どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【相手の壁駒には触らない】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) September 26, 2023
どのように敵玉へ迫るかという場面。☗43銀成でも悪くはないですが、これだと2二の角に捌かれることが不満です。
なので、☗97角と指しました。こうすれば壁駒である2二の角に触らず敵玉に迫れるので、効率よく寄せを進めることが出来ますね。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/z8iKZLoHFc
どう見ても優勢な終盤戦なのに、寄せがスマートに進まず逆転されてしまった……という悔しい経験をした方は少なくないのではないでしょうか? そこで今回は、もたつかない寄せを実行する考え方をテーマに解説を進めたいと思います。
壁形の解消を促さない
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖2二角と指し、角取りを回避したところです。
具体的な指し手を考える前に、まず現局面の状況を整理します。
玉型は、明らかにこちらの方が安全ですね。これは一目瞭然だと思います。
駒の損得は、[金銀⇄飛桂]の交換なので、いい勝負です。
駒の効率は、こちらは遊び駒はありませんが、相手は2二の角や7三の銀がイマイチですね。また、3四の金は守備駒ですが、玉から離れた場所にいるので働きは弱いと判断できます。つまり、効率は大差ですね。
まとめると、現局面は玉型と効率の差が甚だしく、こちらが大いに優勢であることが読み取れます。あとは、どう寄せを決めるかという段階ですね。
さて、具体的にどう迫るかですが、☗4三銀不成を考えた方は多いのではないでしょうか。こうして攻め駒を前進させるのは攻めの基本ですし、敵玉を上から押さえる手にもなっています。
ただ、この手を指すと、☖8八角成☗同玉☖3三金と抵抗されたときが問題です。
たった3手しか進んでいませんが、こうなるとこちらは、冒頭の局面よりも敵玉を寄せる条件が悪くなっています。
3手前の局面と比較すると、互いに角を捌いたことは同じですね。しかし、後手は2二の角がいなくなると2二→1三と逃げられるようになり、玉の安全度が上がっています。それが非常に大きいので、寄せる条件が悪化しているのです。
冒頭の局面において、上図の青枠で囲った部分は、玉の上部脱出を阻む壁駒となっています。特に、2二の角は後手にとって負担になっている駒であり、これを盤上に残したまま寄せを進めるのがこちらの理想です。
こうした背景があったので、筆者は☗9七角と指しました。これが壁駒に触らない寄せ方になります。
この方向から角を使うのは意外に感じられたかもしれません。ただ、こうして4四の銀を動かさないアプローチで攻めれば、2二の角に捌かれる心配はありません。つまり、2筋の壁形を維持させるため、4四の銀は置き石として使う方がクレバーなのです。
加えて、相手はこの王手を味よく受け止めることが出来ません。☖8六歩は☗同角、☖6四歩は☗同歩で無効ですね。やむを得ず本譜は☖4二歩と受けてきましたが、じっと☗5三角成で馬を作っておくのが冷静な寄せとなります。
ぱっと見は厳しさに欠けるようですが、これを怠ると☖4四金☗同歩☖同角から角を捌かれてしまい、寄せが難しくなります。やはり、2筋の壁駒を解消させないことが急所なのですね。2二の角を世に出さなければ、後手玉に上部へ脱走される懸念はありません。
☗5三角成に対して、相手は受けても自玉が安全にならないので、☖2八飛で攻めに転じるのが妥当でしょう。これには一気に踏み込むのもありますが、それよりも☗6八金引でお手入れする方が堅実な勝ち方ですね。
ちなみに、後手の☖2八飛は、次に☖8六歩☗同歩☖8七歩☗同銀☖4四角☗同歩☖8八銀という筋を狙っていました。しかし、こうして飛車の横利きを遮断すれば、☖8七歩を打たれても堂々と☗同銀で差し支えありません。つまり、この金引きも[☖4四角を阻止する=2筋の壁形を解消させない]趣旨に基づいている手であることが分かります。
この局面は、相手から厳しい攻めは見当たりませんし、次は☗5二金で畳み掛ける手が厳しいですね。2筋が壁になっているので、逆サイドから押し寄せて行けば、相手は受けが利きません。
このように、終盤戦において、相手の壁形を解消させないことは寄せやすさに直結します。逆に、失敗図のように壁駒を捌かせると、敵玉が広くなるので寄せに手間取ることになります。こうしたことを意識すると、的確に急所を突く寄せの一助となることでしょう。
働きの悪い駒は刺激しない
繰り返しになりますが、今回の題材では相手の壁形を維持させることがポイントでした。なので4四の銀を動かさずに攻めた訳ですが、筆者がそのアプローチを選んだのは、もう一つ理由があります。
それは、「働きの悪い駒を刺激しない」ことですね。
改めて、冒頭の局面をご覧いただきましょう。始めに述べたように、上図の後手は働きの悪い駒が複数あります。特に、2二の角は受けに機能せず玉の逃げ道も塞いでいるので、相当なお荷物と言えます。なので、☗4三銀不成と指し、この駒を刺激するのは損な選択なのですね。「触らぬ神に祟りなし」というわけです。
模範例として示した☗9七角→☗5三角成という迫り方は、働きの悪い駒に触っていないことが読み取れます。失敗図である☗4三銀不成の変化は3四の金に触っていましたが、この変化では完全にスルーしていますね。半端に効率の悪い駒に働きかけると、それが活躍するきっかけを与えかねません。なので、そうした駒は無視して攻める方が、逆に相手は困るのです。こうしたことにも留意して寄せの網を絞ると、もたつくことは少なくなるでしょう。
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1件のコメント
武田和浩 · 2023年10月18日 6:37 AM
燻し銀、二枚金は、遠見の角、落ち着いたいい手ですね!💫できそうでできない、けれどできることなので見習いたいですね🎵