どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【逆転を狙う考え方】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) January 16, 2024
こちらは攻め駒の数が少なく、形勢は芳しくありません。その上、平凡に竜を逃げると☗53角で一手負け濃厚です。
そこで、☖51金打と粘りました。竜の取り合いは自玉が安全になりますし、☗64竜☖88竜の進行も、簡単には倒れません。… pic.twitter.com/vXMQRA5DDG
将棋を指していると、ときには苦しい状況に追い込まれることもありますね。そして、勝率の高いプレイヤーは、そうした場面でポッキリ折れず、上手く逆転の目を残す指し方をしているものです。そこで今回は、どんなことを意識すれば逆転しやすい状況を作れるのか? ということをテーマにして、解説を行いたいと思います。
筋に入る展開を避ける
改めて、上記ツイートの始めの場面を振り返ってみましょう。下図は相手が☗6八金と指し、竜を弾いたところです。
こちらは自玉が金銀三枚で守られていますが、攻めに関しては手駒が少ないですね。竜を失うと戦力不足は明白なので、それを逃げるのは至って普通と言えます。
そうなると、上図で☖8九竜とかわすのは妥当に思えますね。ただ、そこで☗5三角と打たれると、どういった印象を受けるでしょうか。
こちらは、次に☗3一角打☖1二玉☗4一竜で、必至を掛けられる筋を見せられています。また、敵玉に詰めろを掛ける手段はありません。ゆえに、ここは受けに回らざるを得ない局面です。
しかしながら、☗3一角打を防ぐことは、非常に難しいですね。☖4二金打は☗同角成、☖5一金打は☗同竜で無効です。また、☖3一金打も☗7五角打で数を足されると、受けになっていません。
要するに、☗5三角を打たれてしまうと、こちらは受け無しに陥ってしまうのですね。
ところで、この☗5三角は、美濃囲いを崩す基本手筋です。美濃囲いの攻略には、3一の地点に角や銀を打つ形に持ち込むのが効果的ですね。
そして、こうした基本手筋で寄せられてしまう状況のことを、一般的に「筋に入る」と表現します。将棋は一度、筋に入ってしまうと、思いの外、粘りが利かなくなります。そして、こうなると寄せが非常に明快になるので、逆転することは望めません。不利な立場にいる場合は、この状況を避けることが絶対です。
話をまとめると、冒頭の局面でこちらは、竜を逃げている場合ではないのですね。
とはいえ、竜を逃げることが出来なければ、八方塞がりのように思えます。実際、手段には窮しているのですが、ひとまず☗5三角から筋に入れられると負けなので、自玉の安全度を高めておくことが必須です。
そうした考えから、筆者は☖5一金打と指しました。これが最も逆転できる可能性が高いと踏んだのです。
このタイミングで金を打てば、相手は☗8一竜とは指せないですね。竜を逃げるとすれば、引き下がることになります。
それゆえ、本譜は☗6四竜と引いてきたのですが、こうなると脅威を大いに緩和した格好ですね。こちらは☖8八竜☗7六角☖9九竜で、戦力を少しでも蓄えておきます。
さて、こちらは相変わらず攻め駒が少なく、攻めは切れ模様です。けれども、冒頭の局面と比較すると、自玉の安全度には歴然の違いがありますね。☖5一金打の受けが入ったことで、筋に入りにくい配置になっていることが分かります。
相手は4四の拠点を活かすべく、☗4三銀と放り込んだり、☗3五歩と突くのが一案です。ただ、前者には☖9七竜☗5四角打☖8六竜、後者には☖4二金右と応対すれば、簡単には倒れません。いずれも相手は、上手く美濃囲いの急所を捉えられていない印象ですね。
こうしてみると、☖5一金打という受けを境にして、こちらは局面を複雑な状況に持ち込むことに成功したことが読み取れます。
このように、終盤で逆転を狙うためには、「筋に入る展開を避ける」という意識が必要です。そのためには、自玉の耐久度を高め、粘りが利きやすい配置を作りましょう。
こうした粘りの指し方は、地味なので魅力的には映らないかもしれません。しかし、「粘り」は負けを遠ざける行為でもあるので、逆転するためには必要な要素です。要は、容易に土俵を割らない指し方が大事という訳ですね。
複数の選択肢を突きつけろ
繰り返しになりますが、今回の題材では「筋に入る展開を避ける」ことが重要な部分でした。ゆえに筆者は☖5一金打で粘るプランを選んだのですが、この手を指した背景には、もう一つ別の理由もあったのです。
それは、「複数の選択肢を突きつける」ことですね。
改めて、冒頭の局面を示します。先述したように、ここで素直に竜を逃げると☗5三角で負けですね。このとき大事なことは、相手にとって☗5三角という選択は、ほぼ一択になっていることです。
こうした選択肢が少ない(あるいは、こう指すしかない)という場面になると、候補手が狭くなるので相手は迷う余地がありません。自身の形勢が有利であれば敵の選択肢は狭めた方が良いのですが、逆転を狙うためには迷わせる必要があるので、選択の余地が無い場面にはしたくないのです。
逆に、☖5一金打の場合だと、相手には
①竜を逃げる(☗6四竜)
②竜を取り合う(☗7八金☖6一金)
③金を取り合う(☗5一同竜☖6八竜)
という三つの選択肢があります。なお、種を明かすと、どれを選ばれても負けではあります。受けて勝つなら、②の☗7八金☖6一金☗4九飛。攻めて勝つなら③の☗5一同竜☖6八竜☗5三角が明快だったでしょうか。
しかし、ここで鍵を握ることは、こうして複数の選択肢を突きつけると、相手には迷いが生じるということです。「あれも勝てそう、これも勝ちそう」というシチュエーションになると、目移りして決断が悪くなりますよね。ランチを食べるとき、美味しそうなメニューが複数あるとオーダーに悩むでしょう。それと同じ理屈です。
そして、勝負の場においては、こうした「迷い」が逆転のきっかけになることが少なくありません。ゆえに、非勢に陥った場合は、なるべく相手に多くの選択を突きつけましょう。逆転するためには、そうした心理的な部分につけ込むことも必要なことですね。
また、こうした逆転のノウハウは他にも種類があります。よろしければ、以下の記事も併せてご覧いただけますと幸いです。
1件のコメント
武田和浩 · 2024年1月24日 8:56 AM
金を取り合った時の変化を考えていたのですが、やはり5三角打ちで窮しているのですね🎵