どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【端玉で延命するときの裏技】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) February 17, 2025
こちらは端歩を取り込まれており、絶体絶命に見える状況です。受けは無いように思えますが、☗79角が窮地を救う一着です。… pic.twitter.com/CjPiAuf32L
将棋の終盤において、自分の玉が端に追い詰められることは、多々ある状況の一つです。そうした土俵際に追い込まれたとき、もうひと頑張り出来るかどうかは、勝率を高める上で大きな影響を与える部分と言えるでしょう。
そこで今回は、端玉で延命する際に役立つ受けのテクニックをテーマにして、解説を進めたいと思います。
狙われている部分に注目する
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖9六歩と指し、端歩を取り込んだところです。

この局面は、こちらが大きく駒得してます。しかし、玉の安全度に関しては雲泥の差がありますね。ひとまず、この詰めろをどうにかして凌がなくてはいけません。
ただ、上図で☗9五歩と香の利きを堰き止めるのは☖9七銀で詰まされますし、☗9六同金も☖同香から平易な詰みです。
他には☗8八金で9七に利きを増やす受けもありますが、これも☖9七銀で仕留められてしまいますね。

9七の地点は数的不利ですし、☗8九玉も☖8八銀成でアウトです。
このように、冒頭の局面では自然な受け方を選ぶと、割と簡単に自玉が詰んでしまいます。もはや必至が掛かっているようにも思えますが、実は一つだけ延命できる手段があります。もう一度、冒頭の局面に戻って状況を確認してみましょう。

この局面でこちらの玉には、☖9七歩成や☖9七銀の詰めろが掛かっています。そして、これらの攻めは、いずれも9七や8八の地点が弱いことを咎めている攻めであることが分かります。それを踏まえると、こちらはこの二つの地点へ同時に利きを増やす受けを講じれば、詰めろを凌げることが読み取れます。☗8八金は発想は惜しいですが、これは8八を埋めただけであり、そこに利きを増やせていないことが問題です。
そうなると、先手が指さなければいけない受けが見えてきたのではないでしょうか。そう、9七と8八へ同時に利きを増やす手は、☗7九角です。これが唯一無二の受けですね。

こうすれば☖9七銀と放り込まれても、☗8九玉で耐えています。そこから☖4四歩には☗7六金、☖6八桂成には☗同金と応じれば、先手玉に詰めろは掛かりません。
したがって、上図で後手は☖9七歩成と攻めるほうが勝りますが、これには☗同角☖同香成☗同玉☖8八角☗9六玉と進めれば、こちらはもうひと頑張りできる状況に持ち込めますね。

相変わらず先手玉は狭い格好ですが、8六の金が玉頭をケアしているので、そう簡単には倒れません。次に☗9四歩が打てれば、上から攻撃されなくなるので相当に安全な格好になります。ゆえに、上図で後手は☖9四歩と打つのが絶対ですが、これは詰めろではないので、先手は☗9三歩で反撃に転じる余裕が得られます。上図は先手が勝ちとは言い切れませんが、少なくとも絶体絶命のピンチを切り抜けたことは確かですね。
こうした進行を見ると、☗7九角と打った手の耐久力がよく分かります。

終盤で自玉が端に追い詰められているということは、必然的に敵の攻め駒が自玉の近くに居ることを意味します。ゆえに、自玉周りの守備力が落ちていたり、敵に数的優位を作られていることは少なくありません。しかし、角は遠くからでも利きを届かせることが出来るので、そうしたシチュエーションにおいて頼りになる守備駒となり得ます。これはイレギュラーな受け方に見えますが、意外に出現しやすい手でもあるので、頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
端の攻防で角は役に立たない
繰り返しになりますが、端玉で粘るとき、角は意外に受けに使える駒です。これは上記で述べたように、遠い位置から利きを届かせられることが理由の一つですが、実はもう一つ、別の理由も存在するのです。
それは、端の攻防になると「角を相手に渡す弊害が少なくなる」ということですね。

改めて、☗7九角に対して☖9七歩成と進めた変化の図面を提示します。この進行でこちらは角を取られていますが、相手はその角を9筋で使うようなことは決して出来ません。理由は明白で、角は直進できないので端の攻防では無用の長物だからです。(だからこそ、相手は☖8八銀ではなく☖8八角と打ち、銀を手駒に残す攻め方を選んでいます)
本来、角は非常に価値が高い駒なので、それを受けに使うと、相手に攻められながら角が取られるという最悪な事態を招きかねません。しかし、端の攻防に関しては角は価値が下落するので、むしろ他の駒と交換したほうが良いとすら言えます。こうした性質があるので、☗7九角の受けが成立しているのですね。駒のレートは状況によって変動するので、デフォルトの値に囚われないことも、終盤戦では大事な考え方の一つと言えるでしょう。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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