中盤の難所で意識しておくと役立つこと⑥

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【敵の駒効率を落とす考え方】

こちらは２六の銀がタダで取れますが、現状は☗33桂や☗11角成といった攻めが厳しいですね。ゆえに、敵の角の働きを減殺する手が必要です。… pic.twitter.com/zLPjkczKUP

— あらきっぺ (@burstlinker0828) March 26, 2025

将棋の中盤戦は茫洋なところがあり、かつ候補手がたくさん目移りする場面も多いので、何が正解なのか見当がつきにくい状況に直面することは珍しくありません。そして、そうした場面は往々にしてミスが出やすいものです。

そこで今回は、中盤戦で適切な手を選ぶための考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。

敵の主力にデバフを掛ける

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗７七角と指し、攻防手を放ったところです。

この局面は、こちらが金桂交換の駒得であり、かつ相手は２六の銀が遊んでいます。ゆえに形勢はこちらに分があるのですが、歩切れであること、及び☗１一角成や☗３三桂、☗７三銀といった複数の攻め筋が発生しています。それゆえ、ここで対処を誤ってしまうと、形勢を大きく損ねてしまう恐れがあります。この難所をいかにして乗り切るかが、こちらに課せられた命題ですね。

☗１一角成や☗３三桂を防ぐなら、７七の角の利きを止めることになります。ただ、☖４四銀では☗３六桂が痛打ですし、☖４四金は☗７三銀→☗６四歩が飛んでくるので、なかなか敵の攻めを完封する状況にはなりません。

他には駒得を拡大する☖２六角も視野に入りますが、これは☗６四歩を利かされるのが痛く、逆転を許してしまいます。

こちらは直前に２六の銀を取って駒得を主張した以上、この銀取りは大人しく☖７二銀と逃げるよりないところです。しかし、☗３三桂と放り込まれると、一方的に自陣を攻撃される展開になってしまうので、芳しくありません。上図は大駒の働きや玉の安全度に差が開いており、相手が優勢になっています。

要するに、冒頭の局面でこちらは、愚直に相手の攻めを受け止めようとしたり、駒得を主張しようとすると事が上手く運びません。したがって、別の方向性で主張を求める指し手が必要です。そうした背景があるので、筆者は☖５五歩と指しました。これが状況を好転させる一着になります。

これはご覧の通りタダで取られてしまうのですが、７七の角の働きを抑制した意味があります。ただ、これだけでは説明が足りていないかと思いますので、具体的に深掘りしてみましょう。

まず、これを放置したり☗５五同飛など、７七の角道を通さない手を指された場合は、☖２六角で銀が取れるようになります。また、ここで２六の銀取りを防ぐのは肝心の角の働きが鈍るので、こちらは大歓迎の進行でしょう。ゆえに、相手は５五の歩を角で取るのは絶対です。

問題は、それをどのタイミングで取るか。直ちに☗５五同角で問題なければ話は早いですが、それには☖６四金が飛角両取りになるので芳しくありません。

それを踏まえると、先に☗３三桂と打つのは一案です。これには☖同桂☗同歩成☖同金と応じるのが妥当ですが、それから☗５五角と出れば、相手は飛金両取りを掛けることが出来ます。

しかし、それにも構わず☖６四金と打てば、こちらは優位を掴むことが出来ます。

相手は５五の角を失ってしまうと、攻めが空転します。ただし、単に☗３三角成では☖６五金で飛車を取られると、駒損が大きく物量負けが濃厚です。

よって、上図では☗６四同飛☖同角☗３三角成で金を二枚取るのが現実的な手順ではありますが、そこで☖８七歩が痛烈な叩きになります。

☗同金だと☖３八飛が王手馬取りです。しかし、☗７七玉は☖８六角。☗８七同玉は☖８六飛という攻めが控えているので、相手は良い応接がありません。上図は一手勝ちが見込める状況であり、こちらが勝勢と言えます。

こうして一連の進行を見ると、こちらは☖５五歩と突き捨てたことで、相手の攻めをスマートにいなせたことが読み取れます。

将棋は、大駒が強い力を発するゲームです。ゆえに、自軍の大駒は効率を最大化させることが理想です。裏を返せば、敵の大駒はなるべく効率を悪化させることが大事です。ゆえに、☖５五歩のように利きを少なくさせてデバフを掛ける手は、見た目以上に高い価値を有しています。こうした性質を理解しておくと、形勢を損ねるケースが減ってくるのではないかと思います。

目標物の可動域を増やす

繰り返しになりますが、今回の題材では敵の大駒にデバフを掛けることが話の肝でした。ゆえに筆者は☖５五歩と指したのですが、この手を選んだ背景には、もう一つ別の理由もあったのです。

それは、「目標物の可動域を増やす」ということですね。

改めて、☖５五歩と突いた局面を提示します。先述したように、相手は☗７三銀→☗６四歩という攻めを狙っており、それも厳しい攻め筋の一つでした。けれども、こうして５筋の歩を突いて５四に空間を作れば、６三の銀が上に移動できるので、その攻め筋を喫してもあまり痛痒を感じません。

このように、相手の狙いを防ぐ際には、目標にされている駒の可動域を増やしてあげると、存外すんなりと受けが成功するケースが多々あります。これも汎用性の高いテクニックなので、併せて意識して頂ければ幸いです。

また、こうした中盤の難所で意識しておくと役立つことは、他にもあります。よろしければ、以下の記事も併せてご覧いただけますと幸いです。