが大きくリードを奪っていますね。

相手が４筋の攻めを止められない理由は、何と言っても７筋の金銀が受けに機能していないことが挙げられます。これらが遊び駒になっていることが、あまりにも痛いですね。

このように、戦場を特定の部分に絞って戦うと、そのエリアに関係のない駒は全く機能しなくなります。こうしたことを意識して敵陣への攻めを考えると、良い判断が出来るようになるでしょう。

働きの弱い相手の駒は触らない

ちなみに、こうした相手の駒を遊ばせるテクニックは、他にもあります。中でも汎用性が高いのは、「働きの弱い相手の駒を触りに行かない」手法でしょう。

今回の題材で述べると、先手陣の７筋の金銀が働きの弱い駒です。失敗例では☖６九馬と指したことで、あの金銀が働き出していることが分かります。このように、相手の働いていない駒を触って刺激すると、活用の機会を与えてしまうので損になることが多いのです。

逆に、成功例の変化では、延々と７筋の金銀を放置していますね。こうした態度で事を進める方が、相手は遊んでいる駒を運用する余裕がないので困るのです。この考え方は「戦場を絞る」テクニックとシナジーが高いので、併せて意識すると良いでしょう。

また、こうした優位を掴むためのテクニックは、他にも様々な種類があります。詳しくは、拙著「盤上のシナリオ」に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。

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