どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【寄せは敵の金を射程に入れろ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) August 1, 2025
自玉は安全なので、敵玉の寄せに向かえる状況です。どのように迫るかですが、ここは☖89とが最速の攻めですね。… pic.twitter.com/FAYeneXOgQ
将棋の終盤戦では、敵玉を寄せる技術が少なからず要求されますね。ただ、この寄せという領域は序盤の定跡とは違い、基本的には一期一会です。ゆえに、特定の形を覚えるような要領で学ぶことはできません。
しかしながら、寄せにおいて必ず実践した方が良いことは確かに存在します。今回は、そうしたことをテーマに解説を進めたいと思います。
敵の金を射程に入れる
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗8六歩と指し、8筋の守りを固めたところです。

この局面は、こちらの玉に余裕があり、かつ敵玉の近くに攻め駒を配置することが出来ています。ゆえに形勢は優勢ですが、敵玉はまだ金銀四枚に守られているので、上手く急所を突かないと寄せ切ることは出来ません。その具体案を見出すことが、こちらの命題と言えるでしょう。

さて、上図では複数の候補手がありますが、自然に指すなら☖8九馬で敵玉に馬を近づけつつ、桂を入手する手です。これで何か大きな問題があるわけではありません。
ただ、この手は☗6五桂と打たれる手が、少し気がかりではあります。

これには☖同桂☗同歩☖1九角成と応じるのが自然ですが、☗4六歩で馬の利きを遮断されると、次の☗7三桂を防ぐ必要があるので手番を握られてしまいます。こちらは☖4五桂と打つ攻め筋もなくなっていますし、少し嫌らしい進行という感があります。

加えて、この局面は敵の金を攻撃しにくい配置になっていることも、嬉しくない要素の一つです。寄せは敵玉の最も近くにいる金を狙うのがセオリーであり、それを実行しにくい状況は、寄せの難易度が上がってしまいます。ゆえに、こちらは欲を言えば、もう少し違う変化を選びたいところがありますね。
こうした背景があったので、冒頭の局面で筆者は、敵の金を狙いやすい攻め方を選びました。具体的には、☖8九とと指すのが面白いですね。

一般的に、と金という駒を下段へ移動させると、効率が悪化するので良い手になることは殆どありません。しかし、この場合は馬の利きを7七の金に当てることが急所なのです。これで敵の金を攻撃(取れる)状況にすれば、寄せが一気に加速することになります。
上図では次に☖7七馬☗同玉☖8六角という順で敵玉に詰めろが掛かっています。したがって、相手は先程と同じように☗6五桂と攻めることは出来ません。

詰めろを防ぐ案としては、☗8七金と寄って質駒を解除する手が挙げられます。ただ、これには引き続き☖8八とで金を狙うのが良いでしょう。以下、☗7七金に☖7九とと入って再び馬の利きを通して金に当てれば、こちらは寄せやすい形に持ち込めます。

相変わらず敵玉には、☖7七馬☗同玉☖8六角の詰めろが掛かっています。☗8七金には☖8六飛と走れば相手は☗同金とは取れないので、これも寄せが決まっていますね。
この進行は、常に[☖7七馬☗同玉]という順を相手に突きつけることで、敵玉に大きなプレッシャーを与えていることが読み取れます。このように、自軍の大駒の利きを敵の金に当てておくと、見た目以上に高い効果があるのです。

なお、相手は[☖7七馬☗同玉]という応酬を回避するために、☗7八香と打って7七の地点を補強するほうが粘りが利きます。
ただ、こちらは金を剥がせる配置になったので、寄せやすい状況であることに変わりはありません。☗7八香には、あっさり☖7七馬と切ってしまい、☗同香☖8六飛と進めるのが分かりやすいでしょう。

こうなれば飛車の成り込みが約束されているので、相手は粘る手段が難しくなります。こちらは☖8八飛成や☖7九と、☖4五桂など威力の高い攻めが複数あるので全く不安がありません。上図は玉の安全度に大きな差がついているので、こちらの攻め合い勝ちが濃厚だと言えるでしょう。
こうして一連の進行を見ると、こちらは7七の金に狙いを定めたことで、スムーズに寄せが進んだことが読み取れます。

寄せのコツはいろいろとありますが、中でも敵の金を狙うことは非常に汎用性が高いアプローチです。それを最も効率的に行うには、大駒の利きを使って金を射程に入れることです。
なお、小駒を使って金を剥がすのも確実ですが、大駒を使うほうが「速さ」という点では勝ります。寄せは確実性だけでなくスピードを求められることも少なくないので、早めに金を剥がせる形を確保するのは、見た目以上に価値の高い行動になり得ます。こうした視点で寄せの構図を描くと、盤面の見え方が変わってくるかと思います。
敵玉の早逃げを許さない
繰り返しになりますが、今回の題材では敵の金を大駒の利きの射程に入れることが話の肝でした。ゆえに筆者は☖8九とと指したのですが、この手を選んだ背景には、別の理由もあったのです。
それは、「敵玉の早逃げを許さない」ということですね。

改めて、失敗例の局面を提示します。この変化は先述したように敵の金を攻撃しにくいことが問題なのですが、他にはいつでも☗5九玉で早逃げされてしまうことも、寄せを難しくしている要因と言えます。
現状では敵玉を横から攻撃する態勢が整っていないので、5九の地点に逃げられるとなかなかに面倒です。早逃げは受け側にとって延命する切り札とも言えるテクニックであり、それを使われる状況はなるべく作りたくありません。

逆に成功例のほうは、7七の金を射程に入れたことで、相手は☗5九玉が指せなくなっています。早逃げを牽制すれば敵玉はいつまで経っても安全地帯へ移動できないので、寄せやすさが格段に変わります。こうした点も意識して寄せを進めると、粘りを許しにくい指し方が出来ることでしょう。
また、敵玉を寄せるときに実践したほうが良いことは、他にもあります。詳しくは、以下の記事で解説しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
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