どうも、あらきっぺです。
櫻井将棋塾では、定期的に研究会が行われています。今回は、そこで筆者が指した将棋を題材にしたいと思います。
今回のテーマは、表題の通り「細い攻め」です。これを繋ぐ技術と、上手くいなす対処法を解説したいと思います。
「四枚の攻め」を意識する
さっそくですが、以下の局面をご覧ください。対抗型の将棋ですね。手前の振り飛車側が筆者です。
具体的な指し手を考える前に、現局面の状況を把握するべく、まずは形勢判断を行います。
玉型は、穴熊と舟囲いなので先手に分がありそうですね。ただし、先手陣は☖2六歩からこじ開けられる筋があるので、この穴熊はそこまで堅い訳ではありません。
駒の損得は、後手が飛銀交換の駒得。
駒の働きは、どちらかと言えば先手が勝っていそうです。後手は3一の角が眠っていることが痛いですね。先手陣も左辺の駒の働きは弱いですが、それと比較すると、先手の方が駒の働きが良いと言えるでしょう。
これらの話をまとめると、先手は長期戦になると不利という背景が見えてきます。
なぜなら、長期戦になると駒損していることが響きますし、3一の角を起動される余裕も与えるからです。ゆえに、先手としては短期決戦に持ち込まないと勝算が低い状況なのですね。
そして、短期決戦に持ち込むためには、とにもかくにも攻めに出ないといけません。
具体的に何を指すかですが、先手としては4七の成銀は気になる存在です。なので、攻める前に☗4八歩と追い払う手は一案ではあります。
ただ、筆者はこの手を指すと勝ち目が無いと判断しました。
もし☗4八歩を打つと、☖5七成銀でそっぽに駒を向かわせることは出来ます。しかし、4筋に歩を打ってしまうと、先手は肝心の攻めが細くなってしまうことが泣き所。現状、先手の攻め駒は[8六の角・2四の銀・持ち駒の銀]の三枚です。三枚の攻めではどうしても攻めが細くなるので、自ら攻撃力を落とす手は指したくありません。これが、☗4八歩を見送った理由になります。
という訳で、本譜は冒頭の局面から☗6四角☖6三金☗5五角と進めました。
これはシンプルに☗4四角を狙っています。☖4三玉には☗4五歩がうるさいですね。こうした変化を踏まえると、☗4八歩を打つと攻めが細くなるという理由がお分かり頂けるでしょう。
将棋には、「四枚の攻めは切れない」という格言があります。細い攻めを繋ぐ際には、いかにして四枚目の攻め駒を確保するかということを意識することが大事ですね。
本譜は☗4四角を受けるのが難しいと見て、☖2三歩で銀を取りに来ました。ただ、☗4四角☖2四歩☗1一角成と進んだ局面は、振り飛車の攻めが切れない格好になりましたね。
現状、先手の攻め駒は[1一の馬・持ち駒の銀香]の三枚です。なので相変わらず攻めは細いように見えますが、次に☗4四歩と打つ手が残っていることが自慢です。そこに歩を打てれば攻め駒の数が増えるので、先手の攻めは一気に手厚くなります。
加えて、この局面は☗4九香や☗1二銀など、駒損を回復しながら攻める手が残っていることも心強いところ。現状は三枚の攻めですが、先手は敵玉の寄せを進めながら「四枚の攻め」を実現できることが約束されています。ゆえに、この局面は先手の攻めが繋がっているのですね。
ちなみに、ここで☖2二銀☗1二馬☖2三銀には☗3三歩が痛打です。(1)☖同玉は☗2一馬。(2)☖同桂は☗2一銀→☗2三馬。いずれも駒得できるので問題ありません。
この局面は適切な受けが見当たらないので、先手が抜け出した格好だと言えるでしょう。短期決戦に持ち込む意識が奏功しました。
受け側は、負担になっている駒を使う
本局では、先手が☗5五角と引いたところが勝負所でした。この局面は、振り飛車の攻め駒の数はまだ三枚です。ゆえに、居飛車としては攻めを堰き止められるチャンスがありますね。
立場を変えて、今度は受け側の視点で正着を考えてみましょう。
振り飛車の攻めは確かに細いのですが、いざ受け切りを狙おうとすると、意外に容易ではありません。その理由の一つとして、3一の角が負担になっていることが挙げられます。例えば、振り飛車の成功図として掲げた☗1一角成の局面だと、ここに角がいるので☖3一金のような受けが利かないですね。受け側は、こうした負担になっている駒を残したまま戦うと、何かと支障が生じてしまうのです。
という訳で、ここは☖4二角と活用するのが面白いですね。
もし、☗4四角☖2四角☗1一角成と突っ込んで来たら、☖5七角成と成っておきましょう。この進行だと☖3一金の受けが利きますし、☗4九香の筋も怖くありません。
また、☗3三歩には☖4三玉とかわしておけば、5五の角の利きが間接的に止まるので振り飛車は攻めが難しくなりますね。
3一の角のような負担になっている駒は、攻め側にとっては格好の攻撃目標と言えます。ゆえに、それを活用することは、見た目以上に大きな価値がありますね。これは相手の攻めをいなすテクニックの一つなので、受けに回ったときには意識しておくと良いでしょう。
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