どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【苦しい将棋を逆転させる考え方】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) September 8, 2024
こちらは桂損の代償が乏しく、形勢は芳しくありません。こうした場合は局面を収めると損失だけが残るので、激しく戦うことが絶対です。… pic.twitter.com/J5SYLDc9ws
将棋を指していると、ときに少し不利な局面に直面することもあるでしょう。そして、勝率を高めるには、そうした状況で崩れず形勢を引き離されない技術がとても大事になります。今回は、そうしたことをテーマに解説を進めていきましょう。
損失がある状況下では、局面を激化させる
改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☗7五飛と指し、金取りを掛けたところです。
この局面は、互いの玉型は同じくらいの安全度ですが、こちらは桂損しています。加えて、7三の金もあまり良い位置ではなく、金の効率においてもビハインドを抱えています。それらの要素から、上図はこちらが苦しい将棋だと言えるでしょう。
ただ、決定的な差が着いている訳ではないので、いかにして逆転の綾を残すかが、こちらに課せられた命題ですね。
何はともあれ、こちらは7三の金取りを防ぐ必要があります。平凡に指すなら、☖7四歩☗2五飛☖2四歩☗2九飛という受け方が一案です。
ただ、結論から述べると、この受け方では自ら望みの乏しい局面を作ってしまうことになるのです。
この進行は、一時的に安全を確保することは出来ていますが、冒頭に述べたように、こちらは「桂損」と「7三の金の配置の悪さ」という二つの問題を抱えています。こうした損失がある状態で局面を丁寧に収めてしまうと、それがクローズアップされることとなるので逆転の綾が消えてしまいます。こうした指し方は、自分が駒得していたり、駒の効率でアドバンテージがある場合に有効なのであり、そうではない場合は逆の行動を取らないといけません。
そうした背景があったので、冒頭の局面で筆者は☖8四角と指しました。これが最も逆転の可能性が高いと踏んだのです。
傍目には妙な場所に角を投資していますね。確かに、それはその通りなのですが、これは7筋に歩を使わないことで、攻めの手段を残した意味があります。繰り返しになりますが、こちらは局面が収まってしまうと損失だけが残るので、過激な局面になるほうが歓迎です。そのために、攻め味を残すという訳ですね。
これには☗2五飛が妥当な逃げ場ですが、ひとまず☖2四歩で、飛車の動向を尋ねます。
相手は飛車を逃げるよりありませんが、どこへ逃げても☖7六歩☗同銀☖6六桂という攻めが来ることを想定しないといけません。王手金取りが掛かってしまうと、実戦的には相当に嫌らしいですね。この攻めを見据えていたので、こちらは8四に角を打つ受けを選択したのです。
ゆえに、本譜は☗8五飛と捻った対応を見せてきました。これは☖7六歩に☗6六銀を用意したトリッキーな受けですが、ここに飛車を逃がしたことで☖5七角成☗同金☖8五飛という素抜きが発生しました。王手金取りの攻め筋をチラつかせたことで、結果的に相手のミスを誘えた形となりましたね。
こちらは相変わらず「桂損」と「7三の金の配置の悪さ」を改善できていませんが、飛車を入手したことで彼我の玉の安全度には著しい差が着きました。そして、こうして局面が終盤戦を迎えつつあると、駒の損得よりも玉の安全度のほうが価値が重くなります。ゆえに、上図はこちらが逆転に成功した格好となりました。
逆転に成功した一番の要因は相手のミスがあったからですが、それを引き寄せた遠因には、やはり☖8四角という受けを選んだことが挙げられるでしょう。
このように、不利な局面を乗り切るためには、「自分の損失がクローズアップされない展開を目指す」ことが大事です。そのためには局面を丸く収めず、過激な状況に持ち込む手を選んでいく必要があります。上図の☖8四角みたく、なるべく攻め味を残す手を意識的に考えると、そうした状況に持ち込みやすくなるかと思います。
効率の悪い駒は捌かせない
ところで、今回の題材の相手は、一体何が問題だったのでしょうか。☖8四角以降、何を指しても自陣に脅威が及んでしまうので、対応が悩ましかったことは間違いありません。ただ、そうした状況をクリアできれば、勝率がぐんと上がることは確かですね。という訳で、ここからは逆の立場になって、正着を考えてみたいと思います。
結論から述べると、☖2四歩で飛車を追われたとき、☗2七飛と引いておくのが賢明な一着でした。
あえて三段目に飛車を引くのが深謀遠慮な一着です。代えて☗2九飛も考えられるのですが、ここに飛車を配置するほうが、自陣の耐久度を高めることが出来ます。
相手はもちろん、狙い筋である☖7六歩☗同銀☖6六桂を指してきますが、素直に☗6八玉☖7八桂成☗同玉と応じておきましょう。
この進行は、あっさり金桂交換を甘受するので違和感を覚えるかも知れません。しかし、先手は元より桂得しているので、上図でもまだ駒得をキープしています。
そして、上図でもっと注目して頂きたいのは、8四の角が攻めに使いにくくなっていることです。先程の失敗例では、飛車を失ったことも然ることながら、8四の角を捌かれていることもネックでした。ただ、上図ではそれを捌く手段が難しいので、相手は効率の悪さに拍車が掛かっているのです。ここで☖6六金と攻められても☗7七歩で差し支えありません。こうしたときに、☗2七飛型に配置した恩恵が出てきます。
このように、相手が効率の悪い場所に駒を打ってきた場合は、なるべくそれに触らない姿勢を取るのが賢明です。特に、大駒を打ってきた場合はそれを実行すると費用対効果が高いですね。こうしたことを心掛けると、優位を維持するプレイングが出来るようになるかと思います。
また、今回のメインテーマである不利な局面を乗り切るために意識したほうが良いことは、他にもあります。詳しくは、以下の記事で解説しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。
1件のコメント
武田和浩 · 2024年10月20日 8:08 PM
角打ちも飛車引きも彼我の状況の認識があってのこと!💫それがわかるかどうかがやっぱり大事なんだと改めて思いました🎵