囲いを再生するときに意識しておくと良いこと

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【囲いを作り直すときのコツ】

こちらは玉型が薄いので、持ち駒を打ち付けたいところ。ただ、その前に☖22玉と寄るのが賢い一着です。

これを指してから金を打つ方が、頑丈な囲いを作れます。囲いを再構築する際には、深い玉型にすると負けにくい格好になりますね。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/CoghcdTIBm

— あらきっぺ (@burstlinker0828) November 19, 2023

将棋の終盤では、ときに自玉の囲いを作り直さなければならない場面もありますね。これは、基本的には持ち駒を投資することになるのですが、それ以外にもう一つ、心掛けておくと良いことがあります。今回は、そうしたことをテーマに解説を進めましょう。

深い位置に玉を据える

改めて、上記ツイートの始めの場面を振り返ってみましょう。下図は相手が☗９一馬と指し、香を補充したところです。

この局面は、駒の損得は無いものの、効率面では大きな差があります。こちらは自陣の駒が全て捌けているのに対し、相手は６八の銀や９九の香が働きの良い駒ではありません。その差が大きく、現局面はこちらが優勢であると考えられます。

ただし、こちらは自玉周りの守備駒が少なく、それを改善することは必須です。つまり、囲いを再構築したい場面なのですね。

さて、囲いを作り直すには、持ち駒の金気をペタペタと打つのが最適です。なので、ここで☖４二金と打つのは自然ではありますね。実際、それで居飛車が悪くはありません。

ただ、そこから☗６四馬で大駒を活用されると、少しばかり不満を感じる嫌いはあります。

冒頭の局面と比較すると、こちらの玉は安全度が上がりました。けれども、こうして敵の大駒に囲いの金が睨まれている状況は、安定感が高い配置とは言えません。

加えて、こちらは舟囲いのような配置になっているのですが、その囲いだと相手の美濃囲いよりも些か堅さで劣るので、まだ玉型に不安があるとも言えます。どうせ囲いを作り直すなら、もっと優良な囲いにしたいのが本音なのです。

そうした背景があったので、筆者は冒頭の局面から☖２二玉と指しました。これが安定感の高い玉型を作る一着になります。

ぱっと見は一手の価値が乏しいように映りますが、これは３二の地点に金を埋めることが狙いです。つまり、先程と同様に☗６四馬なら、☖３二金で囲いを再生しましょう。

この局面を、単に☖４二金と打った局面と見比べてみてください。瓜二つの局面ですが、こちらの方が玉型の安定感が高い印象を受けるのではないでしょうか？

これには、様々な理由があります。列挙すると、

①囲いの金が相手の大駒に睨まれていない。
②玉を深い位置に据えたことで相手の攻めが遠くなった。
③３二に金を打ったことで、☖２三銀や☖２三馬とのシナジーが高くなった。

主に、これらの要素が挙げられます。

この後は、☖２三馬や☖４二金打で囲いを強化するのが楽しみです。攻めに関しては、☖４四桂から迫るのが最も急所を突いていますね。相手は攻めの手段に枯渇しており、こちらの玉を攻略する目途が立ちません。先は長いですが、上図はこちらが非常に勝ちやすい局面になったと言えるでしょう。

そして、こうした「勝ちやすさ」を手にすることが出来たのは、一回☖２二玉と寄ったからに他なりません。

このように、囲いを作り直すときは、ただ金駒を打ちつけるのではなく、自玉の位置にも注目することが大事になります。玉が深い位置で囲いを再生できれば、一手を争う終盤戦で必ず効いてきます。今回のように玉を移動させる余裕がある場合は、欲張ってそれを実行してみたいですね。

攻め駒から遠ざかることが受けの基本

繰り返しになりますが、今回の題材では玉の位置を深くしてから囲いを作り直すのが話の肝でした。だからこそ筆者は☖２二玉を指したのですが、この手を選んだ背景には、もう一つ別の理由もあります。

それは、「相手の攻め駒から遠ざかる」ということですね。

冒頭の局面で、相手の攻め駒は自玉から離れた位置にいますが、この６筋の歩の関係は要警戒の存在でした。こちらは６一の歩が盤上から消えると、と金を作られてしまいます。そして、あの歩はお世辞にも安定しているとは言えません。なので、こちらは６二にと金を作られることを、ある程度覚悟しておく必要があるのです。

なので、冒頭の局面から☖４二金と打つと、上図のような状況になったとき、少し嫌な配置になります。こうなると☗６二歩成→☗５二とを見せられているので、こちらは忙しさを感じることでしょう。

しかし、［☖２二玉→☖３二金］という手順で囲いを再生すれば、今度は６二にと金を作られても響きが弱いので、と金攻めは気になりません。つまり、☖２二玉と寄った手は、相手の攻めから早逃げしている意味もあったのです。

このように、自軍の守り駒を相手の攻め駒から遠ざけておくのは、受けの基本であり、同時に極めて汎用性の高い法則でもあります。受けの手を指す際にはこうしたことも意識すると、終盤の競り合いを制することに繋がることでしょう。

また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。

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