どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【決戦に備えた配置を選ぶ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) June 10, 2024
相手は☖35飛の決戦を狙っており、飛車交換になりそうな状況です。こちらは銀冠を作っている途中なので☗78金が自然に見えますが、それだと5八の金が浮くことが気になります。… pic.twitter.com/xywy3HWt8Z
将棋は駒組みがある程度整うと、どちらかが仕掛けを行います。そして、仕掛け周辺の攻防は互いの駒が初めてぶつかる場面なので、形勢が揺れ動くことが少なくありません。ゆえに、そこで精度の高い指し方が出来れば、優位に導ける可能性も高まりますね。そこで今回は、そうした状況の考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。
決戦に備えた配置を作る
今回は、上記ツイートの少し手前の局面から振り返ってみましょう。図は相手が☖3五歩と突き、戦いを起こしたところです。
こちらは8七に銀を上がっていることから、銀冠に組もうとしています。ただ、こうして銀を上がった瞬間は6九の金が離れているので、少し危険な配置です。相手はその欠陥を突くべく、チャンスと見て動いてきた訳ですね。
この仕掛けは3筋から飛車を捌くことを念頭に置いているので、こちらは☗同歩☖4五歩☗3八飛で、それを牽制するのが常套の受け方です。相手は局面が収まると歩損が祟るので、☖7七角成☗同桂☖4四角と進め、あくまでも☖3五飛の実現を目指します。
さて、こちらは3五の地点に利きを増やすなら☗2六角ですが、この場所に角を手放すと効率が悪いので感心しません。ただ、そうなると後手の飛車の捌きを抑えることは難しいですね。ゆえに、それを指されても大丈夫な状況を作る必要があります。
こちらは囲いの発展が途中だったので、上図では☗7八金で銀冠を完成させるのは一案です。ただ、そこから☖3五飛☗同飛☖同角と進められると、どういった印象を受けるでしょう。
こちらは銀冠の堅陣ですし、☗3一飛と打ち込むことも出来ます。けれども、将来の☖2八飛が金桂両取りになってしまうことは、かなり気になるのではないでしょうか。
なお、こちらは☗7八金に代えて☗6八金寄と整備すれば、金が浮き駒になることはありません。しかし、その配置も☖2八飛を打たれると、次に☖5七角成で銀を取る狙いが残ってしまうので万全の整備とは言えません。
こうした背景があるので、☖4四角と打たれた局面で平凡に金を引き締めるのは、得策ではない側面があります。ゆえに筆者は、全く別のアプローチで自陣を整備しました。具体的には、☗7八銀と引くのが賢明な一着になります。
こちらは銀冠に組むことが予定だったので、こうして銀を引くと完全に逆行しています。しかし、銀冠を目指すのはあくまで穏やかに駒組みが進んだときの話であり、相手が☖3五歩と仕掛けてからは状況が変化しています。ゆえに、当初のプランに拘るのではなく、臨機応変に指し手を考えることが大事なのです。
この銀を引くと銀冠には組めませんが、これなら金が離れ駒にならないので、飛車交換になった際、☖2八飛の威力は激減します。そうなると、こちらは受けの手が省けるので、攻め合いの条件が良くなっていますね。よって、相手は☖3五飛が指しにくくなっています。
そうした背景があるので、本譜は☖3五角と捻った攻め方をしてきましたが、これには☗5五角と天王山に設置しておくのが絶好となります。
これは香取りや☗3三歩という狙いがあります。後手は本音を言えば☖5七角成☗3二飛成☖5八馬と切り合いたいですが、そこで☗2一竜と桂を拾われると、馬取りと☗7四桂が同時に残っているので、収拾がつきません。ただ、そうなると有効手が見えないので、上図は居飛車が上手く立ち回ったと言えるでしょう。
こうして見ると、☗7八銀と引いた手が都合よく機能していることが読み取れますね。
このように、中盤の入口では来るべき決戦に備えた手を指す意識が必要です。将棋はダイナミックに駒がぶつかり合ったり、局面の流れが急激になると陣形を整える余裕は無くなります。したがって、そうなる前に決戦に耐え得る配置を作っておきましょう。これは幅広い戦型で共通する概念なので、汎用性が高いかと思います。
相手の立場で考え、描いている理想を察知する
繰り返しになりますが、今回の題材では来るべき決戦に備えた手を指すことが話の肝でした。とはいえ、☗7八銀のような当初のプランを切り替える手は、発見が難しいことは確かです。
ただ、その相手の立場になって考えると、こうした臨機応変な手が発見しやすくなる側面は強いように感じています。
相手が放ったこの☖4四角は、飛車交換に持ち込むことが狙いでした。なぜ飛車交換を挑んでいるのかというと、現局面は相手にだけ離れ駒があるので、それを行う条件が良いからです。また、仕掛けの☖3五歩も、離れ駒が生じていることに着目した手と言えますね。
つまり、相手は「自分だけ離れ駒がない状態で戦いを起こす」ことが、描いている理想なのです。それを踏まえると、居飛車側は囲いの離れ駒を改善できれば、相手の理想を打ち砕けると考えることが出来ます。そうした思考があれば、☗7八金ではなく、☗7八銀という着想に至るのではないでしょうか。自分の理想だけではなく、相手の理想も踏まえた上で指し手を考慮すると、判断の精度が上がるかと思います。
また、こうした中盤戦を上手く乗り切るための思考法は、他にも様々な種類があります。詳しくは、拙著「盤上のシナリオ」に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
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