どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【振り飛車は美濃囲いに拘らない】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) January 8, 2024
こちらは美濃囲いに組むなら☖82玉ですが、端に近づくと☗87銀→☗96歩の当たりが強くなることが嫌味です。… pic.twitter.com/L6IRZKqmhG
振り飛車と言えば、玉の囲いは美濃囲いに組むのがポピュラーですね。なので、[振り飛車+美濃囲い]という駒組みは、至って普通の選択です。ただ、そうした固定観念に囚われていると、応用が利かなくなり構想力を高めることが難しくなる弊害があります。そこで今回は、玉の囲い方をテーマにして、解説を進めたいと思います。
囲いの長所と短所を考えよう
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗8六歩と指し、陣形整備を進めたところです。
こちらの四間飛車に対し、相手は少し風変わりな駒組みをしていますね。ただ、居飛車は[☗6六角・☗7七桂型]を早めに作っていることから、ミレニアムや地下鉄飛車を志向していることが推察されます。
さて、こちらは囲いが未完成なので、それを構築するのが自然です。例えば、ここから☖8二玉☗8七銀☖7二銀で美濃囲いを作るのは、普通の指し方ですね。
ただ、そこで☗9六歩と突っ掛けられると、どういった印象を受けるでしょうか?
ここからは、☖同歩☗同銀と進むことが予想されます。こちらは端を攻められており、いい気分はしないですね。9筋に関しては、明らかに相手の勢力が強い部分ですから。
何より不満を感じることは、上図はせっかく美濃囲いに組んだのに、それがマイナスに作用していることです。美濃囲いは端が弱点の一つであり、そこを攻撃されると脆いものです。加えて、上図は☖8二玉と寄った手が自ら戦場に近づいているので、危険な一手になっていることも不本意ですね。
将棋には多種多様な囲いがあり、どんな囲いにも、それぞれ長所と短所があります。そして、本来であれば、それの選択を盤上の状況に合わせて、柔軟に考えなければなりません。
しかし、「振り飛車のときは美濃囲いにするもんね」と決め打ちしていると、その思考を放棄しているので、上図のような失敗パターンに陥ってしまう危険性が大いにあるのです。もちろん、美濃囲いは王道の選択ですが、「本当に美濃囲いで良いのだろうか?」と常に考えを巡らせることは、駒組みにおいて非常に大事な思考と言えます。
こうした背景があったので、冒頭の局面で筆者は☖6二銀と指しました。これが臨機応変な一着ですね。
この銀上がりは、二つの狙いがあります。一つは、玉の位置を7二に留めることで、端攻めの脅威を緩和することです。この配置なら☗8七銀→☗9六歩が来ても玉が戦場から遠いので、それほど怖くはありません。
もう一つは、この銀を繰り出すことで、[☗6六角・☗7七桂型]を咎めることが狙いになります。
こうして銀を6四に出せば、居飛車の角に対して、大いにプレッシャーを掛けています。この後は、☖7四歩と突き、7筋を攻めることを念頭に置いて駒組みを進めます。例えば、以下の局面が進行例の一つとして挙げられます。
こうして角を7五に利かせば、☖7五歩☗同歩☖同銀という攻め筋が作れます。これは7七の桂もターゲットにしているので、居飛車は☗9六歩☖同歩☗同銀で端を攻める手が実行しにくいですね。振り飛車は6六の角をプレスしたことで、結果的に敵の攻め筋を封じることにも成功しました。まさに、「攻撃は最大の防御」といったところでしょう。
ちなみに、他には上図のように☖8二玉→☖7二飛という手順で7筋を攻めるプランもあります。これも趣旨としては、[☗6六角・☗7七桂型]を咎めることが狙いですね。上図は次の☖7五歩が非常に厳しいので、振り飛車が一本取った格好です。
こうした構想を見ると、美濃囲いを選ばず、☖6四銀型に構えた恩恵がお分かり頂けたことかと思います。
このように、対抗型の振り飛車は、美濃囲いに組むことが絶対の正義とは限りません。相手の布陣を見て、それに対して最も相性の良い囲いを模索しましょう。特に、この考え方は持久戦系の将棋で汎用性が高いので、実戦の際には意識しておくと役立つことかと思います。
振り飛車は「多様化」の姿勢が大事
上記で述べたように、振り飛車は美濃囲いに拘らないことが、構想力を高める鍵となります。ところで、なぜ、王道であるはずの美濃囲いに拘らないことが、良い結果を招いたのでしょうか?
その理由は、戦術の幅が広くなるからです。
冒頭の局面を、改めてご覧頂きましょう。ここで☖8二玉と寄る手は、基本的には☖7二銀とセットです。玉を寄って銀を引き締めないようでは、玉を寄った意味が乏しくなってしまいますから。
しかし、上図から[☖8二玉→☖7二銀]という二手は、受けに偏っていたり、囲いの形を表明するので戦術の幅は狭くなります。そうして選択肢が狭くなると、その分、相手の指し方に対応しにくくなる弊害が生じるのです。それが問題なのですね。
逆に、この☖6二銀は、玉の位置を7二のままで戦うことも、☖8二玉→☖7二金と囲って戦うことも出来ます。加えて、前述したように、銀を繰り出して攻めに使うことも出来ますね。こうした選択肢の広い指し方(多様化の姿勢)で戦うと、採れる戦術の数が増えるので柔軟に対応できるという訳なのです。これは非常に高度なテクニックですが、身につけることに成功すれば、構想力が格段に上がることでしょう。
また、こうした対抗型特有の知識や概念は、拙著「現代振り飛車の絶望、そして希望」にもふんだんに記載しております。こちらもご覧頂けますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2024年1月20日 5:45 AM
まさしく臨機応変❗️
振り飛車を指す楽しみが増えました😃