どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【寄せに向かうときの考え方】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) July 5, 2024
相手の穴熊をどう攻略するかという局面。こちらは攻め駒を要所にセットしてはいますが、現状では攻め駒の数が少し足りません。… pic.twitter.com/mGlsIFMFSJ
将棋は終盤戦に入ると、基本的には敵玉を寄せに向かう段階に入ります。ただ、このとき寄せの準備が整っていないと、相手の囲いを攻めても上手くいきませんね。ただ、具体的に何を持って寄せの準備が整っているのか? ということを判断するのは、意外に簡単ではありません。
そこで今回は、寄せに向かうときの考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。
基本原則は「四枚の攻め」
改めて、上記ツイートの始めの場面を振り返ってみましょう。下図は相手が☖6三同金左と指し、こちらの馬を取ったところです。
この局面は、駒の損得は無いものの、玉型は相手の方が堅いですね。また、駒の効率もこちらは1九の香が残っているのに対し、相手の桂香は見事に捌けています。それらの要素から、少しこちらの形勢が悪い情勢と言えます。
とはいえ、決して大差がついている訳ではないので、ここでいかにして踏み止まるかがこちらのテーマだと言えるでしょう。
さて、こちらは受けに回るなら☗5八金で垂れ歩を払うことになりますが、☖5七歩☗6八金寄☖4九角と迫られると、次の☖5八歩成が金取りになるので、逆に攻めを加速させてしまいます。したがって、ここは攻めに転じるのが得策と言えるでしょう。
そうなると、☗5一角で寄せに向かうのが一案です。ただ、これは☖5九歩成☗6二角成☖同金引と応じられると、形勢に差をつけられてしまいます。
こちらは飛車を入手することは出来ましたが、相変わらず相手の穴熊は堅陣です。そして、こちらは次に☖5七歩のと金攻めが痛烈ですね。これは駒損になることが確定しているので、こちらは非勢がより明らかになります。ゆえに、形勢に差が広がってしまうのです。
加えて、上図の進行はもう一つ問題があります。それは、こちらは攻め駒の数が増えていないことです。
冒頭の局面でこちらの攻め駒は、[1一の竜・8六の香・持ち駒の角]の三枚です。上図は持ち駒の角が飛車に変わっただけであり、攻め駒の数に違いはありません。そして、三枚の攻めだと金銀三枚の囲いを攻略するには戦力不足です。この場合は底歩によって竜の力も削がれているので、尚更ですね。
それを踏まえると、冒頭の局面でこちらが行わなければならないことが見えてきます。そう、ここはまず攻め駒を増やすことから始めないといけないのです。したがって、筆者は☗3四角と指しました。これが寄せの準備を進める一着になります。
これは桂取りと☗4三角成を狙っています。☖5四角と打っても☗5五歩で駒が取れるので、相手はこの狙いを同時に防ぐことは叶いません。ゆえに、☖5九歩成で攻め合いを選ぶのが妥当でしょう。ただ、そうなると☗4五銀で戦力を補充できます。
後手は☖4五同銀☗同角☖5八銀と食いつくのが自然ですが、こちらも☗7五桂で相手の金を剥がしに行きましょう。
ここまで進むと、こちらは攻め駒の数が五枚に増えており、大いに攻めが手厚くなったことが読み取れます。こうなると、相手の囲いを攻略する目途が立ちますね。単に☗5一角と打った失敗例と比べると、その違いは歴然です。
なお、形勢としては玉型に差があるので、厳密には少し苦しい状況ではあると思います。しかしながら、こうした競り合いに持ち込めば、逆転のチャンスは大いにあるでしょう。
このように、敵玉の寄せに向かう際には、まず自軍の攻め駒の数に注目することが大切です。基本的に三枚の攻めでは戦力が足りないので、四枚確保することを心掛けましょう。そうして、きちんと準備を整えてから寄せに向かうほうが、結果的には寄せがスマートに進むことが多いものです。「急がば回れ」という訳ですね。
敵の攻め駒を削ることも意識する
繰り返しになりますが、今回の題材では攻め駒を四枚確保することが大事な部分でした。それを踏まえると、冒頭の局面では☗9五歩と伸ばして端攻めの準備を整えるのも一考の余地があります。
ただ、この手はある問題を抱えている側面があるのです。
相手はもちろん、☖5九歩成でと金を作ってきますね。以下、☗9四歩☖同歩☗9三歩☖同香☗8五桂☖5七歩が予想される進行です。
これもこちらは四枚の攻めを実現できていますが、☗3四角と打った変化と比べると、違いがあることにお気づきでしょうか?
その違いとは、相手の攻め駒の数です。先程は4五の桂を取っていたので、☖5七歩でと金を作られる心配はありませんでした。けれども、この局面では桂が生きているので、その攻めを実現されていますね。と金で相手の守備駒を剥がすほうが効率が良いことは言うまでもありません。ゆえに、この変化はこちらが損なのです。
つまり、寄せの準備を進める際には攻め駒を四枚以上確保することが基本なのですが、その際には敵の攻め駒を削りながら補充すると、なお良いことが分かります。こうしたことも意識しておくと、終盤の入口で事を有利に運ぶことが出来るのではないでしょうか。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2024年7月22日 10:27 AM
いい角打ちのように思いました!💫