雁木を指す上で覚えておきたい有力な構想

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【雁木の有力な構想】

雁木は☖52金型に組むのが一般的ですが、相手の駒組みによっては図のように☖62金型に構えるのも有力です。… pic.twitter.com/aRTPUNnUw3

— あらきっぺ (@burstlinker0828) December 18, 2024

雁木は先後に関わらず採用できるので、使い勝手のよい戦法です。また、この戦法は駒組みのバリエーションが非常に広く、使える構想が多いことも特徴の一つ。ゆえに、多くの構想を知っているほうが相性の良い指し方を選べるようになりますね。

そこで今回は、雁木を指す上で覚えておきたい有力な駒組みをテーマにして、解説を進めたいと思います。

先攻しやすい状況にしておく

今回は、上記ツイートの少し手前の局面から解説します。図は相手が☗７九玉と指し、玉型を整えたところです。

こうした局面は、［矢倉 vs 雁木］という構図において頻出しやすい形の一つですね。似たような局面を経験された方は、少なくないのではないでしょうか。

さて、こちらは駒組みが完全には整っていないので、もうしばらくは整備が必要です。例えば☖５二金と上がり、その後は☖４一玉→☖３一玉という要領で玉を囲う指し方が考えられます。その場合、下図の局面を迎えることが予想されます。

お互いに堅い囲いが完成し、立派な形になっていますね。以降は、こちらは☖８一飛や☖５四歩、相手は☗５五歩→☗５六銀などで陣形を整えるのが一案になります。これは一局の将棋であり、互角の進行と言えるでしょう。

ただ、上図のような進行は、雁木側には一点だけ不本意なところがあります。それは、右桂の活用が難しいことですね。

雁木は右桂が活用しやすいことが利点の一つなのですが、上図は４六の角の睨みが強力で、☖６五歩が突けません。それを実行する為には☖８一飛→☖６二金のような整備が必要なのですが、上図から５二の金を寄ると手損になりますし、囲いも薄くなるのでスマートな構想とは言えません。

こうした背景を踏まえると、冒頭の局面では右金を５二へ上がらない方がクレバーであることが見えてきます。ゆえに、筆者は☖６二金と指しました。こちらの方が、より得を追求した構想になります。

基本的に、雁木は右金を５二へ配置することが多いので、ここに据えるのは意外に感じられる方もいらっしゃるかと思います。ただ、雁木は元よりバランスの良さを重視する戦法なので、堅さを追求する必要性が乏しい側面があります。ゆえに、こうした指し方が成立しやすいのです。

この後は、☖８一飛→☖５四歩→☖５二玉という要領で、陣形を充実させましょう。これが☖６二金型と相性の良い駒組みになります。

こうして中住まい系の雁木にすれば、金銀四枚で玉を守る格好になるので、安全度を確保した玉型が作れます。また、☖６二金型に構えたことで、７三の桂に紐が付いていますね。それはつまり、☖６五歩から仕掛けやすい利点があることを意味します。

先手は総矢倉を作るなら☗５七銀になりますが、それを指すと☖４二角→☖６五歩の仕掛けを誘発します。☖６五歩が取れないと６筋に位を取られてしまうので、矢倉側としては面白くありません。

それを警戒するなら☗３七角などで☗４八銀型を維持することになりますが、こちらは☖１四歩☗１六歩☖４二角と引き、左桂を使う準備を進めましょう。こうした指し方ができるのも、［☖５二玉・☖６二金型］に組んだ恩恵ですね。

相変わらず☗５七銀には☖６五歩があります。先手がそれを警戒しながら玉を固めるなら☗５九銀になりますが、☖３三桂☗６八銀上☖６五歩☗同歩☖同桂☗６六銀☖４五桂で二枚の桂を活用すれば、雁木が不満の無い進行になります。この進行はスムーズに先攻できた上に、駒効率が抜群に良いですね。

先手が☖４五桂の攻め筋を警戒するなら☗４六歩☖３三桂☗４七銀と組むのが考えられますが、これには☖５三角と上がって待機するのが後手番らしい指し方になります。

この後は、［☖４二玉⇄☖５二玉］の往復で待つのが一案です。こちらは後手番なので、千日手は歓迎ですね。先手は打開する必要がありますが、こちらは隙が全く無い布陣なので、動くのは容易ではありません。

また、こちらはいつでも☖６五歩から仕掛ける手段も持っているので、相手は絶えずそれに備えた指し方をする必要もあります。上図は千日手以上の局面を作れているので、雁木が満足のいく組み上がりだと言えるでしょう。

こうした進行を見ると、☖６二金型の構想を選んだ恩恵が良く分かります。

雁木にとって右側の金は５二に配置するケースが多いですが、場合によっては☖６二金型に構えるのが得策になることもあります。特に、これは相手が守備的な構えを採ってきたときに有効になるので、そうした指し方の際には、積極的に採用したいところです。また、これを踏まえると、☖５二金と上がる手は出来るだけ保留する方が、駒組みの幅が広くなるとも言えますね。

自玉の位置を活かした指し方をしよう

上記に述べたように、雁木は右金の配置が一つの考えどころになります。そして、実はこの駒以上に配置を敏感に考慮しなければならない駒が存在します。

その駒とは、玉ですね。

例えば、雁木は早期に☖４一玉型に構えるケースも多々あります。そして、この配置の場合は、先述した☖６二金型は得策になりません。これは玉と金の位置が離れていることが一番の理由ですね。

また、こちら側に玉を移動する将棋になると、３筋が手薄になった際、少し都合が悪い側面があります。ゆえに、☖３三桂→☖４五桂と左桂を活用する指し方とのシナジーが抜群とは言えません。こうした☖４一玉型の場合は、７・８筋方面からガンガン攻める展開にした方が良いでしょう。

このように、雁木は玉の配置によって、有力な構想が様変わりする性質があるのです。ゆえに、自分の玉の位置と相性が良い構想をきちんと把握することが、この戦法を使いこなす鍵と言えます。そうしたことを意識して雁木の定跡を勉強したり実戦を指すと、学習効果がより高まるかと思います。

また、こうした知っておくと役立つ将棋の知識や定跡は、私のブログや note にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。

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