相手の粘りを許さずに勝ち切るテクニック

どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

【優勢な終盤戦は直線的に指せ】

こちらは桂得で手番も握っており、優勢な終盤戦になっています。ここは受けに回っても十分ですが、☗44馬と引く方が明快ですね。… pic.twitter.com/C2WhJVXph2

— あらきっぺ (@burstlinker0828) February 7, 2024

将棋は上手く優勢を築いても、そこから勝ち切るまでは簡単なことではありません。頑強な粘りに手を焼いておかしくしてしまった、という経験がある方は少なくないでしょう。

そこで今回は、そうした粘りを許さないテクニックをテーマにして、解説を進めたいと思います。

レールに乗せる

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖３九飛と指し、こちらの玉にプレッシャーを掛けたところです。

この局面は、こちらが桂得であったり、手番を握っていたり、３四の銀が遊んでいたりすることから、こちらが大きくリードを奪っています。結論から述べると複数の勝ち方がある状況ですね。

ただ、そうしたときほど油断せず、スマートに勝つ順を模索したいものです。変に日和った態度を取ると、逆転の糸口を生むことになりかねません。

さて、この飛車打ちは、次に☖６八銀と打つ手を狙っています。ゆえに、それを防いでおくのは自然な考え方ですね。

例えば、☗８九金で自玉を固めておくのは一案です。

こうすれば囲いが頑丈になるので、後は安心して攻めに専念できます。確かに、これは手堅い姿勢ですね。

ただ、上図では☖６六銀と絡まれたり、☖２九飛成☗４四馬☖３五銀で駒損を回復されたりする手段を与えています。無論、先手が優勢であることは揺るぎないのですが、敵にあれこれ手段を与えると、局面が紛れやすくなるので、少し面倒な嫌いもあります。

そうした背景があったので、筆者は冒頭の局面から☗４四馬と指しました。堂々と攻め合ってしまうのが明快だと判断したのです。

なお、これは敵の狙いである☖６八銀を受けていません。☖３九飛と打った以上、相手はそれを指さないと辻褄が合いませんね。よって、ここは☖６八銀と指すよりないでしょう。

ただ、☖６八銀は詰めろではないので、こちらは敵玉に詰めろを掛ければ一手勝ち。具体的には☗６三金と捨てる手が、勝利条件を満たす一着になります。

後手は受けるなら☖６一歩ですが、平凡に☗同歩成と指せば問題ありません。以下、☖同金には☗６八金で銀を取る手が詰めろになるので、明快ですね。そもそも、相手は［☖３九飛→☖６八銀］と指したからには、何か攻めないとやはり辻褄が合いません。

しかし、☖７九角☗８七玉☖６九飛成で攻めを選ぶと、☗７一飛成から後手玉は詰むので、やはり先手の勝ちですね。

☖同玉には☗６一歩成、☖９三玉には☗８五桂から平易な詰みとなります。

こうして一連の手順を見ると、こちらは意図的に敵の狙いである☖６八銀を打たせることで、粘る余地を与えていないことが読み取れます。

基本的に、将棋は敵の狙いを簡単に実現させないことが大事です。ただし、その狙いをあえて甘受すると、相手の行動を操作できる状況が作れます。ゆえに、相手よりも厳しい攻め筋を用意しておけば、むしろ積極的に敵の狙いを実現させる方が好都合なのです。

相手としても、自身の狙いを「どうぞ、指してください」と言われると、それを指さざるを得ません。なぜなら、そうしないと自分の指し手に矛盾が生じるからです。しかし、そうなると選択の余地が無くなってくる（＝粘ることが出来なくなる）ので、こうした☗６三金→☗７一飛成という綺麗な技が決まりやすくなるという訳ですね。

このように、あえて敵の狙いに乗り、指し手に選択肢を与えないテクニックは「レールに乗せる」と表現されることが多いです。特に、優勢な場面においてはレールに乗せて勝つことを意識すると、スマートに勝つ手順が組み立てられるので、ぜひとも意識してみましょう。

一手勝てれば、それで良い

なお、こうした切り合いで勝ちに行くのは、彼我の玉の詰み筋をきちんと読み切る必要があるので、少し怖い側面はあります。そうした［詰む・詰まない］を把握することが苦手な方は、冒頭の局面で☗８九金などで受けに回り、堅実に指すのも一つの考え方です。

ただ、レールに乗せて切り合いで勝ちに行く方が、正しく速度計算する練習にもなるので、長期的な目線で見ると、こうした姿勢の方が棋力向上の効果が高い印象を受けます。そもそも、棋理としても相手の粘りを許さないメリットがあるので、可能であれば積極的に一手勝ちを目指す姿勢で勝ちに行く方がよいでしょう。

また、こうした「レールに乗せる」のような理想を実現するテクニックは、他にも様々な種類があります。詳しくは、拙著「盤上のシナリオ」に記載しておりますので、そちらも併せてご覧いただけますと幸いです。

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