居飛車穴熊における有力な構想

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【居飛車穴熊の有力な駒組み】

相手は☗66銀型の四間飛車に構えています。オーソドックスな駒組みですが、これには☖51角→☖84角で角を転換するのが相性の良い指し方になります。… pic.twitter.com/l1xEIfFe1v

— あらきっぺ (@burstlinker0828) December 28, 2024

対抗型の将棋において、居飛車が穴熊に囲うのは有力な作戦です。ただ、穴熊は自分が攻める展開に持ち込まないと堅さを活かせないので、これを真に指しこなすためには、敵陣を攻めるための構想をしっかり用意しておくことが大事と言えます。

そこで今回は、居飛車穴熊における有力な構想をテーマにして、解説を進めたいと思います。

角の利きに期待する

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗４七金と指し、高美濃囲いを完成させたところです。

こうした局面は、四間飛車 vs 居飛車穴熊という構図において、頻出する局面ですね。これと全く同じ局面を経験された方は多いのではないでしょうか。

こちらは穴熊の骨格は作れていますが、二枚の金が離れているので万全の態勢とは言えません。ゆえに、上図では☖３一金や☖４三金などで、それを動かす手が自然に思えます。

ただ、結論から述べると、ここでは☖５一角☗５六歩☖８四角で角を右辺に転換するのが、非常に有力な構想になります。

囲いの構築を後回しにしているので不安感がありますが、これは振り飛車の☗６六銀型に対応している意味があります。ここに角を配置しておくと、居飛車は相手の攻めを迎撃しやすくなるのです。

振り飛車としては、自分だけ先に囲いの構築が完了しているので、☗５五歩と動きたくなる場面です。そのとき、ぶつかった歩を取らずに☖４二金寄と待機するのが銘記すべき一着。これが☖８四角型を活かす手になります。

これは５二にスペースを作ることで、そこに飛車を回れるようにした狙いがあります。そこに飛車を配置すれば、８四の角と連動するので敵陣を攻めやすい状況に持ち込めます。

なお、同じようでも☖４三金と上がると、☗５四歩☖同銀☗５五歩のとき、銀の行き場がなくなり困ったことになります。４三にスペースを確保しておけば、上記の攻めは☖４三銀と引けるので差し支えありません。

また、ここで☗５八飛には☖５二飛で数を足せば受かります。振り飛車は６六の銀が前に進めないので、これは攻めが空転しています。また、☗５四歩☖同銀☗５八飛も☖５二飛で同様です。

よって、振り飛車が６六の銀を進めるには、上図から☗５四歩☖同銀☗５五銀と指す必要があります。ただ、これにも☖同銀☗同角☖５二飛で、飛車を５筋に回るのが良い対応になります。とにかく居飛車は、ここに飛車を据えることが急所ですね。

振り飛車は、角取りを防ぐ必要があります。紐を付けるなら☗５六歩ですが、これには☖５五飛☗同歩☖５七角打が厳しく、居飛車の攻めが続きます。☖５七角打は☖３九銀と食いつく手を見せています。振り飛車はそれを嫌って☗５七同金☖同角成という進行を選ぶと、今度は☖３五歩の桂頭攻めが厳しいですね。

また、ここで☗４四角は☖５四飛と浮けば、やはり角取りの処置に困ります。このように、振り飛車は角が質駒に入ってしまうと、居飛車の強襲を食らいやすい状況になるのです。

振り飛車が角を質駒にされないようにするには、ここで☗９一角成と指すことになります。ただ、これには☖３九銀といきなり放り込むのが絶好の反撃。☗同金には☖同角成☗同玉☖５九飛成で王手飛車取りが掛かります。

よって、☖３九銀には☗２九玉と逃げることになりますが、豪快に☖５七飛成とダイブするのが後続手で、これも居飛車の強襲がヒットすることになります。

☗同金☖同角成と進むと、詰めろ飛車取りが掛かりますね。また、☗９八飛の辛抱には☖４七竜☗同銀☖４八金で絡んでいけば問題ありません。玉型の差があまりにも大きいので、振り飛車は攻め合いに持ち込めないのが辛いところです。上図は居飛車の攻めが切れない形になっており、穴熊の典型的な勝ちパターンだと言えるでしょう。

そして、こうして一連の進行を見ると、居飛車は８四の角が常に敵陣に直射していることが、とても心強いことが読み取れます。

四間飛車が☗６六銀型に組み、中央からの仕掛けを狙うのは頻出する攻めの布陣です。この場合、居飛車は☖８四角型に構えて迎撃するのが最強の構想となります。振り飛車が敵陣を攻めるためには６六の銀を５五へ進出させないといけませんが、この銀を動かすと角の利きが直射してくるので、自陣に多大な脅威が及びます。その結果、居飛車のカウンターが炸裂するのですね。この☖８四角型は、☗６六銀型を構造的に咎めているので非常に相性の良い形と言えます。ぜひお試しください。

振り飛車の攻めの銀の配置に注目せよ

先述したように、☖８四角型はカウンターを打つ力が非常に強いので、優秀な構想と言えます。ただし、何でもかんでもこれに組めば良いという訳ではありません。この構想を行う際には、相手の銀の位置に注目することが大事です。

例えば、四間飛車は☗５六銀型に構えるのも頻出する指し方の一つです。そして、この場合は☖８四角型に組んでも、大きな成果は上がりません。理由は、そこに角を配置しても、角の利きが敵陣の奥深くまで直射しないからです。

加えて、☗５六銀型は☗４五歩と突いて攻めてくるケースが多く、そうした際に角が３三から移動していると、相手の攻めの威力を引き上げてしまう弊害もあります。ゆえに、この場合は角を３三に置いたまま駒組みを進め、機を見て☖８六歩☗同歩☖４五歩の筋で仕掛けることを考えたほうが良いでしょう。このように、居飛車穴熊を指す際には、相手の銀の位置によって、柔軟に構想を使い分けることも大事な要素と言えます。

また、こうした対抗型特有の知識やノウハウは、拙著「現代振り飛車の絶望、そして希望」にもふんだんに記載しております。こちらもご覧いただけますと幸いです。

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