どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

嬉野流は、奇襲戦法のような立ち位置ではあります。しかし、プロ棋士が公式戦で採用している事例もありますし、2023年に升田幸三賞を受賞していることから、決して侮ってはいけない戦法です。居飛車党としては、きちんと対処法を用意しておきたいですね。そこで今回は、これの対策をテーマにして、解説を進めます。

なお、過去にも嬉野流対策の記事をアップしておりますが、今回はさらに尖鋭化した内容になっております。

敵の大駒が働き出す前にやっつける

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図はこちらが☗2七銀と上がり、棒銀を表明したところです。

嬉野流 対策 最強

嬉野流の特徴は、角を引いて使い、かつ☖3三歩型を維持して駒組みを進めることです。ただ、この配置は相手の飛車先の歩交換を阻止できなかったり、3三に銀や桂が配置できないので棒銀に対処しにくいデメリットがあります。したがって、こちらは最速で棒銀を繰り出すのが最強の作戦となります。

嬉野流 対策 最強

とはいえ、もちろん嬉野流側も、これの対策は用意しています。こうして棒銀を見せられた場合、嬉野流は☖4四銀と上がるのが常套手段。これは、先手の銀が2五へ出てきたとき、☖3五銀と上がる手を用意することで棒銀の攻めを緩和しようとしています。

ただ、実はこうして☖4四銀型を強要させることが、早い☗2七銀の狙いです。☖4四銀型には、☗3六銀☖8四歩☗4六歩と進めて、この銀を目標にするのが好着想になります。

嬉野流 対策 最強

さて、ここで嬉野流は攻めるなら☖8五歩ですが、それには☗4五歩☖5五銀☗2四歩という攻め筋があります。十字飛車を発動して5四の歩を刈り取れば、王手銀取りが掛かるので、たちまち優勢になります。

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また、ここで☖3四歩と突くのは☗2五銀☖3三銀☗2四歩で先手良し。こうして棒銀がスムーズに捌ける展開になれば、嬉野流は☖4四銀と上がった意味が無くなるので、理屈に合いません。

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基本的に、嬉野流は3五に銀を出る格好にしないと棒銀に対処することが出来ません。よって、こうして☗4六歩を突かれた場合は、☖5三角と上がるのが、この戦型特有の受けです。

ただ、こちらは気にせず、☗4五歩で銀を追いましょう。結論から述べると、すでに嬉野流は倒れています。

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後手は5三に角を上がった手を活かして、☖3五銀と出るのが自然です。対して、これには☗4七銀と引くのも一案ですが、☗同銀☖同角☗4四歩でブレーキを掛けずに突っ走るのが賢明。相手の大駒が働き出す前に、どんどん動くほうが大きくリードを奪えるのです。

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これを☖同歩だと、3五の角の可動域が狭まるので☗5八金右☖8五歩☗7八銀と進めます。以降は美濃囲いに組んで3五の角を圧迫していけば、自ずと先手が良くなります。この変化は、玉型と駒の効率に差が大きく出やすい将棋になりますね。

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後手としては、3五で角が不安定な配置になるくらいなら、☖同角から交換するほうが負担が少ないと言えます。しかし、☗同角☖同歩☗5三角と進めれば、先手の攻めは止まらないですね。

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4四に馬を作ることが出来れば、先手は手に困りません。ここで最も手強い抵抗は☖5五角☗6六銀☖6四銀ですが、☗7一角成☖同金☗5五銀☖同銀☗2二歩が痛打で、後手はまとめにくい配置を強いられることになります。

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これには☖同金と取らざるを得ませんが、☗4三銀や☗5三角☖6一金☗3一角成で敵陣に持ち駒を放り込んで行けば、攻めが存分に続きます。この局面は、こちらが一方的に攻めていることや飛車の働きに差が着いているので、先手が優勢だと言えるでしょう。

嬉野流 対策 最強

このように、嬉野流には早めに棒銀を見せて☖4四銀型を強要し、その銀を目標にする構想が有力です。嬉野流は大駒の活用に手間取ることが弱点の一つなので、速攻がとても有効になります。この速攻策は、嬉野流側が相当に変化しにくいので、紛れの余地が少ないことも嬉しいところですね。ぜひ、お試しください。

作戦の趣旨は、銀を負担にすること

先手は冒頭の局面を迎えることが出来れば、かなりの確率で☗4五歩と突くところまで誘導できます。先述したように、嬉野流側は☖4四銀型に組まないと棒銀を防げないからです。

嬉野流 対策 最強

嬉野流側が変化するとなると、ここで☖5五銀とかわす手が挙げられます。5三に角を配置しているので、☗2四歩から十字飛車を発動されても、銀損にはなりません。

とはいえ、基本的に先手は、この攻め筋を軸にして良さを求める姿勢を取れば良いでしょう。候補手は複数ありますが、最もリターンが大きい手は☗6六歩になります。

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自ら角道を止めるのは奇異に見えますが、これは☗2四歩☖同歩☗同飛☖2三歩☗5四飛☖6四銀と進んだときに、☗6五歩と突く手を用意した意味があります。これで☖6四銀を指せないようにすれば、相手は十字飛車の筋を防ぐ手立てがないので、銀の救助が難しくなります。例えば、ここで☖5二金と上がっても☗6五歩と突き、あとは☗2四歩→☗5四飛の筋を使えば銀が召し取れます。

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また、ここでは☖8五歩で攻めに活路を求める手段もありますが、先手は構わず☗2四歩と打ちましょう。☖8六歩☗同歩☖同角は気になりますが、☗4八玉とかわすのが冷静で、先手は攻め合い勝ちが望めます。

嬉野流 対策 最強

これも意外な対応に感じられるかもしれませんが、先手は8筋で被害を受けるので、そこから少しでも自玉を遠ざけるほうが安全になります。この理屈を踏まえると、むしろ☗4八玉が一番自然ですね。あとは、2筋の攻めに期待します。

嬉野流 対策 最強

ここで☖8七歩には、☗7七角☖同角成☗同桂☖8八歩成☗2三歩成☖7九と☗同金で問題ありません。先手は一時的には銀損ですが、2筋の突破が確定しているので、駒損はあとから回収できます。

かと言って、ここで☖2四歩と手を戻すと十字飛車が飛んでくるので、後手は手段に窮しています。このように、後手は5五に銀をかわしても、結局、この銀が負担になり、それが形勢を損ねる要因となります。嬉野流には、とにかく[☖4四銀型を強要→それを目標にする]というアクションプランで戦うことが大事ですね。

また、こうした知っておくと役立つ将棋の知識や定跡は、私のブログや note にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。

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1件のコメント

武田和浩 · 2024年5月4日 4:57 AM

嬉野流のことを角を引いて使うことぐらいしか知りませんでしたが、中央に出た銀を負担にする発想ですね🎵十字飛車が狙いになる点も参考になりました😃

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