どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【両取りには受けずに敵玉へ迫れ】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 17, 2023
こちらは5三の銀と3五の角が同時に狙われていますね。両方守ることは無理なので、ここは☖86歩☗同銀☖64桂が賢明です。
どのみち駒損が防げないなら、攻めに転じた方が得策です。最終図は玉の安全度が違うので、こちらが優勢ですね。#今日の将棋ウォーズ pic.twitter.com/gFt8VO2yaT
将棋の格言には「両取り逃げるべからず」というものがありますね。ただ、相手に両取りを掛けられたとき、普通に逃げた方が良い場合もあるんだけどな……と感じられている方は多いと思います。
そこで今回は、この格言を使いこなす考え方をテーマにして、解説を進めていきましょう。
「両取り逃げるべからず」は終盤戦の格言
具体的な解説に入る前に、まず大前提として述べておくことがあります。それは、「両取り逃げるべからず」という格言は、終盤戦において有効だということです。
基本的に、中盤の段階で両取りを掛けられたら、なるべく被害が小さく済む対応を取る方が賢明です。これは、中盤戦だと駒の損得のウェイトが重く、そこで差をつけられると形勢が悪化しやすいことに起因します。
しかし、終盤戦に入ると駒の損得よりも玉の安全度の方が重要な評価軸となるので、駒を捨てるデメリットが薄くなります。ゆえに、逃げなくても良いという理屈が成り立つのですね。
その前提を踏まえて、改めて上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗4三とと指し、銀取りと角取りを同時に掛けたところです。
この局面は、互いに敵玉を攻めるための戦力が十分にあり、これから寄せを実行できる状況です。まさに終盤戦の幕が開けた場面ですね。
さて、ここまでの説明を踏まえると、こちらは両取りを受けてはいけないことは想像がついていると思います。が、まずはあえて駒の損得を重視する手を見ていきましょう。具体的には、☖2六角ですね。
この場合、相手は☗5三と☖同銀☗6四歩と攻め掛かって来ることが予想されます。
①☖同金は☗4四銀。
②☖同角は☗6五歩☖5三角☗5二銀。
いずれも、相手の厳しい攻めが続くことが読み取れます。上図でこちらは[角桂⇄銀]の駒得ですが、終盤において一方的に攻め込まれる展開になると、概ね勝てないとしたものです。ゆえに、この変化は失敗ですね。
上図の変化では、☖2六角と逃げた手が価値の無い手になっていることに注目して頂きたいです。局面が中盤戦であれば、これは「価値の高い駒を守る」意味があるので、一理ある選択でしょう。しかし、終盤戦だと速度が全く足りないので、「攻め合い負けを招く手」になってしまうのです。
こうした「攻め合い負けを招く手」を指さないようにすることが、「両取り逃げるべからず」という格言が一番伝えたいことなのです。
では、こちらは両取りを逃げないで、どんな行動を取れば良いのでしょうか。実を言うと、これは既に、答えを暗に述べています。
繰り返しになりますが、「両取り逃げるべからず」は、終盤で攻め合い負けを喫しないための格言です。攻め合いを制するには、当然ながら相手よりも速い攻めを繰り出すことが必要です。
つまり、終盤で両取りを掛けられた場合は、それを無視して敵玉を攻めれば良いのです。なので、筆者は冒頭の局面から☖8六歩と指しました。玉頭は急所になりやすいので、これは非常に速い攻めですね。
これを☗同歩だと、☖8五歩と継ぎ歩します。以下、☗同歩☖同桂☗8六銀には☖6六桂と追撃しましょう。最終手の☖6六桂に☗同金なら☖5七角成がありますね。これは角を逃げずに踏み込んだ恩恵が顕著に出ている変化です。
ただ、相手は☖8五歩を無視すると☖8六歩の取り込みが強烈なので、この歩を放置するのも現実的ではありません。
このように、☖8六歩に☗同歩と取ると継ぎ歩がすこぶる厳しい攻めになります。ゆえに本譜は☖8六歩を☗同銀と取ってきたのですが、この場合は7六が弱体化したので、☖6四桂が絶品の一着になります。
これは☖7六桂を狙いつつ、失敗例の変化で示した☗5三と☖同角☗6四歩という攻め筋を防いだ意味があります。攻防手になっているので、非常に味が良いですね。
相手は☖7六桂を喫すると、自玉が途端に薄くなります。ただ、☗6六金は☖5七角成がありますし、☗6七銀は☖4九角がうるさい追撃となります。相手はピッタリとした受けが難しいですね。
この局面は、駒得を維持した状態で先に敵玉へ迫る形に持ち込んだので、こちらが優位に立っています。相手は開き直って☗3五竜で角を取る手も一案ですが、☖7六桂☗7七玉☖6四銀と進めれば、玉の安全度が大差なので、こちらの一手勝ちが期待できるでしょう。
こうした変化を見ると、両取りを無視して攻め続けることが賢明な選択になることがよく分かりますね。
このように、「両取り逃げるべからず」という格言は、終盤戦で適用すると抜群の効果を発揮します。これは「終盤は駒の損得よりも速度」という格言とリンクしているので、それと合わせて意識すると、良い判断が出来るようになるでしょう。
とにかく敵玉に向かって攻めることが急所
先述したように、冒頭の局面で筆者は☖8六歩から相手の矢倉を攻略しました。ちなみに、あの局面では他にも有力な攻め方があります。
例えば、☖8六桂と放り込むのも急所を突く一着ですね。
これには☗同歩が妥当ですが、そこで☖6九角と設置します。8筋の歩を上擦らせてから角を打ち込めば、次の☖8六歩が激烈に厳しいですね。この進行も、こちらの一手勝ちが期待できるでしょう。
☖8六歩や☖8六桂に共通していることは、相手の玉頭から襲い掛かっていることです。囲いを崩すアプローチは複数の手段がありますが、中でも「玉頭」や「コビン」を攻める手は、スピーディーな攻めになりやすい性質があります。なぜなら、それらの攻め方はダイレクトに敵玉へ迫れるからですね。速い攻めを繰り出したい場合は、そうしたことを心掛けると良いでしょう。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2023年10月21日 10:05 AM
両とりは、攻撃というより駒得の意味が大きいですものね🎵
玉頭の継ぎ歩は、思った以上に厳しく早い攻めなのですね✨