みなさんこんにちは。馬場です。

 今回は、普段指導をするなかで生徒のみなさんの将棋を見ていてちょっと思うところがあったので、それについて書いていこうと思います。

 話の始まりはこんな局面から。

 これは角換わり早繰り銀の定跡の変化の一つに現れる局面です。

 この変化自体は古くから知られていて、長い間ずっと先手が指せると見られていました。

 ところが最近になって、この局面で後手に驚くべき好手があることが発見されて、今ではこの変化は後手良しとされています。

 そもそもどうやったらこんな局面になるのかと言いますと、事の始まりはこんな局面です。

 角換わりの将棋で、先手の早繰り銀に対して後手も早繰り銀で対抗した形ですね。

 先手としては銀を繰り出して準備OK!ということで早速仕掛けていきたいところですが、ここでいきなり▲3五歩といっても△1五角の王手飛車の筋があるのでうまくいきません。

 というわけで先手は▲1六歩とその筋に備えます。後手も全く同じ話で、△7五歩と仕掛けてもうまくいきませんから、△9四歩とします。

 これでようやく仕掛けの準備ができた、ということで先手はいよいよ▲3五歩と仕掛けていきます。

 この仕掛けに対しては、後手は△3五同歩▲同銀△8六歩▲同歩△8五歩と継ぎ歩で反撃するのが手筋です。

 これを▲同歩と取ると△同飛で十字飛車。というわけで先手も無視して▲2四歩と攻めていきます。

 以下定跡手順をザーッと並べると、△2四同歩▲同銀△5五角▲4六角△同角▲同歩△2四銀▲同飛△2三歩▲2八飛△8六歩と進みます。

 先手はここで▲8八歩と受けるようでは元気がないということで、勢い▲8三歩△同飛▲8四歩△同飛▲6六角と反撃します。

 ここから△8二飛▲1一角成と進んで、冒頭の局面になりました。

 さてこの局面、後手は馬を作られた上に香損になっているのでなんとか取り返したいところです。

 そんなわけで当然△8七歩成としていきたいのですが、これには▲同金△同飛成に▲8八香がピッタリの一手になって先手良しです。

 2八の飛車がよく利いていて、後手の竜がつかまってしまっています。これでは後手失敗です。

 これがあるので後手は△8七歩成とできないわけですが、できないようでは後手に適当な手段もなく、この変化は先手良し、というのが昔からの結論でした。

 ところが比較的最近になって、この結論をひっくり返してしまうすごい一手が発見されました。

 ▲1一角成の局面で、△3七銀!

 タダのところにいきなり銀を放り込むすごい手ですが、これが素晴らしい一手でした。

 先手は▲同桂と取るのが普通ですが、△3六歩が厳しい一着になります。

 このまま△3七歩成とされてしまってはひとたまりもありませんし、かといって▲4五桂と逃げると△3七角で王手飛車。

 というわけで先手は▲3八歩と受けるぐらいですが、これで2八の飛車の横利きが消えたのが後手の真の狙いで、今度こそ△8七歩成とすることができます。以下▲同金△同飛成となっても、今度は後手の竜はつかまりません。

 これは飛車先を突破できたのがさすがに大きく、後手大成功です。

 というわけでこの変化は後手良し、が現在の結論となっています。

 

 さて、長々と解説してきましたが、「そんなのとっくに知ってるよ」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。櫻井将棋塾の生徒の中にも、この定跡をすでに知っている人は結構いるみたいですね。

 でも、ちょっと待ってください。

 本当にこの定跡を理解していますか?

 よくあることですが、特に角換わりの変化ではほんのちょっとだけ定跡と形が違うだけで結論が変わってしまうということが結構あります。ここで紹介した定跡も、なんとなく△3七銀という符号だけ覚えて、なんとなく定跡と似た手順をなぞってみた、というのでは、実戦ではとんでもない目にあうかもしれません。

 もう一度お聞きします。

 本当に、この定跡を理解していますか?

 次回は、この「なんとなく」で定跡を覚えた気になっているということがどれだけ危険なことか、お話ししていきましょう。

カテゴリー: 戦型

1件のコメント

田中英一 · 2024年1月18日 9:46 AM

難しいです。でも、面白い。

コメントを残す

アバタープレースホルダー

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です