どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【と金を間に合わすプランを採れ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) September 23, 2024
こちらはと金を活用したいですが、直ちに☗33とは☖66桂☗同歩☖77歩成の強襲がヒットするので間に合いません。… pic.twitter.com/vAAxyvHxzc
将棋はたとえ優勢な局面を築いたとしても、そこから勝ち切るのは簡単ではありません。思うような手が指せず、形勢をひっくり返されてしまった経験は、誰しもあることでしょう。
そこで今回は、優位を拡大するための考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。
確実な攻めを間に合わすことを意識する
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖7三同金と指し、桂を取ったところです。
具体的な手を考える前に、まずは形勢判断を行って状況を把握しておきましょう。
玉型は、こちらのほうが金銀の数が多く、堅さで上回っていると言えます。
駒の損得は[桂香⇄角]の二枚替えで、こちらが駒得です。
駒の効率は、飛車に大きな差が着いていますね。
まとめると、この局面は三要素の全てで先手がリードを奪っているので、こちらが優勢であることが読み取れます。ただ、明快に勝ちという状況でもないので、勝利を掴むにはもう一押しが必要です。
さて、先述したように、こちらは玉型で勝っています。しかし、上図は次に☖6六桂☗同歩☖7七歩成という強襲があり、これをまともに喫すると玉の安全度がひっくり返るので、一気に形勢を損ねます。よって、こちらはそれを防ぐことが先決ですね。
そうなると、☖6六桂から早逃げする☗4九玉が一案です。ただ、この手を指すと☖2六桂と逆サイドから攻撃される手が気になるところではあります。
これを☗2八金と逃げると、☖2七歩☗2九金☖6九角と畳み掛けられ、あっという間に逆転されてしまいます。ただ、この金が逃げられないとなると、囲いが一気に弱体化するので、こちらは勝ちにくい情勢になってしまいますね。
こうした進行を見ると、こちらは☗4九玉と指して受けに回ったのに、それが大して機能していないことが分かります。ここに、先手が形勢を損ねた理由があります。
加えて、上図では敵陣に全く迫れていないことも大きな問題です。こちらとしては、敵玉へ確実に迫れる手段を確立したいところです。
「確実な攻め」の代表例としては、と金攻めが挙げられます。上図で2三のと金が4三まで進めば、敵の守備駒を剥がせるので寄せが分かりやすくなりますね。それを間に合わせる「組み立て」を考えるのが、この局面における最適解です。
そうした背景があったので、筆者は上図から☗8五桂と指しました。これがと金攻めを間に合わす一着になります。
これは、金取りと同時に角道を止めることで、☖6六桂を阻止しています。後手はこれを放置すると☗7三桂成☖同玉☗8五桂が厳しいので、この金取りはさすがに逃げざるを得ません。
ゆえに☖8四金と逃げるのは妥当ですが、この応酬により、こちらは自玉の安全度が格段に上がりました。そのため、安心して☗3三とを指すことが出来ます。
後手は9四の角を通さないと敵陣を攻めることが出来ません。よって、☖8五金で桂を取るのは自然です。ただ、相変わらず角道は止まったままなので、こちらは構わず☗4三とと寄れば良いでしょう。
なお、代えて☗8五同香☖同角と進めると、☖6六桂という狙いが復活するので危険です。とにかく、あの角が眠っている間にと金を寄せていくのが急所ですね。
こうなると、当初に描いた理想が実現した形になりました。後手は☖4三同金☗同竜☖6三銀と受けるのが一案ですが、☗7四歩で拠点を作れば攻めは存分に続きます。上図は金を剥がしたことで、玉型や駒の損得のリードがさらに大きくなりましたし、9四の角も遊ばせることに成功しています。よって、冒頭の局面よりも優位を拡大することが出来たと言えるでしょう。
こうした結果を見ると、「確実な攻めを間に合わす」恩恵がよく分かりますね。
このように、優位を拡大するためには「確実な攻めを間に合わす」ことを心掛けると、紛れが減って分かりやすくなります。成立するかどうかスレスレの攻めは最善を尽くすのが難しいので、それを行うと逆転の呼び水になりかねません。ゆえに、と金攻めのような遅くとも確実な攻めを間に合わすプランのほうが賢明です。
そして、それを間に合わせるためには、玉型を安全な状態にしておくことが必須です。こうしたことを意識すると、優位を拡大するプランが見つかりやすいと思います。
一手の価値が高い手を探す
繰り返しになりますが、今回の題材では確実な攻めを間に合わすことが重要な部分でした。ゆえに筆者は冒頭の局面で☗8五桂と指したのですが、この手を選んだ背景には、もう一つ別の理由もあったのです。
それは、「一手の価値が高い手を選ぶ」ということですね。
この☗8五桂は、先述したように金取りと同時に☖6六桂を阻止した意味があります。つまり、攻防手になっているのですね。それゆえ、失敗例で示した☗4九玉よりも、遥かに価値が高い手になっています。
将棋は、こうした一挙両得の手を指すと、様々な恩恵が得られるので形勢を良くする要因になり得ます。特に、終盤戦において攻防手は価値が箆棒に高い手です。相手に狙いを作られたとき、それをただ防ぐだけでなく、「防ぎながら他のことが出来ないか」という意識も併せて持つと、正解に辿り着きやすくなるかと思います。
また、こうした正しい方針に導くためのテクニックや思考法は、他にも様々な種類があります。詳しくは、拙著「盤上のシナリオ」に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2024年9月29日 11:16 AM
この桂馬打ちは参考になりました🎵
とりわけ相手の角道を止めていることが大きいことを気づかされました😆