中盤の難所で意識しておくと役立つこと②

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【一挙両得の手を狙って指せ】

複数の場所で歩がぶつかっており、中盤の難所を迎えています。何を指すのか悩ましいですが、本譜は☗54歩と伸ばしました。… pic.twitter.com/ISM2DQaAt4

— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 17, 2024

将棋の中盤戦は茫洋なところがあり、ときには何を指せば良いのかサッパリ見当がつかない状況に直面することも少なくありません。そこで今回は、中盤戦の判断がクリアになる考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。

一挙両得の手を指す

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖７五歩と指し、攻め味を作ったところです。

この局面は、先手の方が玉型が堅かったり、桂の働きで勝っていることが大きく、こちらが面白い将棋です。ただ、具体的に何をすれば良いのかは悩ましいですね。このくらいの段階では勝ちを読み切ることは現実的ではないので、深く読んでも答えが見つけにくい局面と言えます。

ゆえに、上図では指す手が悩ましいのですが、結論から述べると、ここは☗５四歩と伸ばすのがベストです。この手が目についた方は、とても感覚が良いですね。

なぜ、数ある選択肢の中でこれがベストなのかというと、この☗５四歩という手は一挙両得の手になっているからです。すなわち、角道を通しつつ、５筋に拠点を作っていますね。中盤においては、こうして複数の価値がある手を選べば、概ね道を踏み外すことはありません。

さて、ここで後手は何を指すかですが、素直に☖５四同銀と取るのは、☗４四歩☖同金☗４五歩☖４三金引☗２二角成☖同金☗４四歩という要領で攻め立てられて困ります。この進行は、途中の［☗２二角成☖同金］という応酬によって、後手陣が著しく弱体化することが大きいですね。

つまり、後手は先手の角道を通したままにすると、支障が生じてしまうのです。

ゆえに、ここで後手は☖５五歩で角道を遮断するのが一案です。こうすれば、先述した攻め筋を喫することはありませんね。

ただ、角道を止められたとしても、５筋の拠点は残っているので、☗５四歩と突いた手の価値が消え去った訳ではありません。先手はそれを活かすことが出来れば、優位を掴むことが出来ます。

具体的には、☗４六銀で応援を送るのが好着想になります。

これは、３五と５五に銀を出る狙いを作っています。この複数の狙いは同時に受かることはありません。よって、後手は受けに回っても先手の攻めを堰き止めることが出来なくなっているのです。例えば☖５四銀には☗３五銀と出れば、次の☗２四歩が痛烈なので支えきれません。

そうなると、上図では☖７六銀で攻め合いを選ぶのが妥当です。ただ、これには☗同金☖同歩☗２四歩☖同歩☗２三歩☖同金☗４四歩☖同金☗６五歩と攻め合えば、先手の攻めがヒットすることになります。

これを☖同銀だと☗５三歩成があります。かと言って、この銀取りを無視するのも被害が大きいですね。なお、後手は☗４四歩と取り込まれたときに☖同角と取る手もありましたが、その場合は☗４五銀と進軍される手が厳しいので、やはり先手の攻めは止まりません。

ここまで進むと、先手は☗５四歩と伸ばした手を見事に活かして敵陣を攻略していることが読み取れますね。

このように、中盤で難所に直面した場合は、一挙両得になる手を選ぶことを心掛けましょう。こうした手を指すと見た目以上にポイントを稼いでいることが多く、形勢を優位に運べる力があります。

また、こうした一挙両得の手を指したあとには、それの恩恵が消えない間にどんどん動くことも大事です。そうしたことを考慮すると、選択が難しい局面を乗り切れる可能性が高くなるかと思います。

その先の具体案が見えなくても……

繰り返しになりますが、今回の題材では一挙両得の手を指すことが重要な部分でした。ただ、そうした手が見えていても、その先の手順が分からないから選ぶことが出来なかった、という経験がある方も、いらっしゃるかと思います。

今回の例で言えば、☗５四歩に対して☖５五歩のあとの具体案が分からないと、☗５四歩が指しにくい手に感じてしまうところはあったかもしれません。

ただ、この［☗５四歩☖５五歩］という応酬は、こちらは一挙両得の手を指しているのに対し、相手は角道を止めただけなので、こちらよりも価値の高い手を指している訳ではありません。つまり、この応酬はこちらが得をしているのです。

将棋の中盤は、こうした指し手の価値が違う応酬が積み重なることで、形勢の差が生じるケースは少なくありません。その先の具体案が分からなくても、自分が得になる応酬があれば恐れずに選ぶようにする意識を持つようにしましょう。

また、こうした中盤の難所で意識しておくと役立つことは、他にもあります。よろしければ、以下の記事も併せてご覧いただけますと幸いです。