どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【穴熊は端攻めされない状況を作れ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 24, 2023
こちらは穏便に指すなら☗18飛ですが、桂を取られると将来の☖85桂が嫌味です。
なので、☗同飛→☗11角成と進める方が賢明。飛車は渡しますが、この方が端が堅いですね。あとは☗86桂→☗78香で攻めれば、穴熊の堅さが活きる展開です。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/7rfIfUUpq4
穴熊は非常に堅固な囲いですが、端を攻められる展開になると、どうしても脆さが出てしまうものです。それを踏まえると、いかにして端攻めをされない状況を作るのかということが、穴熊を指す上で大事なことになりますね。今回は、それをテーマに解説を進めていきましょう。
端攻めに必要な戦力を渡さない
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖2七香と指し、戦力の補充を図ったところです。
この局面は、現状は駒の損得には差がありません。しかし、こちらは囲いがやや薄くなっていることや、飛車の働きに不満を抱えています。それらを考慮すると、形勢はあまり芳しくないと言えるでしょう。特に、囲いの桂香が剥がされているデメリットが露骨に出ると、形勢の悪化に拍車が掛かることが予想されます。
さて、ひとまず、この飛車取りの処置を考えなければなりません。平凡に指すなら、☗1八飛☖2九香成☗1一角成ですね。こうすれば、駒の損得の均衡を保つことが出来ます。
ただ、そこから☖8五桂と打たれると、こちらは相当に嫌な局面を迎えることになります。
この桂を打たれると、端攻めされる状況に陥ってしまうので、囲いの桂香が剥がされているデメリットが顕在化することになります。銀を逃げても☖9七歩で攻めが続いてしまうので、根本的な解決になりません。
なお、上図から☗9八香と打てば、こちらは端をある程度、補強することが出来ます。しかし、☖9七桂成☗同香☖9五歩☗同歩☖4六飛と進められると、やはり端攻めされる状況から抜け出すことが出来ていません。
次は☖9六歩☗同香☖8五銀で香を狙って来るのが厄介ですね。ただ、こちらは手駒が桂しか無いので、しっくりと来る受けが見当たりません。こうした進行を見ると、☖8五桂を打たれたことをきっかけに、穴熊が徐々に崩されていることが読み取れます。
繰り返しになりますが、上図でこちらは囲いの桂香が剥がされているデメリットが出ないようにしないといけません。そのためには、端攻めされない状況を作ることが必須です。つまり、☖8五桂を簡単に実現させない工夫が求められているのですね。
そうした背景があったので、筆者は☗2七同飛☖同馬☗1一角成と応じました。これが穴熊の堅さを維持する着想になります。
これは飛香交換を受け入れているので、常識的には大損と言える進行です。けれども、こうして桂を渡すタイミングを少しでも遅らせれば、その分、穴熊の堅さが持続することになります。また、穴熊は横方向から攻められる分には怖くないので、飛車を渡しやすい意味もありますね。
上図で振り飛車は候補手が広いですが、自然に指すなら☖4六飛で飛車を活用することになります。ただ、この瞬間が安泰なので、敵玉を攻める準備を整える余裕を得ています。具体的には、☗8六桂☖4九飛成☗7八香で要所に攻め駒をセットしておきましょう。
なお、桂を跳ぶ前に☗7八香で力を溜めておくのが肝要なところです。焦って☗7四桂を急ぐと、☖7八歩が飛んでくるので堅さを維持できません。加えて、桂が単騎で攻めても敵玉を寄せ切れないので、後に☖8五桂のカウンターが飛んでくることになります。確実に相手を倒せる状況を作ってから☗7四桂を決行するのが肝要ですね。
7筋に香をセットしておけば、今度こそ☗7四桂が厳しい攻めになります。本譜は☖9五歩☗同歩☖7三銀でそれに備えてきましたが、これには☗7七香打でさらに力を溜めるのが賢明ですね。
やはり、次は☗7四桂が痛烈です。ここまで来ると、こちらは自玉が鋼鉄ですし、☗7四桂が非常に速いので攻め合い勝ちが期待できる局面です。端攻めされない状況を作る工夫が、見事に奏功した格好ですね。
穴熊にとって端は「玉頭」でもあるので、そこに攻撃が飛んで来ないようにすることは大きな価値があります。今回の事例で紹介した「端攻めに必要な戦力を渡さない」というアクションプランは汎用性が高いので、ぜひ意識して頂ければと思います。
単純な駒の損得に囚われないことが大事
今回の題材では、相手に桂を簡単に渡さないことが話の肝でした。とはいえ、そのために飛車を犠牲にするという感覚は、なかなか抵抗があるかもしれません。
ただ、将棋は終盤戦に入ると、そうした単純な駒の損得に囚われない思考が必要になる側面があります。
例えば、上図の局面では自玉が風前の灯火です。しかし、この局面は斜め後ろに利く駒(角 or 銀)さえ渡さなければ、この玉は絶対に詰みません。となると、[飛金桂香]はどれだけ捨てても関係ない(つまり、それらの駒のレートは下落している)という理屈になりますね。
今回の題材も、話の趣旨としてはこれと同じです。すなわち、ここでは☖8五桂がすこぶる厳しいので、桂のレートが高騰しています。なので、☗1八飛ではなく☗2七同飛の方が勝るという理屈になるのですね。
このように、将棋の終盤戦は、局面によっては特定の駒のレートが格段に上がるケースがあります。そうした場合は単純な駒の損得を無視した思考が必要になるので、デフォルトの損得勘定に囚われないことが肝要です。こうしたことも意識できると、終盤戦でより良い判断が出来ることでしょう。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2023年11月2日 5:21 PM
場合によっては、飛車と香車を交換する方がいいというのが、将棋のおもしろいところですね!💫