どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

昨今において、先手中飛車には後手超速で対抗するのが最強の指し方だと見られています。ただ、この作戦は玉が薄い嫌いがあり、方針を誤ると途端に形勢を損ねるリスクがあります。そこで今回は、後手超速を指す上で意識しておくと良い基本姿勢をテーマに、解説を進めたいと思います。

なお、その1の記事については、以下のリンクからご覧ください。
https://sakurai-shogi.com/araki-20230901

原則、捌き合う展開は避けるべし

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗7八金と指し、陣形整備を進めたところです。

後手超速に対して振り飛車側は、複数の対策があります。上図は☗6八銀型の状態から5筋の歩を交換する指し方ですね。これは、軽快に大駒を捌くことを志向したプランです。反面、銀の出足は遅れるので、押さえ込まれやすいことがデメリットと言えるでしょう。居飛車としては、その弱点を突きたいですね。

さて、ここで居飛車は候補手が広いですが、積極的に良さを求めるなら☖5五歩で飛車を閉じ込める手が視野に入ります。こうすると相手は飛車が自陣へ帰還できないので、確実に駒得することが出来ますね。

しかし、上図で☖5五歩を打つと、☗同飛☖同銀☗同角という荒捌きを誘発する嫌いがあります。

ここで☖8六飛には☗8七歩で、飛車と香の両取りが残ってしまいます。また、☖9二飛の辛抱も☗8三銀が厄介ですね。9一の香を取られると、居飛車は駒得を主張出来ません。

上図では☖9二飛打が最も頑強な受けではありますが、ここに飛車を手放すようでは効率が悪く、居飛車は勝ちにくい将棋になってしまうことでしょう。

確かに、上図の変化は居飛車が駒得しています。しかし、この変化の振り飛車は、

・大駒が二枚とも捌けている。
・大駒の打ちこみに強い低い陣形が光っている。

これらの要素が非常に大きいので、飛銀交換の駒損でも十分に戦えるのです。このように、多少駒損していても、手が作れてしまえば概ね振り飛車側が良くなります。

裏を返せば、居飛車は上記二点の展開を回避できれば、形勢の好転が期待できます。特に、銀の圧力で相手の動きを封じ込める展開が理想ですね。そうなると、振り飛車の低い陣形をロジカルに咎めることが出来ます。

それを踏まえると、冒頭の局面では☖4四銀と上がるのが賢明な一着だと言えるでしょう。

ここに銀を上がっておけば、中央が手厚くなるので振り飛車の捌きを抑制することに繋がります。基本的に後手超速は、銀を二枚とも四段目に配置してから戦いを起こした方が良いでしょう。

振り飛車は次に☖5五歩を打たれると、飛車が憤死してしまいます。ゆえに☗5九飛と撤退するのは妥当ですが、居飛車は☖7五歩☗同歩☖7六歩☗8八角☖8六飛と進め、7・8筋でポイントを稼ぎましょう。

派手に攻め掛かるのではなく、少しずつ相手の攻め駒を押し込んだり後退させることが大事ですね。

振り飛車は角を捌きたいので、☗4六歩→☗4五歩を狙うのが一案です。ただ、ここで☗4六歩には☖8七歩と打つ手が厳しいですね。☗6六角には☖5五銀左、☗7九角には☖3五銀で良い受けが見当たりません。

したがって、ここでは☗8七歩と打つのが妥当ですが、☖8五飛☗4六歩☖7五飛と進めておけば、居飛車は十分な態勢を作ることに成功しています。

五段目に飛車を据え、7五の歩を飛車で回収するのがクレバーな指し方ですね。こうすれば☗4五歩に☖同飛が利くので、振り飛車の角に捌かれる心配はありません。

このあと居飛車は、☖7三桂と活用したり、☖5二金右→☖4二金寄で囲いを強化するのが楽しみです。このように、居飛車は右辺の金桂を活用することに困りませんが、振り飛車側はどうでしょう? 7八の金や8九の桂は中央方面への活用が難しく、これ以上、効率を上昇させることが出来ません。その点が大きく、上図は居飛車が上手く立ち回っていると考えられます。見た目以上に、居飛車の形勢が良い局面ですね。

そして、こうした模様の良い局面を作れた背景には、銀を二枚繰り出し、相手の捌きを封じたことが根幹にあります。

このように、後手超速は二枚の銀を繰り出して、振り飛車の低い陣形にプレッシャーを掛けることが基本姿勢です。徐々に敵陣を押し込んで、少しずつポイントを稼ぐ要領で指しましょう。特に、角の捌きを抑えることが肝要であり、それを重視しておけば大きく道を踏み外す心配は無い印象ですね。

右銀を前進することには拘らない

繰り返しになりますが、後手超速は二枚の銀を繰り出し、その圧力で振り飛車の動きを封じることが大事です。そして、この際には右側の銀の使い方が一つの鍵でもあります。

具体的には、あまり前のめりになり過ぎないことが大事ですね。

例えば、上図の局面では☖7六歩と打つのが良いと述べました。代えて☖7五同銀と前進するのも自然に見えますが、それには☗5三飛成という痛快な一着があります。☖同銀には☗2二角成☖同玉☗5五角が王手飛車ですね。これは、6四の銀を動かして隙が生じた弊害が露骨に祟っています。

また、こうした局面でも☖7五銀と出るのは危険です。これも☗4五歩→☗5三飛成で飛車を成られてしまいますね。なお、銀を出ることに拘るなら☖5二金右☗5七銀☖7五銀が考えられますが、これも適切な指し方とは言えません。

一般的に、攻めの銀を五段目に進軍するのは正解になることが多いものです。しかし、後手超速という戦法において、6四の銀は攻め駒であると同時に、中央や飛車のコビンをガードする守り駒でもあるのです。守り駒の性質も持っているのであれば、いたずらに五段目に進軍するのは賢いとは言えません。

ゆえに、6四の銀はなるべくこの位置に据えておき、「攻守両方に使えますよ」という態度を取っておく方がクレバーです。この戦型を指す際には、そうしたことも意識しておくと、より適切な判断が行えることでしょう。

また、こうした知っておくと役立つ将棋の定跡やテクニックは、私のブログや note にもふんだんに記載しております。こちらもご覧いただけますと幸いです。

【あらきっぺの将棋ブログ】
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1件のコメント

武田和浩 · 2023年12月1日 2:00 PM

銀を繰り出すのは攻めるばかりではなく、局面を落ち着かせて、押さえ込むという意味で使われることもあるんですね🎵二枚銀のコンビがいいですね✨

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