どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【駒損しているときの考え方】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) December 9, 2024
こちらは玉型で劣っている上に、駒損もしているので非常に苦しい状況です。逆転するためには、常識外の指し手が必要です。… pic.twitter.com/mUqGWK92Jg
将棋を指していると、ときには苦しい状況に追い込まれることもありますね。そして、勝率の高いプレイヤーは、そうした場面でも逆転の可能性が残る指し方を選んでいるものです。
そこで今回は、どんなことを意識すれば逆転しやすい状況を作れるのか? ということをテーマにして、解説を行いたいと思います。
挽回できない要素は捨てる
改めて、上記ツイートの始めの場面を振り返ってみましょう。下図は相手が☗4五歩と指し、攻めに転じたところです。
具体的な解説へ入る前に、まずは上図の状況を整理しておきましょう。
玉型は、相手の方が堅いですね。彼我の陣形に存在する金銀の枚数が違いますし、相手は2九に竜が居ることも、陣形の堅さに差が生じている要因と言えます。
駒の損得は、[角⇄銀桂]の二枚替えなのでこちらの駒損です。
駒の働きは、相手は遊び駒が一つも無いのに対し、こちらは3・4筋の角銀が機能していません。特に、角に関しては相当なお荷物となっています。
まとめると、こちらは三要素の全てでビハインドを負っており、すこぶる苦しい情勢と言えます。この状況を少しでも挽回することが、こちらに課せられた命題ですね。
さて、具体的に何を指すかですが、こちらは3・4筋の角銀が相手の成銀に当てられて不自由なので、この配置を何とかしたいところです。そうなると、☖2一角で角取りを解除しておくのはどうでしょうか。
ただ、これには☗2三歩成で追撃する手が厳しく、形勢がさらに悪化することになります。
こちらは、相変わらず2一の角が負担ですね。そうなると角を引いた価値が乏しいので、[☖2一角☗2三歩成]という応酬は、こちらが損な取引になっています。ゆえに、形勢が悪化してしまうのですね。
この変化から察せられるように、こちらは3二の角を庇いきれないので、駒損が拡大することは避けられないことが読み取れます。
この背景を踏まえると、冒頭の局面でこちらは、もはや駒の損得に関しては、ほぼ100%回復できないと認識しなければいけません。言ってしまえば、破産しているような状況なのです。そして、そうした事態に陥った場合は、その要素(この場合は駒の損得)を捨てて、他の要素に活路を求めるほうが得策と言えます。
そうした考えから、冒頭の局面で筆者は☖4五同歩と指しました。これが最も逆転できる可能性が高いと踏んだのです。
この手を指すと、当然ながら☗4四歩の痛打がとんできます。こうなると角か銀のどちらかがタダで取られてしまうので、被害が広がっているように見えるかもしれません。
しかし、そこから☖4四同銀☗3二成銀☖4六歩と進むと、どういった印象を受けるでしょうか。
上図は角をタダ取りされたことで、損得勘定は銀桂損になりました。けれども、手番を取りながら4筋に拠点を作れたので、玉型の差が急激に縮まっていますね。むしろ、こちらの方が安全なくらいです。
加えて、こちらは銀の働きが良くなり、相手は成銀の働きが悪くなったことも見逃せません。
ひとまず先手は☗3六銀と逃げるくらいですが、こちらは玉型が安定しているので、攻めに専念できる格好です。過激に☖4七金と放り込むのは一案ですね。
また、他には☖6五歩と突っ掛けて、6筋に火をつけるのも魅力的な攻め方と言えます。
これを☗同歩は☖6六歩が厳しいですし、☗4九玉には☖6九角が厳しい追撃となります。先手は4筋と6筋の二ヵ所に拠点を設置されつつあるので、陣形が相当に弱体化しています。上図でこちらは、駒損の代償に玉型の優位性を得ており、勝ちやすい局面に持ち込めた格好となりました。
そして、こうした状況が作れた一番の要因は、駒損を恐れず☖4五同歩→☖4四同銀で攻め味を作ったからに他なりません。
一口に形勢が悪いと言ってもいろんなケースがありますが、今回のように駒損の回復が絶望的な状況では、それが拡大することを恐れず、違う要素で主張点を作る姿勢が大事になります。特に、局面が終盤戦の場合は、駒の損得を度外視して敵玉に迫る価値が高くなるので、そうしたプレイングが効果的な逆転術になることは多いですね。
負担な駒は取らせて使う
繰り返しになりますが、今回の題材では「挽回できない要素は捨てる」ことが重要な部分でした。ゆえに筆者は☖4五同歩→☖4四同銀と指したのですが、この手順を選んだ背景には、もう一つ別の理由もあったのです。
それは、「負担になっている駒は取らせて使う」ことですね。
改めて、冒頭の局面を提示します。再三にわたって述べたように、この局面は3二の角が負担になっています。基本的に、将棋は自軍の大駒が遊んでしまうと勝ち目が乏しくなりますね。ゆえに活用させる必要があるのですが、上図で3二の角はどこに移動させても効率が良くならないので、能動的に動かす価値が極めて低いと言えます。そうなると、受動的に動かすよりありません。
自軍の駒を受動的に動かすには、「相手に取ってもらう」ことになります。そして、その際には、なるべく相手の駒を働きの悪い場所へ誘導させることが大事になります。ゆえに、こうした角をタダで取らせる非常識な姿勢が、効果的な手として機能するのです。これは形勢が良いときにも応用できる考え方なので、是非とも意識して頂ければと思います。
また、こうした逆転のノウハウは他にも種類があります。よろしければ、以下の記事も併せてご覧いただけますと幸いです。
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