敵玉をスマートに寄せるためのコツ

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【寄せは遮断を警戒せよ】

こちらは飛車を持っているので、☖69飛と打つ手が魅力的です。ただ、それは☗67歩と受けられると、馬の利きが堰き止められるので攻めが鈍化します。… pic.twitter.com/Oo2Rlcr1Zp

— あらきっぺ (@burstlinker0828) April 27, 2024

どう見ても優勢な終盤戦なのに、寄せがスマートに進まず逆転されてしまった……という悔しい経験をした方は少なくないのではないでしょうか？　そこで今回は、敵玉をスマートに寄せるための考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。

遮断される手を警戒する

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗８二とと指し、こちらの飛車を取ったところです。

この局面は、お互いに飛車と銀を手持ちにしており、そこは互角の条件です。しかしながら、角の働きには大きな差が着いていますね。こちらの馬は囲いの金を睨んでいますが、相手の角はさほど攻めに使えていません。加えて、手番を握っていることも嬉しいですね。それらのアドバンテージが非常に大きいので、上図は居飛車が優勢です。

という訳で、居飛車としては、この優位性をどう拡大するかがテーマとなります。

基本的に、終盤戦は相手よりも早く敵玉を詰ますことが目的です。したがって、手番を握っている場合は寄せを考えるのが自然ですね。それを踏まえると、上図では☖６九飛と打つ手が目につきます。

この場合、相手は☗６七歩と受けてくることが予想されます。その局面を迎えたとき、どういった印象を受けるでしょうか。

こちらは相変わらず手番を握っているので、攻勢に出ることが可能です。ただ、この☗６七歩を打たれたことで、馬の働きが鈍化した感覚を覚えるのではないでしょうか。

無論、上図では☖７六歩や☖８七歩成と指せば攻めは順調に続くので、居飛車の優位は揺るぎません。しかし、こうして自身の大駒の利きが遮断されると攻めの威力が下がってしまうので、スマートな寄せを行うことが難しくなります。こうした事態は、なるべく避けたいものですね。

そうした背景があるので、冒頭の局面では一工夫する必要があります。もう少し踏み込むと、９四の馬の利きが直射している間に技を掛けたいのです。

ゆえに、筆者はバッサリ☖５八馬と切り飛ばしました。これには☗同金が妥当ですが、それから☖６九飛と打ちます。こうなると、先程とは雲泥の違いがありますね。

先述したように、単に☖６九飛では☗６七歩が角取りを防ぐと同時に馬の利きを遮断するピッタリの受けになります。しかし、先に馬を切ってしまえば、☗６七歩は一石二鳥の受けになりません。ここで☗６七歩には、もちろん☖３九銀が痛打です。かと言って、相手は角を取らせると駒損が甚だしいですね。

本譜は仕方なく☗７五角と逃げてきましたが、これも☖３九銀が入るので、寄り形が見えてきました。☗１七玉も致し方ありませんが、そこで☖６四金が手堅い勝ち方になります。

角を入手すれば☖２八角があります。ゆえに☗８六角と逃げるのは妥当ですが、こうすれば自玉に憂いはありません。あとは☖２八金や☖１五歩などで着実に迫っていけば、居飛車が勝ち切れる将棋でしょう。

こうして見ると、先に☖５八馬と切ったことで、こちらはスマートな寄せを展開できたことが分かりますね。

大駒は高い戦力を誇るので、敵玉の寄せに向かう際にはそれを活躍させることが大事です。ただ、その際、失敗図のように要所にいる大駒の利きを遮断されてしまうと攻撃力が減殺されるので、素早い寄せが行えなくなります。ゆえに、攻め側としては遮断されない状況を作ったり、遮断される前に敵の守備駒と交換するようなアクションプランが必要となります。そうしたことを意識すると、スマートな寄せを実行することが出来るでしょう。

受けるときは、これの逆を行う

繰り返しになりますが、今回の題材では自分の大駒の利きを遮断されない状況を作ることが大事でした。だからこそ、☗６七歩を打たれる前に☖５八馬と切り飛ばす必要があるのです。

なお、今回の題材はこちらが攻勢に出るシチュエーションでしたが、実戦においては、受けに回らないといけない場面もあることもあるでしょう。そうした際には、敵の大駒の力を封じることを第一に考えるのは有効です。例えば、以下の記事はその具体例と言えます。

https://sakurai-shogi.com/araki-20240427

このように、攻めるときも受けるときも大駒は重要な存在なので、それの働きを軸にして考えると、良い判断を行うことに繋がるかと思います。

また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。

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