どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【升田式石田流の対処法】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 11, 2025
相手が☗66銀と繰り出したところ。こちらは穏便に駒組みを進めても一局ですが、良さを求めるなら☖54角と打つのが機敏な一着です。… pic.twitter.com/uMX9JR8OjK
升田式石田流という戦法は、攻め味が強いので居飛車は漫然と駒組みを行うと、すぐに主導権を取られてしまうことが多々あります。そのため、この戦法を相手にしたときには、なるべく敵に攻めの形を作らせないことが攻略の鍵となります。今回は、それを実現する構想をテーマにして、解説したいと思います。
敵の飛車の可動域を落とす
今回は、上記ツイートの少し手前の局面から解説します。図は振り飛車が☗7七銀と指し、銀を活用したところです。

こうした局面は、升田式石田流を相手にした際に頻出しやすいですね。同じ局面を経験された方は多いのではないでしょうか。
さて、こちらは囲いの金が離れているので、上図では☖5二金右とくっつけるのは自然です。ただ、結論から述べると、ここはそれよりも優先すべき手があります。具体的には☖9四歩と突くのが大事な一着ですね。

このタイミングで端歩を突くのは、意味を知らないと違和感を覚える一着かと思います。ただ、居飛車はこれを優先すると、相手の理想形を阻むことが出来るのです。
振り飛車は攻めの形を作りたいので、☗6六銀と活用するのが自然です。対して、居飛車は☖5四角と打ちましょう。これが升田式石田流に対して相性の良い一打になります。

なお、相手が銀を6六に出た瞬間に打つのが大事で、別のタイミングで打ってしまうと、飛車を左辺へ移動されるので効果が乏しくなります。☗6六銀と上がった瞬間なら、その心配はありません。
また、この局面を迎えると、前もって☖9四歩を指していた理由が見えてきます。もし☖9三歩型の状態で☖5四角を打っていると、☗9六飛と逃げられて空振りに終わります。しかし、上図なら☖9五歩と伸ばして飛車が窒息するので、それが利かないのは言うまでもありません。

振り飛車は飛車を横へ逃がすことが出来ないので、上図では☗7七飛と引くのが必然です。これも居飛車は打った角が空振りになっているようですが、相手の飛車を六段目から下げたということが、実はすこぶる高い価値があります。そのため、この場合は自陣角が空振りに終わることはありません。
相手の飛車を7七へ移動させた後は、☖4四歩→☖4二金で陣形を整備しておきます。こうすれば☗5五銀で角を追われても、4三へ引けるので安心ですね。

さて、振り飛車としては、繰り出した銀をさらに前進させたいところです。そうなると、2六に角を設置して☗4四銀を狙う手が考えられます。しかし、現状の配置で銀交換になると、☖7六銀から飛車を詰まされる恐れがあります。よって、振り飛車はひとまず☗6六歩と突いて飛車の呼吸を楽にしてから☗2六角→☗4四銀を狙う必要があります。
ただ、居飛車としては、その手順なら時間が掛かるので、そう怖い攻めではありません。具体的には☖5二金上と整備した後、8筋の歩を交換しておけば問題ないでしょう。

こうした進行になると、彼我の飛車の働きの差が顕著です。居飛車側は要所に据えており、飛車先の歩も交換できています。対して、振り飛車側はそうではないことが痛いですね。
上図では☗4四銀と出ることが出来ますが、自然に☖同銀☗同角☖3三桂と応対すれば問題ありません。こちらは、やはり☖7六銀と打って8筋を突破するのが楽しみです。上図はこちらの方が良い攻撃態勢を作れていることが大きく、居飛車が作戦勝ちと言えるでしょう。
こうして一連の進行を見ると、こちらは5四に角を打ち、敵の飛車の働きを悪化させたことで作戦勝ちに持ち込めたことが分かります。

升田式石田流という戦法は、飛車を六段目に据えるのがデフォルトです。それを踏まえると、その場所から敵の飛車を移動させれば、相手の構想が破綻するので戦いを優位に進めることが出来ます。ゆえに、この自陣角がヒットするという訳ですね。この構想は非常に優秀なので、ぜひお試しください。
銀と桂を両方攻めに使わせない
ところで、今回の題材ではメインテーマではなかったので多くは言及しなかったのですが、升田式石田流を相手にした際には、「敵の銀桂を両方とも攻めに使わせない」こともポイントの高い行動です。

例えば、もし冒頭の局面から5四に角を打たない指し方を選ぶと、上図のような状況になることが予想されます。この局面の居飛車は作戦負けという訳ではありませんが、相手に銀桂を二枚とも効率的に活用されているので、面白い進行とは言えない側面があります。

逆に、成功例のほうは☗7七飛型を強要させることで、8九の桂の活用を妨害することが出来ています。こうなると相手はシンプルに使える攻め駒が一枚減るので、攻撃力が低下します。ゆえに、この進行は居飛車の条件が良いのです。
このように、升田式石田流を相手にした場合は、攻め駒の銀桂を両方とも使わせないことが大事です。そうした点を心掛けると、相手の無理攻めを誘える将棋になりやすいので、事が都合よく運びますね。
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