どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【銀冠を攻略するときの裏技】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) January 9, 2025
こちらは手番を握っているので、寄せの準備を進めたいところ。自然な発想は敵陣に飛車を打ったりと金を寄る手ですが、厳しさはないので少し物足りません。… pic.twitter.com/LaAaqfIneD
対抗型の将棋において、振り飛車が銀冠に組んでくることは多々ありますね。この囲いは堅さと広さを兼ね備えており、非常に手強い相手です。ゆえに、どういった攻めが急所にヒットするのか、ということを知っておくのは高い意義があると言えるでしょう。
そこで今回は、この囲いを崩す際に役立つテクニックをテーマにして、解説したいと思います。
飛車を設置する手の威力を高める
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。下図は相手が☗7一飛と指し、こちらの陣地に飛車を打ち込んだところです。

ご覧の通り、居飛車穴熊vs銀冠という構図です。対抗型の将棋において、こういった状況は頻出しやすいですね。似たような局面を経験された方は、多いのではないでしょうか。

さて、こちらは候補手が広い場面ですが、まずは無難に敵陣に飛車を打つ手を考えてみましょう。例えば、☖8八飛が挙げられます。
ただ、結論から述べると、この手は急所を外しています。というのも、そこから☗2五桂☖8九飛成☗3三桂打と過激に襲い掛かられると、攻め合い負けが濃厚だからです。

これは放置しても☖同桂と取っても、☗3二角と打つ手を狙っています。それを喫すると詰めろ金取りが掛かるので、こちらは手痛いダメージを負ってしまいますね。そして、こうした変化を見ると、こちらは☖8八飛→☖8九飛成の二手があまり敵玉に響いておらず、威力の低い攻め方になっていることが読み取れます。

確かに、冒頭の局面で敵陣に飛車を打つのは自然です。しかし、敵陣に飛車を打つときは、それが厳しい狙いを秘めた状態で打つのがベストと言えます。ゆえに、ここではそうした状況を作りに行く手を指すほうが、結果として威力の高い攻めを放つことに繋がります。
そうした思惑があったので、上図で筆者は☖6九角と打ちました。これが最も急所を突いた一撃になります。

傍目には妙な場所に角を設置するので、これが第一感だった方は少なかったのではないでしょうか。しかし、これを指すことで、居飛車は先述した「厳しい狙いを秘めた状態で敵陣に飛車を打つ」という状況を作ることが出来るのです。
振り飛車は、やはり☗2五桂が最速の攻めです。対して、こちらは☖4七角成☗同金☖6九飛と進めます。この飛車打ちが、実は見た目以上に厳しい攻めなのです。

振り飛車としては、直線的に攻め合って勝てれば話は簡単です。そうなると☗3三桂打を掘り下げることになります。ただ、これには素朴に☖2九金が厳しいですね。もし☗1七玉には☖3九飛成と接近すれば、相手は2八の数的不利を解消させるのが難しくなります。☗3七角と打っても☖同竜☗同金☖3九角で無効ですね。
また、☖2九金のときに☗3七玉と逃げてきた場合は、☖3九飛成☗3八角を利かしてから☖3三桂☗3二角☖2一桂と進めるのが冷静な対処になります。

この局面は☗4三角成で金を取られてしまいますが、そこで☖4二銀と引きつければ、振り飛車は有効な攻めがありません。相手は角を渡せない状況なので、上手く踏み込むことが出来ないのです。こちらは相手の攻めが緩めば、☖2八金から自然に迫って問題ありません。よって、この局面は居飛車の旗色が良い終盤戦と言えます。玉の安全度の差が大きいですね。

なお、振り飛車としては☖2九金を打たせると粘りが利かないので、ここでは☗3八銀と受けに回るほうが賢明と言えます。ただ、これも☖3九金とくっついておけば、やはり相手は角を渡せない状況になるので、先述した局面と似たような状況になります。
そもそも、☖6九飛と打った手を無視できないということは、「厳しい狙いを秘めた状態で敵陣に飛車を打つ」という居飛車の言い分を通しているので、不本意であると言えるでしょう。
こうして一連の進行を見ると、☖6九角と打った手の効力が読み取れますね。

この☖6九角の筋は、銀冠を攻略する際に有効になる一着です。特に、敵陣に飛車を打つ前に実行するのが大事で、それにより、より良い場所へ飛車を設置できる恩恵が得られます。今回の題材では6九に飛車を打ちましたが、場合によっては☖4七角成☗同金☖4九飛や、☖4七角成☗同金☖8八飛のような順が有効になることも考えられます。
「飛車を手持ちにしたら、とりあえず打つ」という姿勢ではなく、「厳しい狙いを秘めた状態で敵陣に飛車を打つ」ことを心掛けると、寄せのスピードがぐぐっと上がります。ぜひ意識してみてください。
分離させながら金を剥がす
なお、☖6九角という攻め方が急所を突いているのは、相手の囲いの金を狙っていることが主な要因です。ただ、それ以外に、もう一つ注目して頂きたい部分があります。
それは、[☖4七角成☗同金]という応酬を強要できることですね。

基本的に、将棋の囲いは金が守りの要です。ゆえに、囲いを攻略する際には、それを剥がしたり、敵玉から離れさせる攻めを行うのがセオリーです。そして、それらを同時に実行することが出来れば、非常に効率的であることは言うまでもありません。
[☖4七角成☗同金]という順は、その理想を実現しているので効果の高い攻めになっているのです。ゆえに、☖6九角が急所を突く一着になるという訳ですね。こうした理屈が身につくと、違う囲いを攻略する際にも応用が利くので、これも併せて心掛けておくと良いでしょう。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2025年3月9日 5:36 PM
まずもって2五桂馬、3三桂馬が厳しい攻めなんですね🎵8ハ飛車が思った以上に緩手であることが理解できました😃