どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【敵玉をスマートに寄せるコツ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) July 19, 2025
敵玉は金銀四枚に守られていますが、広さは無いことがデメリット。こちらはその弱点を突きたいところです。… pic.twitter.com/AFxykSItbK
将棋の終盤戦では、敵玉を寄せる技術が少なからず要求されますね。ただ、この寄せという領域は序盤の定跡とは違い、基本的には一期一会です。ゆえに、特定の形を覚えるような要領で学ぶことはできません。
しかしながら、寄せにおいて必ず実践した方が良いことは確かに存在します。今回は、そうしたことをテーマに解説を進めたいと思います。
敵玉を広げる王手を掛けない
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖6六歩と指し、こちらの玉に迫ったところです。

この局面は、こちらが銀損ではありますが、こうした最終盤に関しては、彼我の玉の安全度のほうが大事な指標になるので、駒の損得は大して気にする必要はありません。現状、こちらの玉には詰めろが掛かっていないので、敵玉の寄せに向かえる状況です。その最適解を見つけ出すことが、こちらの命題ですね。
さて、上図では複数の候補手がありますが、「これだけは指してはいけない」という手があります。具体的には、☗6二角成と飛車を取る手です。一見、自然な手に見えるかもしれませんが、これは☖同玉と取られると、大いに損をすることになります。

ここで注目して頂きたいのは、飛角交換になったことではなく、敵玉の可動域です。上図は5一や7一、7三と複数の場所へ動けるようになっており、冒頭の局面よりも可動域が増えていますね。こうした敵玉を広げる手を指すと、自ずと相手の逃げ道を増やしてしまうので、得になることは基本的にありません。
こうした背景があったので、冒頭の局面で筆者は、飛車を取らない攻め方を選びました。具体的には、☗4三歩と垂らします。これで力を溜めるのが、ミスが起こりにくい寄せ方になります。

これは4二の地点に利きを届かせることで、敵玉の逃げ道を狭めた意味があります。失敗例と変化と比べると、敵玉の可動域に大きな違いがあることが読み取れますね。
この歩を☖同銀と取るのは自然な受けですが、そうなると竜の横利きが通ります。ゆえに、今度こそ☗6二角成で飛車を取る手が有力になりますね。相手は☖同金の一手ですが、☗8一飛☖6一桂☗4二歩と攻め立てれば、一手一手の寄り筋となります。

上図では☖同金と応じるくらいですが、☗1一竜で王手を掛けながら香を補充できます。相手は角を合駒すると戦力不足なので☖4一金で節約するのが妥当ですが、☗7一飛成と接近する手が☗4二銀☖同玉☗6二竜の詰めろになるので、寄せ切ることが出来ます。
このように、相手は4三の垂れ歩を取っても、自玉の安全を確保することに繋がりません。

こうした背景があるので、本譜は開き直って☖5六馬☗8八玉☖6七歩成と攻めに転じました。6六に歩を打った以上、こう指さないと話の辻褄が合わないところもあります。
しかし、これには☗4二銀☖同金☗3一竜と迫れば、敵玉を即詰みに討ち取ることが出来ます。

4二の金を安直に取らないのが大事なところで、これも「敵玉の可動域を広げない」方針に則っています。上図では、相手がどのように応じても☗4二歩成と指せば詰んでいるので、着地が決まっていますね。
こうした進行を見ると、こちらは4三に歩を設置したことで、スムーズに寄せが進んだことが読み取れます。

寄せのコツはいろいろとありますが、中でも敵玉の可動域を狭めることは非常に有用です。「詰み」という状態は「玉を移動できなくする」ことと(ほぼ)同義です。ゆえに、寄せの過程の中で敵玉の可動域を広げるような手を指すのは、逆効果になることが殆どだと認識しなければいけません。そうした視点で局面を見ると、安直に駒を取る手にも疑問を持てるようになるので、盤面の見え方が変わってくるかと思います。
一間竜の形を作る
ちなみに、冒頭の局面では☗4三歩以外の攻め方も有力です。具体的には、☗4二歩と叩いてしまうのも面白い一着ですね。

これを☖同金と取ると、☗3一竜と潜り込むことが出来ます。以下、☖4一金には☗4二銀で詰みですね。よって☖4一銀と受けることになりますが、☗4三歩☖同金☗3二銀で一手一手の寄り筋に入ります。このように、竜が3一に潜れると一間竜の配置になるので、一瞬で寄り形になってしまいます。
よって、上図では☖4二同玉のほうが手強い対応ではありますが、これも一間竜の形になるので☗4四銀が効果的な攻めになります。

次は☗3三銀成と☗4三歩という厳しい狙いが二つあります。相手はそれらを同時に防ぐ術がありませんし、こちらの玉に詰めろを掛ける手段もありません。したがって、上図もこちらが勝勢だと言えるでしょう。
☗4二歩という寄せ方は、相手がどのように金取りを防いでも一間竜の形に持ち込めることが自慢です。一間竜は攻め側にとって作りたい寄せの理想形の一つなので、この配置に持ち込む手は概ね間違いがありません。これも非常に汎用性の高い法則なので、意識しておくと良いでしょう。
また、こうした終盤の入口で心掛けたことが良いことは、他にもあります。詳しくは、以下の記事で解説しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
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