どうも、あらきっぺです。

今回の題材は、こちら。

将棋の一局を大きく分けると[序盤・中盤・終盤]の三つに区分できますね。ただ、終盤は他の部分と比べると重視すべき評価軸に変化が起こります。ゆえに、中盤と終盤の境目は、何に重きを置くのか非常に難しい側面があります。

そこで今回は、そうした場面の考え方をテーマにして、解説を進めたいと思います。

「堅さ」をなるべく削る

改めて、上記ツイートの局面を始めから振り返ってみましょう。図は相手が☖7四香と指し、こちらの角を取りにきたところです。

中盤と終盤の境目

この局面は、お互いに囲いの金銀は残っていますが、相手の攻め駒がかなり迫っています。ゆえに、状況としては中盤が終わりを迎えようとしているところですね。来るべき終盤戦に備えた選択が求められています。

中盤と終盤の境目

さて、上図で先手は角が取られそうですし、現状は桂損でもあります。ゆえに、☗4二銀成☖7五香☗3一成銀と進め、大駒を二枚取るのは一案です。こうすれば、一転して駒得という主張を手に出来ますね。

ただ、結論から述べると、これは賢明な選択ではありません。というのも、そこから☖7六銀と進軍してくる手がかなり厄介だからです。

中盤と終盤の境目

これを放置すると自玉が危険なので、☗7六同金☖同香☗7七歩と進めるのは妥当でしょう。しかし、そこから☖5四桂と打たれると、後手の攻めは止まらないので先手は勝ちにくい展開となります。先手は自然に大駒を二枚取って高い戦果を得たはずなのに、なぜ芳しくない状況に陥ったのでしょう?

これには、主に二つの理由があります。一つは、上図は駒の損得があまり評価されない状況だからです。

中盤と終盤の境目

「終盤は駒の損得よりも速度」という格言が訓えるように、終盤戦はいかにして厳しく、そして速く敵玉に迫るかが大事です。確かに先手は駒得になりましたが、こうして終盤戦になると、その恩恵はあまり光りません。ゆえに、大駒を二枚取ったとしても万々歳とはならないのです。

加えて、上図の先手は敵玉付近に攻め駒が迫れておらず、相手よりも明らかに後れを取っています。ゆえに、芳しくない状況になっているのです。

なお、先手が後れを取った要因は、直前に[☗4二銀成→☗3一成銀]で駒を取ることに二手費やしたことにあります。

中盤と終盤の境目

もう一つの理由は、玉の安全度を逆転されてしまったことです。

冒頭の局面では、先手玉のほうが金銀が引き締まっているので、堅さにおいて劣っていたとは言えない形でした。しかし、上図では6七の金が剥がされることが確定していますし、相手の穴熊には嫌味がついていないので、囲いの堅さには明確な差が生まれています。終盤になると玉の安全度は非常に価値の高い評価軸になるので、これを第一に考えなければなりません。そうなると、駒得に目が眩んでいる場合ではないことが分かってきますね。

こうした背景があるので、筆者は冒頭の局面で全く別の方向性の手を選びました。具体的には、☗9三角成と切ります。これが終盤戦を見据えた一着ですね。

中盤と終盤の境目

これは、「駒の損得」という観点で見れば、非常に損をしています。角銀交換を受け入れている上に、3一の飛を取る権利も手放しているからです。しかし、それ以上に後手の大事な守備駒である9三の銀を剥がしたことに重きを置いています。こうして堅さを削ることで、将来の終盤戦を有利に戦えるようにしています。

後手は☖9三同桂と応じるのが妥当ですが、そこでも取れる駒を取らずに☗9四歩と叩くのが終盤を見据えた一着。これも先程の☗9三角成と同様、玉の安全度に重きを置いています。

中盤と終盤の境目

もし、これを☖同銀と取ってきたら、そこで☗5二銀成で駒を取ります。8五の銀を下がらせれば自玉が安全になるので、5二の金を取る余裕が得られます。目先の駒得よりも、自玉の安全度の確保を優先していることに注目してください。

なお、ここで後手が☖7六銀と攻め合ってきたら、☗同金☖同香☗7七歩で問題ないでしょう。

中盤と終盤の境目

失敗例の変化と似たような進行ですが、今度は後手玉の堅さが段違いなので、先手は攻め合い勝ちが濃厚です。ここで☖5四桂は☗9三歩成で一手勝ちですし、☖9二歩には☗9三歩成☖同歩☗8六香と二手スキで迫れば問題ありません。

こうした進行を見ると、後手の9三の銀を剥がして堅さを削っておいた恩恵がよく分かりますね。

中盤と終盤の境目

このように、中盤と終盤の境目では、終盤戦に備えた選択を採ることが肝要です。特に、この領域に入ると駒の損得の価値が急落しはじめる傾向が強いので、そこに囚われないことが大事です。この辺りは、為替や株をイメージすると分かりやすいでしょうか。相場が変わる境目なので、駒の損得を「速度」や「玉型の安全度」にトレードしていくような感覚が必要です。そうしたことを意識すると、中盤と終盤の境目に対応しやすくなるでしょう。

攻めが切れないように注意する

繰り返しになりますが、今回の題材では終盤戦に向けた準備を進めることが重要な部分でした。ゆえに筆者は☗9三角成で駒の損得を度外視して敵玉を薄くしたのですが、こうした手を選ぶ際には、一つ注意しなければならないことがあります。

それは、「攻め駒の数が足りているかどうか」ということですね。

中盤と終盤の境目

基本的に大駒を切ると駒損になります。そして、駒損とは戦力の低下を意味します。ゆえに、自身の攻めが細くなる弊害があるのですね。

今回の例だと、こちらは持ち駒に[銀香]があり、5二の金も補充でき、それが補充できれば5三の銀も攻め駒として使えます。こうした四枚以上攻め駒を確保している場合は、駒の損得を「速度」や「玉型の安全度」にトレードしやすいと言えるでしょう。

中盤と終盤の境目

逆に、冒頭の局面でこちらの攻め駒がもっと少ない状況であれば、☗9三角成ではなく、☗4二銀成から駒得を重視するプランを選ばないといけない可能性が高まります。いくら終盤戦は駒の損得より速度が大事といっても、肝心の攻めが切れてしまっては元も子もありません。駒の損得を「速度」や「玉型の安全度」にトレードする際には、そうした点にも意識を向けることが必要です。

また、こうした終盤特有のノウハウは、拙著「終盤戦のストラテジー」にもふんだんに記載しております。よろしければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。

【終盤戦のストラテジー】
https://amzn.to/3SUGPI7


0件のコメント

コメントを残す

アバタープレースホルダー

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です