敵玉をスマートに寄せるためのコツ⑧

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【敵玉を寄せるときのコツ】

こちらは自玉が安全なので、寄せに専念できます。どこから手を付けるのか悩ましいですが、ここは☖85歩が最も急所を突いています。… pic.twitter.com/nNr74WC8cN

— あらきっぺ (@burstlinker0828) October 20, 2025

どう見ても優勢な将棋だったのに、寄せがスマートに進まず逆転されてしまった……という悔しい経験をされた方は少なくないのではないでしょうか？　そこで今回は、敵玉をスマートに寄せるための考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。

欲しい駒が入手できる状況を作る

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖６二同飛と指し、こちらの銀を取ったところです。

この局面は、こちらは桂損ではありますが、玉の堅さで遥かに勝っていることが大きく、形勢は優勢です。この堅陣を活かして、どう敵玉を寄せるかという状況ですね。

上図では候補手がいくつかありますが、敵陣の守備駒を剥がしにいくなら☖５七金という攻め方は一案です。これは次に☖６七金☗同銀☖８七歩と迫る手が狙いですね。

ただ、この攻め方は堂々と☗４四桂で攻め合いを選ばれると、意外に効果が乏しいところがあります。

ここで先述した☖６七金☗同銀☖８七歩の筋を使っても、☗同玉☖８九竜☗８八金で手番を取られてしまうので、こちらは忙しい状況が続きます。上図で相手は「金を狙う」という基本に忠実な寄せを実行していますが、こちらは金で銀を剥がす非効率的な攻め方をしているので、急所を外しています。ゆえに、この攻め方では面白くありません。

こうした背景があるので、冒頭の局面で筆者は、別のアプローチで敵玉に迫りました。具体的には☖８五歩と打ちます。これが寄せを分かりやすくする一着になります。

これは表向きには玉頭を攻めていますが、真の狙いは角を入手することにあります。上図の敵の囲いは、７九の地点に隙があります。ここに角が打てる格好になると、詰み形が見えてきますね。ゆえに、それを取りにいく攻め方が最速の寄せとなるのです。

もし、相手がこれを素直に☗同歩と取ると、☖８六歩で拠点を設置します。玉頭の拠点を放置するわけにはいかないので☗８六同角もやむを得ないですが、そこで☖８五飛と走れば目的が達成できますね。

こうなると角が質駒に入ったので、確実に入手できる状況になりました。ここで☗８七歩には☖８六飛☗同歩☖７九角☗７七玉☖５九竜と迫れば、それが詰めろ金取りになるので決まっています。

まら、上図では☗８七玉という受け方もありますが、☖６六歩☗同銀☖７九竜と接近すれば、次に☖８八金や☖８六飛☗同玉☖７八竜という攻めが防ぎにくいので、これも寄り筋に入ります。いずれも、７九の地点が薄い弱点を突いていることが読み取れます。

このように、相手としては、この歩を取ってしまうと☖８六歩が痛烈で受け方が難しくなります。ゆえに、ここでは☗６三角で抵抗する手も一案です。これは根元の攻め駒である８一の飛を狙うことで、８筋の脅威を緩和する意図ですね。

ただ、これには☖８三飛と浮くのが冷静な対応で、やはり相手は受けが難しい状況が続きます。

今度は６三の角が質駒にできるので、こちらはそれをターゲットにするのが得策です。上図で☗７四角成は☖５三飛で成銀が取れますし、それ以外の手なら☖８六歩か☖６三飛のどちらかが実現します。ゆえに、これも敵玉を寄せやすい形に持ち込めていますね。

こうして一連の進行を見ると、☖８五歩と打って角の入手を図った手が、敵陣の急所を的確に突いていたことが読み取れます。

今回の題材のような、囲いの原型が崩れた不定形の配置は、急所が掴みにくいものです。ただ、「自分にとって一番必要な駒は何か」ということを意識すると、急所が見えやすくなることが多々あります。これは非常に汎用性が高い考え方なので、ぜひ実戦で活用してみてください。

持ち駒ではなく盤上の駒の活用を優先する

繰り返しになりますが、今回の題材では欲しい駒を取りにいくことが話の肝でした。ゆえに筆者は☖８五歩と指したのですが、この手を選んだ背景には、別の理由もあったのです。

それは、「盤上の駒の活用を優先する」ということですね。

改めて、失敗例の局面を提示ます。この進行になると、こちらは８一の飛が意外と攻めに機能していません。確かに８筋に利きが届いてはいますが、この飛車が走れる展開にはなりにくいので、大して働いていないとも言えます。同時に、持ち駒の金を手放しているので効率の悪い攻め方になっていることも気になります。

逆に、成功例のほうは８一の飛がきちんと活用できています。この順だと持ち駒の金を温存しながら攻めているので、効率が良いことも分かりますね。ゆえに、この順は寄せがスマートに決まるのです。

このように、将棋の攻めは持ち駒ではなく、盤上の駒を優先して使うのが鉄則です。特に、大駒をきちんと活用させることは非常に大きな価値があるので、こうしたところにも注目してみると、終盤戦の精度が高くなるかと思います。

また、こうした敵玉をスマートに寄せるためのコツは、他にもあります。詳しくは、以下の記事で解説しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。