どうも、あらきっぺです。
今回の題材は、こちら。
【終盤で役立つ受けの手筋】
— あらきっぺ (@burstlinker0828) February 27, 2025
こちらは攻めるなら7七の桂を取って、☖66桂を打つのが最速です。ただ、それを指す前に☖51歩と竜取りに歩を打っておくと、より得をすることが出来ます。… pic.twitter.com/rnNTDrQuR4
将棋は終盤戦に入ると、基本的には敵玉の寄せに向かう段階に入ります。ただ、寄せに向かう前はいろいろとやるべきことがあり、それを怠ると芳しくない状況に直面することが少なくありません。
そこで今回は、寄せに向かう前に行うことをテーマにして、解説を進めたいと思います。
敵の大駒の力を弱める
改めて、上記ツイートの始めの場面を振り返ってみましょう。下図は相手が☗5二同竜と指し、こちらの金を取ったところです。

この局面は、こちらの玉が広いことや手番を握っていることが大きく、こちらが優位に立っています。どのように具体的な勝ち筋に入れるかという段階ですね。
こうした競り合いの終盤では、シンプルに寄せに行って勝ち切れるなら話は明快です。例えば☖7七角成と指し、次の☖6六桂に期待するのは自然ですね。
ただ、これを選ぶと、☗9二歩と打たれたときが問題です。

☖同香と応じると、☗9一銀と打たれて攻めが加速します。したがって、これは放置するほうが良いのですが、次の☗9一歩成が詰めろなので、こちらは一気に自玉の危険度が上がってしまいます。
一応、上図は☖6六桂☗9一歩成☖9三玉と進めて上部の広さに期待すれば旗色が良い進行ではありますが、囲いの駒をボロボロと取らせる順なので、好んで選ぶべき進行ではない印象です。できれば、もう少しスマートな勝ち方を選びたいですね。
そうした変化を踏まえると、冒頭の局面では☗9二歩の筋に備えた手を選ぶほうが賢明であることが見えてきます。それゆえ、筆者は☖5一歩と指しました。これが局面を明快な状態に導く一着になります。

ご覧のようにタダで取られてしまいますが、この竜をどこかに移動させれば、こちらは確実に条件が良くなります。例えば☗3二竜など横へ移動すると、☖5二香とブロックする手が生じるので、こちらは玉の安全度が飛躍的に上がります。
また、☗6一竜と潜るのは☖7一金と引く手がピッタリ。相手は☗9二歩☖同香☗9一銀の筋が使えなくなっているので、こちらは手番を取りながら敵の狙いを消すことに成功しています。

こうした事情があるので、上図で相手は☗5一同竜と応じるのが関の山です。しかし、これも竜の横利きが二段目から逸れたので、☗9二歩☖同香☗9一銀の筋が消えることになりました。よって、こちらは安心して☖7七角成で桂が取れます。そこから☗6一銀で金を狙われても、堂々と☖7一金と引けば問題ありません。こうして金が引けるのも、敵の竜を5二から移動させた恩恵ですね。

ここで☗7二歩を打たれても、次の☗7一歩成が詰めろにならないので、こちらは☖6六桂と打てば一手勝ちが約束されます。上図で相手は☗9四歩と打つのが最も効果的な攻めですが、☖6一金☗同竜☖7二銀☗5二竜☖6一香で自玉を固めれば、こちらは寄りつく心配がありません。この局面は将来の☖6六桂が間に合うことが約束されているので、こちらが勝勢に近い状況と言えます。
こうして一連の手順を見ると、こちらは敵の竜を移動させたことで、大いにポイントを稼いでいることが読み取れます。

敵玉を寄せるためには、当然ながら敵陣周辺を攻めることになります。ただ、そうして一度寄せを始めると、受けに回る余裕が無くなることが多々あります。そして、そのとき自玉が危険な状態であれば、「寄せに出る」という行為が自分の首を締めることになる恐れもあります。
ゆえに、敵玉を寄せる直前は、一回、受けの手を指して安全度を高めておくのが大事です。特に、敵の大駒の働きを悪化させる受けは価値が高いですね。こうした手を逃さないようにすれば、終盤におけるプレイングの安定感が劇的に向上するかと思います。
要の駒を安定させることが大事
繰り返しになりますが、今回の題材は「寄せに行く直前に自玉の安全度を高める」ことが話の肝でした。その理屈を踏まえると、冒頭の局面では他の手段も考えられます。例えば、☖7一香という勝ち方も有力ですね。

これは7二の金を補強することで、☗9二歩☖同香☗9一銀の筋を防いだ意味があります。手番を取れていないので☖5一歩よりも劣る感はありますが、自玉の安全度を高めている趣旨は同一です。これも☖7七角成→☖6六桂が間に合う状況なので、こちらの優位は揺るがないでしょう。
☖5一歩や☖7一香は、どちらも7二の金の安定感を高める受け方です。つまり、前者は竜の利きから逃れることで、後者は金の紐を補強することでそれの安定感を高めています。このように、自玉の安全を図る際には、守備の要の駒を安定させることがコツの一つです。こうしたことを意識して寄せの準備を進めると、競り合いを制すことに繋がるのではないかと思います。
また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。
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1件のコメント
武田和浩 · 2025年6月6日 11:39 AM
自王を安定させることが、延いては攻めが手厚くなっているという渋い発想ですね🎵参考になりました😃