どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【分かりやすい攻め筋を作る手筋】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) May 9, 2024
相手が3筋の歩を取ったところ。平凡に☗36同飛でも悪くはありませんが、☖34歩と受けられると攻め筋を見出すのに苦労します。… pic.twitter.com/axklIRm5W8
将棋を指していると、相手に攻めを催促される状況を迎えることもありますね。そうした場面で「具体的な攻め筋が見つからず、失敗してしまった……」という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、どんなことを意識すれば分かりやすい攻め筋を作ることが出来るのか? ということをテーマにして、解説したいと思います。
歩がスムーズに前進できる状況を作る
今回は、上記ツイートの少し手前の局面から振り返ってみましょう。下図は相手が☖9三馬と指し、馬取りをかわしたところです。
この局面は、こちらの方が手厚い構えを作っており、模様の良い将棋です。ただ、現状は一歩損していますし、黙っていると☖2四歩→☖2五歩と指されて忙しくなる背景もあるので、それが来る前に何らかの攻め筋を見出す必要があります。
攻め筋を作る際には、争点を増やすのが一案です。そうなると、歩をぶつけることになりますね。ひとまず、☗3六歩は突くところでしょう。3筋の歩を伸ばす手は相手の桂頭を狙う意味もあるので、ここは急所です。
これに対して、相手は☖5四歩☗6六銀右の利かしを入れてから☖3六歩で手を戻してきました。
さて、こうした場面では、☗3六飛と歩を取るのが自然な一着です。持ち歩を増やすことが出来ますし、飛車の可動域も広がるので一石二鳥ですね。
ただ、そこから☖3四歩で辛抱されると、どのように攻め筋を見出せば良いのかという話はあります。
こちらにとって、3筋の歩を交換したことは得であることは間違いありません。けれども、具体的な戦果に結びつかないと、こうした模様の良さは活きてこない側面があります。上図では☗5五歩や☗4六歩で争点を増やせば先手が悪くはありませんが、もう少し分かりやすい攻め筋を作りたい思惑はありますね。
ちなみに、この局面でこちらの攻め筋が見えにくくなった要因の一つに、相手の桂頭を狙いにくくなっていることが挙げられます。☖3四歩を打たれると3筋を補強されるので、この進行は相手の弱点を消している嫌いもあるのですね。
裏を返せば、この歩を打たさない進行を選べば、こちらは桂頭を攻めやすい状況が作れます。ゆえに、筆者は☖3六歩と取られた局面で☗3五歩と打ちました。これが確実な攻め筋を作る一着になります。
不思議な感触ではありますが、こうすれば相手は3四に歩を打って桂頭を保全することが不可能になります。あとは☗3六飛→☗3四歩で歩を進めるだけで良いので、非常にシンプルですね。平凡に3六の歩を取った変化とは、攻めの分かりやすさが歴然です。
後手が3四の地点を強化するには、☖5三金☗3六飛☖4四金という順を選ぶよりありません。ただ、こうして金が上に来てくれると囲いが薄くなりますし、駒もぶつけやすくなります。具体的には、☗5五歩と突っ掛けるのが良いでしょう。
これには☖同歩が自然ですが、☗6四歩☖同歩☗同銀と進めれば、☗6三歩と☗5五銀引(もしくは☗5五銀上)という複数の狙いが作れるので、相手は受けが難しくなります。4四に金が上がってきたことを逆手に取ることが出来ていますね。上図は[堅い・攻めてる・切れない]という状況に持ち込むことに成功しているので、こちらがはっきり優勢です。
こうして見ると、☗3五歩と打った手を起点にして、こちらは調子よく攻めが続いていることが読み取れるでしょう。
攻め筋を作るテクニックは複数ありますが、大原則として「歩を使った攻め」を行うようにしましょう。特に、自然に歩を進める攻め筋を確立させることが大事で、その状況が作れれば手に困る心配はなくなります。上図のように、相手に歩で受けることが出来ない状況を突きつけるとそれが実現しやすいので、是非とも意識してみてください。
理想図をイメージして攻め筋を組み立てる
繰り返しになりますが、今回の題材では☗3五歩と打つことで、確実に歩が伸ばせる状況を作ることが重要な部分でした。ただ、この☗3五歩は珍しい攻め筋なので、「こうしたレアな手をどうやって発見するんだよ」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
ちなみに、筆者がこれを発見できた背景には、理想図をイメージしていたことが大きいです。
上図は☖5四歩に☗6六銀右と指した局面です。本譜は相手が☖3六歩と指しましたが、もし、この歩を取ってこなければどうなっていたでしょう? もちろん、こちらは☗3五歩→☗3四歩で桂頭を狙っていきますね。つまり、こうして「3筋の歩を伸ばして桂頭を攻める」という理想図が、前もって描けていた訳です。
それを踏まえると、☖3六歩で歩を取られたとき、
「ここで☗3六飛を指すと、☖3四歩で理想図が作れないな」
「先に☗3五歩と打って☗3六飛→☗3四歩を狙えば、理想図と大体、同じだな」
といった思考の流れになっていくかと思います。だからこそ、平凡な☗3六飛ではない発想に至ったという訳ですね。
このように、自身が思いついた手をいたずらに選ぶのではなく、あらかじめ理想図を描き、それの実現に向かった手を選んでいくと、事が上手く運びやすくなります。対局中、攻める手段が見えなくなった場合は、こうしたことを意識すると状況の打破につながることでしょう。
また、こうした理想を実現するテクニックは、他にも様々な種類があります。詳しくは、拙著「盤上のシナリオ」に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2024年5月18日 9:38 AM
継ぎ歩、垂れ歩の一つですが、それが重要なことが理解できたのは最近で改めてなるほどなぁと思いました🎵