どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【対抗型の居飛車の必修手筋】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) April 12, 2024
こちらは☖65桂と跳んで攻めたい場面ですが、現状では☗66角☖86歩☗34歩で攻め合いを挑まれると、飛車先が重いので不安があります。… pic.twitter.com/zONcKvcDGt
将棋の中盤戦は非常に選択肢が広く、それゆえ正解手が分からない場面は多いものです。ただ、その戦型特有の手筋の使いどころを知っていると、難解な局面を乗り切れることは少なくありません。
今回は、そうしたことをテーマにして解説を進めたいと思います。
決戦の前に飛車先を軽くせよ
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗5四歩と指し、中央を攻めたところです。
上図は、対抗型の持久戦系の将棋ですね。こうした戦型の居飛車は、金銀を全て受けに使うことが多いので、攻めに関しては[飛角桂]で繋いでいくことになります。つまり、軽い攻めを行うことが多いので、その性質に沿った手を選んでいく必要があります。
さて、上図では5筋で歩がぶつかっていますが、5三の地点には複数の駒が利いているので、現状は放置しても差し支えありません。よって、何かしら攻めの手段を考えたいところです。
案としては、☖6五桂と跳ねる手が挙げられます。これは5七の地点の成り込みを狙っており、同時に角を動かせば8筋を突破する展開も見えてきます。ゆえに、非常に自然な攻め方と言えるでしょう。
ただ、結論から述べると、この手は得策ではありません。なぜなら、☖6五桂には☗6六角☖8六歩☗3四歩で攻め合いを挑まれる手が厄介だからです。
8筋を放置して玉側を攻めるのが明るい着想です。ここで☖8七歩成には、☗3三歩成☖同桂☗3八飛で3筋を集中的に狙われると、居飛車は支えきれません。しかし、☖8七歩成が指せないようでは、何のために☖6五桂→☖8六歩と指したのか分からなくなってしまいますね。
この失敗例を見ると、居飛車は自分の飛車先が重苦しい格好になっていることが分かります。こうした持久戦系の将棋において、8筋の歩を突いた攻めが間に合わないのは最悪の展開です。始めに述べたように、居飛車は軽い攻めを行うことになるので、こうして攻めが渋滞する展開は、最も避けなければいけません。
これを踏まえると、冒頭の局面で居飛車が本当に指さなければならない手が見えてきますね。そう、居飛車は桂を跳ぶ前に、☖8六歩で飛車先の歩を突き捨てる必要があるのです。
このタイミングで歩を突けば、次の☖8七歩成が角取りになります。よって、手抜かれる心配は皆無ですね。
また、☗同歩には今度こそ☖6五桂がヒットします。以下、☗6六角☖8六飛と進めば、8九の桂取りがあるので振り飛車は攻勢に出る余裕がありません。これは突き捨ての効果が最大限に発揮されていますね。
振り飛車にとって、最強の応手は☗8六同角です。こうすれば☖6五桂が直撃しないので、8筋を突破される展開にはなりません。
ただ、居飛車は8筋の突き捨てを角で取らせると、違うプランが選べるようになります。具体的には、☖5四歩と手を戻し、一転して受けに回るのが賢明な判断になります。
居飛車は☗8六同角と取らせたことで、
①この角の動きを釘付けにしている。
②この角を質駒に出来ている。
という二つのアドバンテージを得ています。
特に①が大きく、これによって振り飛車は角の働きが悪くなり、攻撃力が低下しています。ゆえに、居飛車は受けに回る余裕が得られているのですね。
次に☖6三銀が指せれば、居飛車は中央が安定します。よって、振り飛車はそれを指される前に動くよりありません。
ただ、☗5四銀と進軍するのは、☖4二金引で後続がありません。次に居飛車は☖5三歩☗4五銀☖8五飛☗5六銀☖6五桂という要領で、敵の銀を後退させながら攻勢に出る手段があります。よって、振り飛車は銀を出てもポイントを稼ぐことは出来ません。
他には☗6四角と飛び出る手も考えられますが、これには☖5三角と引く手がピッタリですね。
☗同角成☖同銀と進むのは必然ですが、居飛車は中央が手厚くなり、☖8七飛成の狙いも作れています。振り飛車は4五の銀や自陣の金が離れているので不安定な配置になっており、自陣をまとめ切れません。ゆえに、この変化も居飛車が上手く立ち回ることに成功しています。
以上のように、☖8六歩の突き捨てに☗同歩・☗同角どちらの対応でも、居飛車は優位を築けることが分かりました。突き捨ての有無で大きく情勢が変わることが読み取れますね。
このように、対抗型の持久戦系の将棋において、居飛車は適切なタイミングで飛車先の歩を突き捨てることが大事です。適切なタイミングとは、基本的には仕掛けの導入部分です。
また、この突き捨てを行ったとき、多くの場合、振り飛車には二通りの応接(☗同歩 or ☗同角)があります。居飛車としては、それの応接によって方針を切り替える姿勢を持つと、より上手く立ち回ることが期待できます。歩で取られた場合は決戦を、角で取られた場合は緩やかな展開を、という要領で使い分けましょう。これは実戦において出現頻度が高いので、繰り返し練習して身につけていきましょう。
歩を渡す弊害が無いときの見分け方
ちなみに、この手筋は駒を捨てているので、使いどころを誤れば形勢を悪化させる要因ともなります。なので、これを指すとマイナスに作用しやすい状況にも言及しておきましょう。これは、主に二つあります。
一つは、相手に歩を渡すことで新たな攻め筋が生じる場合です。特に、歩切れの相手に歩を渡して攻め筋を与える展開は最悪なので、これには注意が必要です。
もう一つは、飛車先の歩を突き捨てることで、そこから逆襲される場合です。これも相手に手段を与えているので、まさに利敵行為ですね。
その観点から述べると、この☖8六歩はそうした弊害が無い手だと読み解けます。つまり、相手は既に歩を持っていますし、歩を使った攻め筋も☗3四歩のみなので、持ち歩が増えたところで、状況の変化はありません。
また、この場合は☗8六同歩と取られたあと、☗8八飛→☗8五歩で8筋を逆襲される可能性もないですね。このように、上記二点の弊害が無い場合、この突き捨ては、ほぼ間違いなく損にならないので、積極的に実践すると良いでしょう。
また、こうした対抗型特有の知識や概念は、拙著「現代振り飛車の絶望、そして希望」にもふんだんに記載しております。こちらもご覧いただけますと幸いです。
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