終盤で逆転しやすい状況を作る考え方④

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【致命傷を負わないために攻める】

こちらは次に☗33角や☗71銀が厳しく、状況は芳しくありません。どう逆転を狙うかですが、本譜は☖67銀とあえて攻めを選びました。… pic.twitter.com/ErWrCRd3jm

— あらきっぺ (@burstlinker0828) June 9, 2024

将棋を指していると、ときには苦しい状況に追い込まれることもありますね。そして、勝率の高いプレイヤーは、そうした場面でも逆転の可能性が残る指し方を選んでいるものです。そこで今回は、どんなことを意識すれば逆転しやすい状況を作れるのか？　ということをテーマにして、解説を行いたいと思います。

手番を取りながら致命傷を避ける

改めて、上記ツイートの始めの場面を振り返ってみましょう。下図は相手が☗２二歩成と指し、寄せの手掛かりを作ったところです。

この局面は、こちらは［飛⇄金桂］の二枚替えの駒損であり、玉型の安全度にも差が着いています。したがって、形勢は芳しくありません。どのように逆転を可能性を見出すかが、こちらのテーマです。

また、次にこちらは☗３三角や☗６一金を打たれると詰めろが掛かるので、その脅威を緩和することは、早急に対処しなければならない問題と言えます。

さて、それらの攻め筋をケアするなら、☖５一玉と早逃げする手が挙げられます。こうして相手のと金から離れれば、自玉に詰めろは掛からなくなりますね。

ただ、こちらは☖５一玉で受けに回っても、相手の攻め筋を全てガード出来ないところが泣きどころではあります。具体的には、☗７一角が痛打。この角を打たれてしまうと、こちらは勝算がほぼ無くなってしまうのです。

☖７二飛には☗８二金が厳しいですし、☖８四飛と浮いても☗７二金で挟撃態勢を作られる手が痛烈です。８二の飛は攻防に働いていた駒なのですが、こうしてそれにアタックされると、どこに逃げても攻守片方の効力しか残せなくなります。すると、こちらは戦力が低下するので勝算が乏しくなるのですね。加えて、手番を取られながら挟撃態勢を作られていることも問題です。

冒頭の局面で☖５一玉は自然な選択ではありますが、どうもこれでは逆転が期待できなさそうです。

つまり、この局面は☗３三角や☗６一金も厳しいですが、実は☗７一角（もしくは☗７一銀）で８二の飛にアタックされる手のほうが、ダメージが深い一撃なのです。こちらとしては、それを防ぎつつ☗３三角や☗６一金も緩和する手段が求められています。

☗７一角の筋を防ぐには、８二の飛を移動させるのが賢明です。そうした考えから、筆者は☖６七銀と指しました。これが最も逆転できる可能性が高いと踏んだのです。

これは☖５八銀打からの詰めろになっているので、相手は攻めに転じる余裕はありません。よって、☗同金が妥当ですが、こうすれば８筋ががら空きになるので☖８七飛成で敵玉に迫りながら☗７一角の筋を防ぐことが出来ました。

なお、その局面で先手玉には詰めろが掛かっていないので、厳密には☗３三角などで攻められると負けです。ただ、☖８七飛成を放置するのはリスキーなので、☗７八銀と弾くのが第一感だった方は多いのではないでしょうか。実際、本譜もそれを指されたのですが、こちらは☖５八銀でさらに踏み込んでいきます。

これには☗同玉が必然ですが、☖７八竜で侵入することが出来ました。以下、本譜は☗６八金打☖８九竜と進みましたが、ここまで進んでみると、こちらは先述した問題を全て解決することに成功しました。

飛車を捌いたことで☗７一角の筋は利きませんし、☗６一金と打たれる攻めも消えています。☗３三角だけは残っていますが、☖４二銀と弾いておけば寄せられる心配はありません。上図はこちらの玉に詰めろは続きませんが、敵玉には☖３六桂が詰めろで入るので、攻め合い勝ちを挑める情勢になっています。ゆえに、こちらは逆転に成功しています。

そして、こうした状況が作れた一番の要因は、☖６七銀で攻めながら☗７一角の筋を緩和したからに他なりません。

このように、終盤で逆転を狙うためには、「手番を取りながら致命傷を避ける」意識が必要です。特に、攻防に働いている駒をアタックされる手は見た目以上に厳しい一撃になることが多いので、そうした手を許さないようにしましょう。

また、決め手を与えないことと同時に、手番も渡さないことも重要です。ゆえに、「ただ受けるだけ」のような手を選ばないことが肝要です。

リターンの大きい展開に誘導する

繰り返しになりますが、今回の題材では「手番を取りながら致命傷を避ける」ことが重要な部分でした。ゆえに筆者は☖６七銀と放り込んだのですが、この手を選んだ背景には、もう一つ別の理由もあったのです。

それは、「リターンの大きい展開に誘導する」ことですね。

冒頭の局面で☖５一玉は☗７一角でダメなのですが、正直なところ他の攻め方（例えば☗７五桂）でも粘れそうにない印象はあります。こうして相手を「攻める手を選べば、大体OK」のような状況にしてしまうと、ミスが出にくいのでリターンが乏しいと言えます。

逆に、☖６七銀から攻めて行くと相手は正確な受けが求められるので、こちらはリターンが大きい展開に持ち込めます。上図では☗６八銀で金を温存しながら堅さを維持されるとこちらが苦しいのですが、それ以外の合駒だと大いに形勢の差が詰まるので、逆転の期待値は割と高いと言えます。このように、単純な良し悪しではなく、リターンが大きそうな展開に誘導することも、逆転を狙う上で大事な要素ではないかと思います。

また、こうした逆転のノウハウは他にも種類があります。よろしければ、以下の記事も併せてご覧いただけますと幸いです。