前回の局面を再掲します。

この局面では、先手は▲18玉と玉の早逃げをする手を正解としたいと思います。これが終盤で頻出する次の一手です。

この手の意味を考えるためにまず、はじめの図の状況を確認しておきますと、先手玉は△39銀以下の詰めろがかかっているのに対し、後手玉には詰みはなく、普通は先手が一手負けの状態です。しかし、後手玉はもう一枚、先手の持ち駒に銀や角が入ると詰むという条件があるのがポイントです。

そこで先手が▲18玉と逃げた局面、この手によって先手玉は一時的に詰めろを回避しましたが、依然後手玉が詰めろでないことに変わりはないため、後手は先手玉に詰めろをかけられれば勝ちに見えます。ただし、その際には、上記の銀や角を渡さずに、という制約があります。

例えば、詰めろをかけるだけなら△39銀という手があります。

本来、これはかなり受けづらい詰めろなのですが、前述した条件を考慮すると、▲39同金と一回取れることがわかります。そして△39同馬のとき、銀が一枚持ち駒に入ったので、▲43金と打てば今度は後手玉が詰むため、先手の勝ちになっています。

上図以下は、△34玉、▲26桂、△25玉に▲16銀で詰み、銀が入ったため最後の▲16銀が打てるという仕組みです。

この筋があるので、後手は銀を渡すことができません。そこで、▲18玉に△28銀のような手も考えられるかもしれません。

これに対して▲28同玉だと先ほどと同じく銀は入りますが、△39銀以下先に詰まされてしまうため先手負けになります。

しかし、実は△28銀自体が詰めろになっていません。ですので、後手玉に詰めろをかけておけば(具体的には▲26桂くらい?)先手勝ちと言えそうです。

他に後手に有効手も難しく、▲18玉の局面は先手が勝ちになっているといえそうです。終盤における玉の早逃げは、もちろん全ての局面で有効というわけではないですが、この将棋のように、自玉に対する詰めろがかかる速度に変わりはなくても、途中で駒が入るため相手玉に対する寄せの速度に影響が出てくるというケースが時々出てくるため、記憶しておきたい手筋の1つと言えると思います。

実際には、はじめの図で▲18玉以外にも先手に有力手はあるかも知れませんが、先手の他の候補手の1つとして、▲48桂について考察してみたいと思います。この手も有力に見えたため、少し解析してみました。

この手の意味は▲18玉に似ていて、▲48桂以下△48同馬、▲同金、△同角成となると、依然として先手玉は詰めろですが、角が入ったので後手玉を詰まそうという狙いです。(なおこの手順中、▲48同金のとき△39銀と打ってくるのは、▲同玉、△48角成、▲同玉以下、王手は続くものの詰みません)

△48同角成となった上図以下、後手玉の詰み筋としては、▲43金、△34玉、▲32飛成とするのがいいと思います。(▲42角や▲51角から入ると△22玉で詰まないと思います)

これに対し、△25玉と逃げると▲36角、△同歩、▲同龍、△14玉、▲26桂、△15玉、▲16歩で詰みます。そこで▲32飛成に△33桂打としますが、▲33同金、△25玉(△33同桂は▲43角)に▲34角とします。

▲34角以下△同金に▲23龍とできるのがポイントで、これで詰んでいそうです。以下、△24金打に▲26歩、△同玉、▲27銀、△15玉、▲16歩、△25玉、▲17桂が一例でピッタリの詰みになります。

では、▲48桂でも先手が勝ちか?と思えるのですが、実はここまでの手順中、▲48桂以下△同馬、▲同金のとき、△48同角成とする前に、一回△36桂!とする妙手があるようです。

これは先手も▲36同歩とする一手ですが、そこで△48角成としたのが下図。

この局面で先ほどのように詰ませにいったとき、▲43金、△34玉、▲32飛成、△25玉となると、先の△36桂の効果で、先手の歩が36にきているため、36~46といった後手玉の逃げるルートが開けているということです。

こうなると後手玉は詰まず、先手玉に受けはなく、後手勝ちと思われます。△36桂を打たなかった変化と比較すると、▲36角が打てなくなっているという見方もできそうで、△36桂は「敵の打ちたいところに打て」という格言を応用した手ともいえそうです。そういう意味では、△36桂も難しい手ながら▲18玉同様、終盤の手筋と言えるかもしれません。

少し長くなりましたが、今回は終盤の一手争いやその中における手筋について考えてみました。

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